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2016.08.01 漫画 アート キングダム展開幕 漫画展示会の存在意義とは

2016-08-01 11.56.05キングダム展開幕

7月31日付のYOMIURI ONLINEの記事に、人気漫画「キングダム」の展示会が佐賀県佐賀市の県立美術館でスタートしたというニュースが公開されています。
(引用開始)
佐賀県基山町出身の原泰久さん(41)が描いた人気漫画「キングダム」の複製原画などを集めた「キングダム展in佐賀」が30日、佐賀市の県立美術館で始まった。
この日は開館時間の前から行列ができ、入館までに1時間待った人もいた。オープニングセレモニーには故郷のファンら約380人が集まった。キングダムの大ファンというお笑い芸人・ケンドーコバヤシさんも出席し、あいさつで作品の魅力を披露した。
(中略)
会場の壁やガラスでは、登場人物たちの大きなイラストが紹介され、複製原画や絵コンテ、制作過程を説明するパネルなども展示された。ファンたちは作品の前で立ち止まり、細かい部分を確認したり、スマートフォンで撮影したりして楽しんでいた。連載10年を記念した実写の動画が大きなスクリーンで上映されるコーナーでは、感動して涙を流す人も。地元ファンたちの前で、原さんは「情熱を込めた作品を一つひとつじっくり楽しんでほしい」と呼びかけた。
(引用終わり)

引用元:漫画「キングダム」展開幕、作者も来場…佐賀

中国春秋戦国時代を舞台にした漫画である「キングダム」は、ヤングジャンプに連載されている人気作品です。少年による中国統一というスケールの大きさと、小説や他の漫画作品などで題材にされることの多い歴史背景によって多くの支持を集め、単行本の累計発行部数は2000万部以上にも登ります。地方自治体から集英社へ直接打診があり、実現した今回の展覧会ですが、こうした漫画の展覧会を開催する意義について考えていきます。

2016-08-01 11.56.52漫画の展覧会

Wikipedia によれば、2009年時点で、マンガ・アニメ作品に関する資料を展示する美術館は全国に60館ほどあるとされています。サザエさんの作者としても知られている長谷川町子さんが1985年に開業した長谷川町子美術館が、漫画に加えてアニメのサザエさん関連の展示も行っており、これが漫画やアニメに関連する展示のはしりであるとされています。88年には川崎市市民ミュージアムが開業し、漫画部門を設置。公立で初めて総合的に漫画を扱うミュージアムとしてオープンされたというデータを見ると、バブル期の頃からこうした漫画作品やアニメ作品の展示が盛り上がりを見せつつあったということになるでしょう。

アニメゲームマンガの展覧会や原画展ですが、おそらく、記事をご覧になっている皆さんが想像されるよりも頻繁に開催されているのです。原画展.infoというサイトがあります。こちらは日本全国津々浦々で開催されるアニメ漫画の展示会イベントの情報が掲載されているサイトで、参照してみるとかなりの数のイベントが全国的に開催されているのがわかります。

原画展.infoの8月開催中の人気イベントの1位は、東京森アーツセンターギャラリーで開催されている、ルーヴル美術館特別展 「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」です。

2016-08-01 11.57.47ルーヴルによる日本の漫画展示

こちらの展覧会について、公式サイトより概要を引用させて頂きます。
(引用開始)
ルーヴルが欲しがった9番目の芸術、「漫画」。

古代文明から19世紀中頃までの膨大な作品を所蔵する、世界最大級かつ最高峰の美術の殿堂「ルーヴル美術館」――1793年の開館以来、200年以上の長い歴史を持つルーヴル美術館が、「漫画」でルーヴル美術館を表現するという、かつて無い新たな試みとして「ルーヴル美術館BDプロジェクト」を立ち上げました。
(中略)
「ルーヴル美術館BDプロジェクト」は、「漫画」という表現方法を通して、より多くの人々にルーヴル美術館の魅力を伝えるために企画されました。漫画家たちに、ルーヴル美術館をテーマに自由に作品を描いてもらう、という前代未聞の企画には、日本の漫画家を含むフランス内外の著名な漫画家が多数参加しており、すでに12作品が出版され、プロジェクトは現在も進行中です。

(引用終わり)
引用元:公式サイト

フランスの漫画家、日本の漫画家が「ルーヴル美術館」をテーマに作品を展示する今回の展示は、日本人漫画から荒木飛呂彦先生、谷口ジロー先生、松本大洋先生、五十嵐大介先生、坂本槇一先生、寺田克也先生、ヤマザキマリ先生など豪華な有名漫画家が多く参加されています。フランスでは「バンドデシネ」という漫画文化があり、こちらはフランスの芸術ヒエラルキー最下層ながらも、芸術のひとつではないかという位置付けがされています。今回のイベント開催によって、日本の漫画は海外のサブカルチャー的な流行を超えて、一つの芸術的な表現方法として世界のルーヴルからお墨付きを貰えるほど注目されていると言っても過言ではありません。

2016-08-01 11.59.52絶対性に浸り、魅力を感じ取ること

今回のイベント開催に合わせて、ポップカルチャー評論家、表象文化論の研究者でもある石原良治氏によるインタビューがCINRA.NETにて掲載されています。バンドデシネと日本の漫画の表現方法の違いについて語っているインタビューですが、その中にこのような発言がありました。
(引用開始)

石岡:今回のようにフランスのバンドデシネと、日本の漫画が併置されると、相対的に違いや共通点を探る視点が生じると思うんです。でも、私はそれに少し異論を唱えたい。相対主義的に見ていくと、例えばアートが上で、ポップカルチャーは下といった考えがどうしても浮かんでしまいますが、私にとっては「さまざまな絶対性がいっぱいあるぞ」という感じなんです。

―さまざまな絶対性?

石岡:表現、作家、作品ごとにそれぞれの絶対性があるから、多世界的だということです。一つの世界、一つの視点しかないと、それを規定する価値観で対象を見てしまいがちですが、異なる価値観を生み出す世界が多数存在していて、「それぞれの絶対的な良さを楽しむのだ」という姿勢の方が豊かだと思うんです。

(引用終わり)

引用元:知の巨人・石岡良治が語る漫画の魅力、ミュージアムの存在意義

Traditional and digital art芸術性という評価軸で見るとき、そこには今回の石岡さんの指摘にあるようなポップカルチャーであることによるコンプレックスが浮かび上がりますが、漫画というのは一つの世界観を我々に提示してくれるものであり、普段漫画を読むときには、その作品を比較しながら読むということは少ないはずです。絶対的な世界観の享受というものが、漫画を読むという行為にはあるのではないでしょうか。漫画の展覧会、展示会は、こうした漫画の持つ絶対的な魅力を存分に味わうことのできるパワーがあると考えます。だからこそ、このような西洋と日本の漫画文化を比較をしやすい展示が意味あるものとして開催されるのでしょう。様々な絶対性によって多世界的な空間を生み出すという試みということは、裏を返せば漫画の持つ絶対性を認めることになります。この絶対性にいかに浸らせ、作品世界にさらなる魅力を感じてもらうというのが、漫画展示会を開催する意義のひとつとしてあげられるのではないでしょうか。

記事をお読みいただき、ありがとうございました!

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