今回の記事もVRについて書きたいと思います。皆さん「VR酔い」という言葉を聞いた事はありますか?「VR酔い」とは、VR映像の中で左右上下に動く映像の中に長時間浸っているせいで、三半規管が混乱して頭痛がしたり、ぼーっとして仕事が手に付かなくなってしまうような事を言います。
VRは今までの映像とは違って視覚の全体を覆うものであること、映像が現実と見まがう程にリアルなので脳が現実と錯覚しやすいこと、現実では起こりえないようなオーバーなアクションが繰り広げられがちである事など、VR映像の面白さがそのまま仇になってしまうのがVR酔いです。
とあるCG会社の経営者の方に聞いたのですが、VRで酔ってしまうことを「生牡蠣にあたる」というらしいですね…。牡蠣でお腹を壊してさんざんな目に遭ったら二度と牡蠣を食べたくなくなるように、「酔い」の処理が確立していないVR映像に当たってしまうと、人によっては猛烈な不快感を催すそうで、かえってVRから人が離れていく原因になってしまうそうです。
今回の記事では、そんな厄介なVR酔いについて、現状ではどんな解決策があるのか紹介をしたいと思います。この問題については、「これ」という解決策がまだ確立していないそうなので、今後の参考にしていただければと思います。
VR酔いの原因は?
そもそも、なぜVRによって強烈な「酔い」が発生するのか、と言う事についてはまだ定まった医学的根拠が示されていません。
参考URL:https://intron.kz.tsukuba.ac.jp/tvrsj/3.2/nakagawa/vesick1.html
一つの事が要因になっているのではなく、音や映像の様々な要因が複雑に絡まりあう事で起こっているのがVR酔いです。元々人間は目の前の現実をいくつもの情報を総合して認識しています。視覚、聴覚、嗅覚、触覚が全て集まっているのが顔面であり、感覚器官を通じて収集した情報を全て脳へと送り、そこで情報として編集されたものが私たちの「現実感覚」になっているわけですが、VRは視覚と聴覚において普段とは全く違う情報を流し込む訳ですから、脳が混乱するということなのではないでしょうか。
そんな訳で、VR酔いの解消法にも「これさえあれば大丈夫」というような決定打はありません。代表的なものの一つとしては、「ゲームデザインを工夫する」という事があります。例えば、下の映像をご覧になって見て下さい。
これは「Bullet train」と言うゲームの映像ですが、激しいアクションシーンの最中でも、場面の展開を一瞬で行う事の出来る「Blink」という移動手段を使っていますプレイヤーはバトルをこなしながらも、場面が変わるときの混乱を回避することができます。
また、こんな例もあります。
これは、「デッドシークレット」というゲームですが、このゲームでは、プレイヤーが移動する際の方向性を「前方への等速直線運動」に限定しています。方向性が決まっているので、脳は疲弊しにくく、長時間のプレイが可能になるのです。
これらの二つの例は共にゲームデザインをそもそも酔いにくい形に作り込んでしまおう、という方法です。ゲームデザインを変えてしまえば、たしかにいち早く酔いの問題を解消することが出来そうですが、ある種の制約がゲームに生まれてきてしまうという短所もあるのがこうした方法ではないでしょうか。
ゲームデザインをいじるのでは無く、人間の知覚に介入しようという方法もあります。画像はサムスン製のVR専用ヘッドフォン「Entrim 4D」です。これは、耳の後ろに電極を付けて、ゲームプレイと同時に音の刺激を与え、並行感覚などをコントロールするものです。
これはゲームを大きく変えることなく酔いを軽減出来るので、ゲームの表現の自由度という観点では有効な方法です。しかし、直接人間の感覚に訴えるので、健康問題という意味ではリスクのある方法です。長時間プレイに耐えうる方法なのか、今後の開発結果が待たれます。