アニメ ゲーム Cygamesはアニメ業界を変える布石となるか

ネイティブアプリゲーム大手のCygamesは、この度、アニメの美術背景会社「草薙」を子会社化することになりました。ここ最近、Cygamesは、アニメ業界への進出が目立っております。今回は、Cygamesが行っていたことと、またゲーム会社がアニメ業界に与える期待に関しての記事を書かせていただきます。

71Bc+MlVNKL._SL1351_これまでのCygamesのアニメ事業

(左の画像は、amazonより、進撃のバハムートGENESIS初回限定版1巻のパッケージになります。)

Cygamesは、「進撃のバハムート」の大ヒットに伴い、厚塗りイラストを使用したネイティブアプリのブームの火付け役隣って企業であり、最近では「グランブルーファンタジー」や「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ」などのヒット作のゲーム開発に携わり、売上ランキングでも必ず上位にランクインしてくるなど、開発力もピカイチの企業です。そんな収益性の高い企業ではありますが、近年ではアニメ業界への進出が目立っております。最初は、「進撃のバハムート」でのヒットした収益を使ってのアニメ化でした。そこで作られたのが「進撃のバハムート GENESIS」になります。しかし、そこにかけられた予算は普通では考えられない額でした。一般的に作られている1クール30分のTVシリーズが、だいたい1話1000万から1500万、総額で3億から3億円、高くても「攻殻機動隊」や「機動戦士ガンダムSEED」の1話3000万円という話はあります。しかし、「進撃のバハムート GENESIS」は、1話あたり約3800万円、総額で約4億円にも及びます。さらに異例とも言えることは、今回のアニメがCygames単独出資による製作だったということです。他のほとんどのアニメは、製作委員会方式が一般的で、版権元の会社や出版社、映像配給会社など複数社の出資によって製作されます。それらの点で、Cygames単独の出資で、一般的なTVシリーズの予算を超える額で製作したということは異例中の異例といえるでしょう。

そんなアニメ業界としては異例な形で製作されたしましたが、アニメ業界への参入はその後も続き、アニメ事業部の設立や、進撃のバハムートの続編の製作決定などの話題が続きました。

apartアニメ業界とゲーム業界とのズレ

そんなアニメ業界への進出を進めてきたCygamesですが、アニメ業界との文化の違いには苦戦をしているように思われます。もちろんアニメとゲームでは製作内容はもちろん違いますが。雇用の環境や生活習慣のレベルでも大きな差があります。ゲーム業界は、一般のIT企業と比べれば、比較的出社が遅かったり、フレックスな働き方が許されるケースもありますが、アニメ業界は、そんなレベルでは比較にならないほどゆるくなっています。多くのアニメーターは、業務委託がほとんどで、成果さへあげれば生活できるという世界です。そのため、会社に所属せず、在宅で行ったり、また、昼に出社して深夜まで働くという夜型の生活を行うアニメーターもたくさんいます。そのためまず、ゲーム会社がアニメ業界に参入するとこのような文化の違いに驚きます。また、そのような文化違いによる問題なのか、先に紹介した進撃のバハムートの続編に関しても、もともと2016年の4月の放送予定となっていましたが、放送が延期となり、アニメ制作の元請会社がスタッフリストから消えるという事件がありました。

signage01そして間もなく、アニメ会社CygamesPicturesを設立に至った点で、なんらかの問題があったのではないかと考えられます。それに、製作文化の違うアニメ業界と組むよりは、社内のアニメーターを抱え、ゲーム業界の環境に慣らしたり、新卒からアニメーターを育てていった方がゲーム業界にマッチしたアニメーターに育てることが可能となるでしょう。

Targeting背景美術は別

CygamesPicturesは、今後、アニメの元請会社としてのポジションになっていくことを目指しているでしょうが、やはりすぐにというのは難しいでしょう。元請会社1社で製作するというケースもありますが、多くの場合は色々なアニメ会社と協力して制作されます。アニメ業界もそれぞれ専門性に特化した企業が存在します。動画仕上げが得意な動仕会社、アニメの背景を専門に行う背景会社などがあります。動仕に関しては、いかに速く予算を抑えるかが勝負となるので、海外に多かったりします。また背景美術に関しては、キャラクターを描きたいというアニメーターが多い一方、背景をやりたいアニメーターが少なく、技術を持っている人が少ないため、このようなアニメ会社は色々な作品に携わっています。今回のCygamesの草薙の子会社化は、背景美術に関しての制作をより円滑にするためのものでしょう。

gahag-0048575012-1-2-330x220Cygamesはアニメ業界の最大の問題を壊せるか

ゲーム業界からみて、生活習慣によるギャップも驚くかもしれませんが、一番の驚きは、多くのアニメーターが作画を手書きで行っていることです。在宅で設備が揃えられないという実情があるにしても、手書きの作画を制作進行が回収し、スキャナに取り込む作業は、他の業界から見たら明らかに無駄な作業に思えるでしょう。近年、アニメ会社の中にはデジタル作画部門を設置し、デジタルでの作画が増えてきました。しかし、そうはいってもほんの一部です。そのため、CygamesPicturesに期待することは、これまでアニメ業界で常識だったことを壊し、それでもいいアニメだと評価される作品を生み出し、アニメ業界に新しい風を起こすことではないでしょうか。それが今のアニメをより効率よくクオリティーの高い作品を制作するのにつながるのではないかと考えています。

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