ソフトウェア製品のデバック、セキュリティ管理、ローカライズなどを事業として掲げるIT企業のデジタルハーツが、VRデバックチーム結成に乗り出しました。関心の高まるVRですが、2001年創業以来デバック業務を行ってきた老舗によるVRチーム結成というだけあって、注目されています。画像はデジタルハーツ公式サイトの記事のものです。
(引用開始)
デジタルハーツでは、今後本格的に増加が見込まれるVRコンテンツのデバッグ需要を見据え、サービス提供体制を強化することを目的に、検証端末の整備に加え、VRコンテンツ向けのデバッグにおける専門知識、ノウハウの蓄積とともに、業界内での連携を通じた最新技術の研究及び人材育成を行うVRコンテンツ専属デバッグチームを結成することといたしました。また、これらのビジネス機会を最大化するため、営業活動の強化及び新サービス開発にも積極的に取り組んで参ります。
(引用終わり)
ちなみにデジタルハーツは国内のVR市場の拡大を目的とした国内初のVRカンファレンスである「Japan VR Summit」に協賛しており、VRの知識やノウハウを仕入れやすいポジションを確保しているとみて良いでしょう。このまま行けばVRデバック業務の第1人者としての地位を確立しそうです。
VR自体の品質を落とさないために
Oculus RiftなどハイエンドVR機器が発売出荷され、ますますVRが身近に感じられるようになってきました。今後、日本でのVR流行はPS VRの発売を待つことになりそうです。VR産業はPS VR発売までいかに広めるか、VRの可能性をユーザーに気付かていけるか、ということが課題になってくるでしょう。
その過程において、VRデバックは重要です。せっかく高い機材を購入してまで楽しみたいと思っていたVRが案外良いものではなかったということが続くようであれば、PS VR発売後のゲーム業界は暗いでしょうし、その他VRコンテンツ開発業にも影響が出るのではないでしょうか。未だハイエンドツールとして認識されているVRをより周知していくために絶対必要なことは、まずはVRのコンテンツに対する「安心感」や「安定性」を持たせることです。
VRデバックに求められること
VRコンテンツは世界からの注目もさることながら、日本の開発会社やパブリッシャーからの注目も集めています。既存のゲームユーザーだけでなく、N高等学校の入学式に使われたり、VRシアターなどの計画が進行しているなど、ゲームという括りを超えた多岐にわたるコンテンツに取り入れられようとしています。
ただし、VRコンテンツの発展を考えた時にゲームが大きな役割を担い、しばらくの間はVR=ゲームのためのものという認識は崩れそうにありません。そうなると、ゲームでVRの価値を落としてしまうと、今後のコンテンツで挽回するという一手間二手間がかかってしまうのです。VRデバッカーに求められることは、ゲームにとどまらず、VR産業全体の第一印象を決定づける最終段階に大きく関わることによる責任感です。
ゲーム以外でも求められるVR
先ほどもVRデバックはゲーム以外でVRを用いるコンテンツ産業に対しても大きく影響すると書きました。それはVR上での音楽ライブや映画鑑賞などのエンターテイメントに限ったことではありません。例えばバーチャル会議室などはどうでしょう。Skypeで会社の会議を行う企業などが登場して久しいですが、今後はより視覚的な臨場感を持たせることができるVRを使って、バーチャル空間上で会議やミーティングを行うことができるかもしれません。
その場合、オフィス産業に代わる新たなマーケティング市場の開拓などにVRが重要視されるようになります。VR上の会議室のデザイン業務など、3DCGクリエイターに対しても新しい需要が生まれてきそうです。そうなると、この会議室に対するデバック業務も必要です。VR酔いやヘッドマウントディスプレイなどの装着感なども考慮した試遊、テスト結果を報告し、より良いVR体験を生み出す。この視点はVRデバッカーだけでなくVR産業に関わろうとするすべての方が持つべき大切なことと考えます。