テロ組織の連絡手段としてのゲーム
バングラディッシュのダッカで起きたレストラン襲撃人質立てこもり事件は、日本人7名を含む人質20名、実行犯グループ6名が死亡するという事態になりました。イスラム過激派組織のダーイシュ(IS)の傘下にある機関紙が関与したという犯行声明が公表されましたが、バングラディシュの当局はダーイシュの関与を否定するなど、情報が錯綜しています。事件があったレストランは日本やアメリカの大使館もある地区にあり、グループでの犯行であったため、計画的に行われたものであるという報道も出てきています。テロとラクジョブ新聞が取り扱うアニメゲーム漫画業界がどのように関わってくるか疑問の方もいらっしゃるでしょうが、昨年のパリ同時多発テロの時にはPS4などのゲーム機を連絡用デバイスとして使用している可能性があるという報道がされていました。
先週末、フランスのパリで起きた同時多発テロ(November 2015 Paris attacks)に関連して、事件を引き起こしたテロ実行犯グループは、Sonyの家庭用ゲーム機「PS4」で提供されているプライベートチャット機能を使って相互連絡を行っていた可能性があることがベルギー当局の発表により明らかとなった。
事件後に行われたベルギーで行われたテロ実行犯の家宅捜査の結果、PS4が押収され、このPS4の解析作業から判明したものとなる。
(引用終わり)
引用元:パリ同時多発テロの実行犯グループ、PS4のプライベートチャット機能を使って相互連絡
従来の携帯電話などにくらべ、IPベースでのボイスチャットはPS4などでのやりとりは傍受することが難しいことで知られていますから、こうした監視がされにくい特性を活かしてテロリストや犯罪組織が利用するかもしれないということは、元NSAのエドワード・スノーデン氏などが指摘していました。Xbox Liveなどを用いて小児性愛者の摘発などに用いられたという報道もありますが、捜査機関がPSNやXbox Liveでやりとりされる内容をどれほど傍受可能かということに関しては明らかになっていません。
テロリストの活動とゲームという関連性で見れば、ダーイシュ(IS)が『グランド・セフト・オート5』のゲーム映像を使って兵士たちを募るリクルート映像などをYou Tubeに公開するなど、暴力ゲームとの結びつきも見られています。中東の情勢が悪化することで、過激な表現がされるゲームは規制の動きが強まるかもしれません。
参考:イスラム過激派組織ISISが『GTA V』を使用したリクルートビデオを作成
また、中東情勢に絡んでいると思われる最近のニュースでは、アカウント名に「iJihad」という本名をもじったものを使用していた海外ゲーマーが、アカウントを凍結されるという出来事がありました。
(引用開始)
海外ゲーマーJihad Khalid Al-Mofaddaさんは2010年来のPlayStationユーザーで、PlayStation Networkでは“iJihad”というアカウント名を使用していました。しかし、最近になってアカウント名に含まれる「Jihad」が攻撃的な言葉であるとしてPSNからBANされてしまったのです。
(中略)
これに対してソニーは、Al-Mofaddaさんの名前が多くの意味を持っていることを認めつつも、ネットワーク全体を考慮する必要があるとして、BANの解除を認めませんでした。ただ、彼が置かれた状況には同情すると伝えています。
(引用終わり)
引用元:PSNで本名の「ジハード」をアカウント名に使っていたゲーマーがBAN―世界情勢の変化がもたらした災難
この海外プレーヤーはBANによって新しいアカウントを利用していますが、トロフィーなどの同期は不可能だったということで、長年のプレイデータが消失してしまいました。ソニー側の対応に配慮が無いという批判もあります。記事によれば「ジハード」という単語を含むアカウントは約9800個あるが、何故かAl-Mofaddaさんが今回BANされてしまいました。一斉にBANではなく、なぜAl-MofaddaさんだけがBAN対象になったのかということについては、ソニー側の「攻撃的な言葉を含む」ということ以外明らかにされていません。ゲーム内でどのような動きをしていたか?という報道もされていないので、名前だけが原因であると断定はできません。プレイ内容まで監視できる状態であるならば、ゲーム内で不審な動きに映る行動をしていたという可能性も無きにしも非ず。しかし、これも憶測の域をでません。ソニーの監視体制はどうなっているのでしょうか。公式のシステムソフトウェア使用許諾契約を参照してみると、その気になればほとんどすべてのデータを収集することができてもおかしくはない内容が書かれていました。プレイ状況などの細かな監視はしている可能性もあります。
(引用開始)
SCEは、ビジネス運営および製品やサービス提供のために、ハードウェアおよびソフトウェアの情報を収集することがあります。これらの情報は、システム監視、システム診断、マーケティング目的、個人を特定しない形態での利用状況の調査、認証、著作権保護、その他の目的に利用されます。
また、PS4の機器IDおよびPS4をインターネットに接続した際にインターネットサービスプロバイダーから自動的に付与されるIPアドレスも取得します。利用者がPS4からSony Entertainment Networkアカウントにサインインした場合、SCEは、これらの情報と、利用者のアカウントおよびアカウントの情報とを関連付けることが可能となります。
(引用終わり)
引用元:PlayStation®4用システムソフトウェア使用許諾契約(第1.1版)
解決策はあるのか
オンラインゲームの監視は人力である場合が多いのが現状です。プログラムで画一的に炙りだすまでに至ってはいません。もしそういう仕組みであったとしても、今後公開される可能性は少ないでしょう。「オンラインゲーム 監視」などでグーグル検索をしてみると、監視役のアルバイト求人が目立ちます。スマートフォンのオンラインゲームなど、小〜中規模の企業で開発、運営がされているものであったとしても、今後テロ組織でないにしても、犯罪に利用される可能性はゼロではありません。テロ行為が活発化してくれば、ゲームの監視がより重要になってくることは間違いありません。ここで難しいのが、「疑わしきは罰せよ」とするか、「疑わしきは罰せず」とするかです。ゲーム内のアイテムなどを暗号として利用されたり、チャットであったとしても共通の隠語を使われたりされてしまうと、ほぼ分別がつかない状況になります。壁に弾をやたらと打ちこんだり、不自然な動きをするプレイヤー達の動きを見ていたりしたとしても、そもそもそれが何を意味するのかわからないため、現時点では人力による監視で有効な手段は、疑わしくてもBANをしていくことくらいでしょう。その場合、先述の海外プレイヤーの例のような事態を引き起こしますが、誤って凍結してしまったのちのアフターフォローなどがしっかりとしていれば良いわけです。運営側、ユーザー側双方の手間にはなりますが、ユーザーのネットワークを健全化していくには、現時点ではこうした地道な手段あるのみではないでしょうか。
記事を読んでいただきありがとうございました。