アニメゲーム業界のクリエイターの「働き方」について

仕事と契約書は表裏一体・・・のはず

仕事と契約書は表裏一体・・・のはず

アニメ・ゲーム・漫画業界のクリエイター志望の皆さん、こんにちは。ビ・ハイア株式会社の床井です。私は、クリエイター採用に特化した求人媒体「ラクジョブ」の運営を通じて、日頃から多くの求職者の方の転職・就職のお手伝いをしています。

今回は、クリエイターの方の「働き方」にスポットライトをあてて見ようと思います。これをご覧のクリエイターの皆さんは、きっと自分の仕事を好きな方が多いでしょう。アニメやゲームが好きでしょうがない。それが高じて、自分でも作品作りに関わってみたい。そんな動機からクリエイターを目指す方はやはり多いですし、そこから会社を作る方も多くいらっしゃいます。「好きこそ物の上手なれ」とは言いますが、好きで仕事をやっている人に「働き方」について考える必要なんて無いかも知れません。好きだからこそ長時間の仕事が苦にもならない。そんな状況はある意味理想であるとも言えます。しかし、この記事では、敢えてクリエイターではない門外漢の私が、クリエイターさんの仕事の仕方について考えてみたいと思います。自分の事は自分では気づかない、と言います。敢えて業界をサポートしている私の目線から、クリエイターさんの働き方についてレポートしてみました。皆さんにとっての何かしら気づきがあったり、働き方を考えるきっかけに少しでもなったりしたら幸いです。

〇まず、業界の実体はどうなっているのだろうか

まず、アニメやゲーム開発の現場の労働者の実体はどうなっているのでしょうか。データを参照しながら、具体的な数字を見てみましょう。

CEDEC

まずはゲーム業界について。CEDECが2013年にまとめたレポート(https://cedec.cesa.or.jp/2013/documents/enquete.pdf)を引用して説明をします。CEDECの調査によれば、ゲーム業界の雇用形態は、正社員が77.2%。また、職場の雇用形態の実態として、裁量労働制(フレックスタイム制)が最も近い、と解答した人が52.6%いるということが分かります。労働時間の平均は46.7時間、繁忙期には66.7時間です。繁忙期については、「ほぼ慢性的にある」が22%、「年に3ヶ月位はある」が21.1%ついで「年に1ヶ月くらいはある」が18,4%です。また、ゲーム業界の給与ですが、これは平均値が522万円です。「現場でストレスを感じる場合、その原因はなんですか。」という設問に対しては、1位が「予定している成果が上げられるかが不安だから」「仕事のスケジュールが過密だから」などの要因が上位に来ます。これらのデータから見えてくるのは、非常に仕事熱心で真面目なゲーム開発者の姿です。繁忙期にはほぼ仕事しっぱなしの状態になっている日々を慢性的に、あるいは年に数ヶ月は続けている。残業代をもらうよりは、フレックスタイム制でクオリティを高め、結果的に労働時間は長引く傾向がある。職場について人間関係の不満などは余りないが、仕事の納期や締めきりについてはいつも心配事がつきない・・・そんなゲーム開発者の職人気質な姿が浮かび上がって来るようです。

続いてアニメ業界です。

ジャニカ

Janicaの調査(https://www.janica.jp/survey/survey2015Report.pdf)によれば、アニメ業界の就労形態について最も多いのは「フリーランス」が37.7%、ついで契約社員が23.1%、ついで正社員が15,5%、ついで自営業が14.9%です。つまりアニメ業界では正社員が15,5%、それ以外が75,7%以上いるという事になります。1日の平均作業時間は平均が11時間で、一月あたりおよそ260時間になっています。また、「仕事で契約書を取り交わすか」という項目について、「必ず取り交わす」及び「時々取り交わす」が合わせて39%、「取り交わす必要が無い」「取り交わしていない」が合わせて59.5%になっています。現在の仕事を続ける理由としては、一位が「この仕事が楽しいから」で65.1%、二位は「お金を得るため」で60.9%、三位は「作品を通じて人に感動を与える事が出来るから」でおよそ38%になっています。現在の仕事の状況についての不満点としては、一位が「老後の生活設計」で「とても感じる」と答えた人が61.3%、二位は「精神的疲労」で「とても感じる」と答えた人が32.6%、三位は「身体的疲労」で31.0%でした。相対的に満足度の高かった物としては、「職場の人間関係」と「仕事内容」と言う結果になりました。

平均年収

アニメ業界の賃金については、別のデータにはなりますが、この記事に詳しいです。https://heikinnenshu.jp/creative/anime.html

20代アニメーターが平均年収110万円、30代アニメーターが平均年収213万円と同世代平均を大きく下回りますが、キャラクターデザイン」になると510.4万円。 「作画監督」は563.8万円。「監督」は648.6万円と、キャリアを重ねる事によって収入を高めて行く事も可能であるということが分かります。ここから浮かび上がってくるアニメ業界で働く人の姿とは、アニメがとにかく好きで仕事内容には満足しているけれど、心身の健康や将来設計に対して不安がある、といういささかアンバランスな物です。特に若い世代にとっては、正規雇用でもなく、仕事の単価も低いわりには長時間の仕事を余儀なくされるような状況があり、非常に負担が大きいと言えます。

〇クリエイターさんにとっての仕事と人生

ゲーム業界もアニメ業界も、さすがクリエイターといいますか、非常に仕事熱心な現状が見えてきました。仕事が好きでしょうがない、そんな情熱があるからこそ、日本にはこれだけ多くのコンテンツが産まれ続けるのだと思います。

Four people have a meeting

クリエイターは基本的にハードワーキング!

