G・U・M PLAY
https://markezine.jp/article/detail/24265
新人山崎です。今回の記事では果たしてアニメゲームマンガ業界と関係あるのか!と思ってしまうようなユニークなニュースを取り上げてみたいと思います。
オーラルケアブランドG・U・Mを有するサンスターが4月18日に、歯磨きをスマートフォンのヘルスケアアプリと連動させるデバイス「G・U・M PLAY」を発売しました。G・U・M PLAYは約15gの装置を普段使っている歯ブラシにセットし、普通に歯磨きをすることによって、デバイスに搭載されたセンサーがブラッシングに関する様々な情報を感知し、スマホアプリにその情報を送信、記録するというものです。日本人の8割は歯周病と言われています。歯周病や虫歯の原因であるキスが世界と比較して少ないにもかかわらず、なんと5人に1人が歯周病という調査結果もあり、歯科医師やオーラルケア業界は 歯の健康をどのように周知するかということに対して問題意識を向け続けてきました。
参考:サンスター「キスの回数、圧倒的最下位の日本(調査6カ国中)歯周病率最高の調査結果に日本独自の文化「歯みがきコップの共有」も口内環境に影響?~サンスター「G・U・M」が6カ国を対象に意識調査~」https://jp.sunstar.com/company/press/2014/1110.html
今回のG・U・M PLAYの公式サイトでは、”歯磨きを「やらなくちゃ」から「やりたい」へ”というキャッチコピーが映し出されます。歯磨きと連動するアプリは全部で3つ。口の中の菌を退治するゲーム「MOUTH MONSTER」、歯ブラシが楽器に変わる「MOUTH BAND」、歯磨き中に3分間のニュースを読み上げる「MOUTH NEWS」です。これらのアプリを通して、歯磨きの採点や歯磨きの記録やデータ分析なども同時に行います。歯磨きのゲーム化と歯の健康に対する意識を同時に醸成できる仕組みになっているのです。
ゲーム化の力は凄まじい
このような取り組みを「ゲーム化(Gamefy)」と言います。「日常の様々な要素をゲームの形にする」という意味です。元来ゲームの中で行われてきた競争や遊び、得点稼ぎ、それらによる報酬など、人々がゲームに対して熱中する要因となるものをゲーム以外の分野に応用することです。こうすることで様々なものに取り組める意識を喚起させることができます。似たような概念にゲームニクスというものもあります。ツイッターやSNSのヒットもこのゲーム化、ゲーミフィケーション(後述)をうまく利用したことが要因とまで言われています。人々を上手に夢中にさせる仕組みづくりを応用することによって、ゲームでないものにもゲームと似た論理で人々が熱くなるのです。わかりやすいのがWii Fitなどでしょう。運動を必要としないゲームと正反対の「ダイエット」でさえ、ゲーム化することによってしっかり取り組めるようになったり、コンテンツとしてヒットしたりするのです。
近年ゲーミフィケーションという言葉が聞かれますが、この言葉は文脈によって様々な意味合いを持ち、定義によってかなり意味が違う言葉ですので扱うのが難しいのです。Wikipediaによると、
(引用開始)
最広義: 社会的な活動にとってゲームが役に立つこと。
狭義: コンピュータ・ゲームのなかで特徴的に培われてきたノウハウを現実の社会活動に応用すること。アドバゲームやシリアスゲームは含まない。
最狭義: 強化学習プロセスやフロー体験を成立させるための最適なフィードバック設計のノウハウを応用すること。
(引用終わり)
とあります。企業の研修や学習、人材活用プロセスにゲームのノウハウを利用することは、「ゲーミフィケーション」として定義できそうですね。少しややこしいのが、先ほどのG・U・M PLAYも広義の意味ではゲーミフィケーションと呼べてしまいそうです。ここが少しややこしいところですね。この記事ではゲーム化という言葉を使っていきたいと思います。
ゲーム化の注意点
企業の成長にゲーム化を取り入れる場合、スタッフの業績や実績の数値化や視覚化、実績による報酬など、ゲームを構成する諸要素を育成プログラムに組み込もうとするかと思います。しかし、ゲーム化の威力は絶大です。一度夢中にすることができると、ドーパミンなどの神経伝達物質や脳内麻薬が分泌され快感と認識してしまいます。ということは、ある一つの方向に取り組むことそのものや、参加者を一定方向に導くことには向いていますが、ゲームが単純作業化、パターン化して必勝法が編み出されてしまうのと同じように、システムを作る人間がうまく管理しなければ、その行為をすること自体が目的となってしまったり、創造性を失ってしまいかねません。
成長させることに夢中にさせなければ意味がない
ゲーム化やゲーミフィケーションを取り入れようと思っている場合、どのようにその仕組みを作れば良いかということが重要になってきます。ラクジョブスタッフ床井の記事にもありますが、ゲーム化、ゲーミフィケーションによる教育や人材活用、育成プログラムの設計者は、その実践者に対して大きな影響を与えることに十分留意する必要があります。
人は楽しいことに対して生産性を上げます。「Want to」つまり「〜したい」という気持ちによって、その物事に対してクリエイティブになったり、作業のスピードがあがったりしますが、同時に「現状維持」をしたい生き物でもあります。生物学の分野に「恒常性(ホメオスタシス)」という考え方があります。生命の内部外部の環境の変化にかかわらず、生物を一定の状態に保とうとする仕組みのことです。人間の場合、体温が上がると汗をかいたり、逆に冷えると震えてあったまろうとするのはこのためで、認知科学の分野では心理的な事象にも「恒常性」が認められるという研究がされています。気持ちが良い、心地が良い状態に依存してしまうと、人間はそこからなかなか踏み出そうとしません。あらゆるものをゲーム化する際には、必ず「どうすれば夢中になれるか」に加えて、しっかりと「どうすれば成長することに夢中になれるか」ということに焦点を当てて考えなければ、単純作業依存症のような状態になってしまい、逆効果になってしまいます。
何事にも楽しく取り組めるようにすることは良いことですが、何のためにそのようなシステムを組み立てるのかをよく考えて設計しなければなりません。「どうすれば」よりも先にまずは「なぜ」を考えることが先なのです。