しかし、クリエイターさんにとっての人生とは仕事だけなのでしょうか。クリエイターさんの他の側面についても見てみましょう。こちらの記事をご覧下さい。

日経新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXBZO04316990Z10C10A3000000/?df=2

ゲーム開発者の既婚率について後半に述べられています。ゲーム開発者の既婚率は、30代で47%、40代で67%しかなく、これは全国平均を下回ります。業界全体として男性が8割以上を構成していることと、職場への拘束時間が長いことが要因としてあげられます。

アニメ業界についてはこちらの記事をご覧下さい。

アイティメディア

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1504/30/news078.html

こちらもJanica調べになりますが、業界全体で「配偶者なし(未婚)」が71.5%、「既婚」が25.3%、「配偶者なし(離婚・死別)」が2.5%、「子どもなし」が84.6%、「子どもあり」が13.6%になっています。こちらもやはり全国平均を大幅に下回っています。

いずれの業界も、家族形成や私生活の充実、という観点から見ると少し厳しい業界であるということが言えそうです。両業界とも、「業界が好きで働いているし今後も続けたい」と思っている人の多い業界ですから、私生活を犠牲にしてでも仕事がしたい、そう思う方が多いかも知れません。しかし、仕事と私生活というのは本当にトレードオフなのでしょうか?ワークライフバランスを推進するため数多くの企業に対するコンサルティングをし、自らも二人の子供の父親として子育てをする渥美由喜さんは、この記事でこんな事を述べています。

第三文明

https://www.d3b.jp/howtolive/5480

仕事と家庭の両立は個人の成長をも促します。日本では育児休暇(育休)取得が昇進に悪影響を及ぼすと思われがちですが、実は育休を取得したほうが、かえって昇進しやすいとのデータが福祉大国スウェーデンで得られているのです。40年前に育休を取得した「第1世代」を調べると、その9割までが企業の重役になっていることがわかりました。彼らは「子育てに取り組む経験が時間管理や部下育成の力につながった」と語っているのです。つまり、仕事の時間を減らし育児をした事が、結果的に仕事におけるスキルアップにも繋がったというのです。クリエイターとして自分の技術に磨きをかけながらも、家族を大切にし、子育てにも取り組む。その経験を活かして部下の育成をはじめとして、仕事にも好循環を生む。それはまるで理想論の様に思えるかも知れません。しかし実際、クリエイターにそういった活躍の場を用意している会社は少なからず存在します。弊社のお客さんとして求人を出している会社なのですが、ポイントピクチャーズさんという会社があります。

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(紹介記事https://raku-job.jp/news/recruitment/958/

この会社はアニメ会社にもかかわらず、徹夜は基本的に無く、育休もとれる、各種保険完備・・・と非常に条件のいい会社なのですが、この会社では結婚をして子育てもしながらクリエイターを続けている人も多いです。好条件を可能にしているのは、徹底した業務の合理化。現在制作進行の求人を出していますが、この会社における制作進行は原稿を探してかけずり回るような「肉体労働」のイメージからはほど遠く、スケジューリングの効率化や予算管理など、プロデューサーに近い「知的労働」がメインになってきます。アニメ作りにおいて全体に目を配る人が多いことによって、業務全体の効率が向上し、常に高いクオリティとスピードを実現しているのです。色々な

会社にこの会社を紹介していますが、毎回評判は上々。クリエイターとしての上達と、従業員の人生と、仕事のクオリティ。全てを実現することは可能なのだとこの会社の事例は教えてくれます。

仕事、人生、上司、家族、お客、趣味・・・色んな物を全て高いレベルでバランスしましょう

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仕事も人生も、自分で考え選択して欲しいクリエイターさんの「働き方」にフォーカスして、色々な記事や事例をご紹介してきました。今クリエイターをされている方、あるいはこれから目指している方、どう思われましたか?私は、アニメ業界のクリエイターの方も、ゲーム業界のクリエイターの方も、日々技術を高めて仕事にこだわりを持っていることが素晴らしいと思います。仕事への思い入れ、という点において他の業界にはないものがあると思います。しかし、仕事に熱中するあまり、私生活の面が少しおざなりになる傾向もあるようです。もちろん、それでも構わない、仕事がうまく行っていればそれでいい、と決めている方はそれでいいと思います。ただ、採用をサポートしている立場からは、全ての人が自分にとって納得のいく職場で、納得のいく働き方をして欲しいと思います。

ラクジョブには、ポイントピクチャーズのように公私を両立させたい方に向けた求人もあります。とにかく仕事でスキルを身につけたい、ガンガン働きたい!そんな人に向けた求人もあります。大事なのは、自分がどういう仕事やライフスタイルを取りたいのか、立ち止まりよく考えてみることだと思います。他人の働き方や事例は、実際あまりあてになりません。自分で納得のいく答えを見つけてみて下さい。立ち止まり考えてみれば、今の職場で新しい働き方を試そうという気になるかも知れません。あなたが求職者なら、面接の場においてハッキリ考えを述べてみてください。自分なりの考えの確立している人ほど信頼され、採用されやすいと思います。