パチンコ 釘問題 遊技機業界で新しいプロジェクトがなかなか始まらない理由

shutterstock_190629758遊技機業界を襲う規制ラッシュ

記事を読んで頂いてありがとうございます。パチンコ業界の釘問題について考えてみる記事を先日アップしましたが、今回はその流れもあり新規プロジェクトがなかなか立ち上がらない理由について迫っていきたいと思います。

去年、一昨年と遊技機業界の案件が全体的に鈍くなっていました。特に2014年9月16日に型式試験の見直しが行われ、出玉率の下限55%を遵守するような試験方式への変更がなされたため、市場に最も流通していた純粋なボーナスを搭載しないAT機・ART機に対する規制が入りました。これによりパチスロ市場は一気に開発がストップまたは企画への差し戻しが発生し、多くの映像制作会社、遊技機開発会社でラインが止まったり消えたりすることになりました。

この時期に多くの会社から新しい案件があれば紹介してほしいという話を聞いていたのですが、一方でパチンコのプロジェクトを中心に受注していた会社からは、パチスロ案件がちょうどなくて助かったという話もありました。安心もつかの間、2015年にパチンコにも規制が入りました。2015年11月からの新基準に適合した台のみ新台入替が可能となり、大当たりの確率も400分の1から320分の1に変更されました。さらに釘問題のところでも取り上げましたが、これまでスルーされてきた釘調整はできなくなり、適合試験を受けたときと同じ釘の状態でホールに並ぶ必要がでてきました。

その結果パチンコのラインも多数ストップすることになったり、進んだかと思えば企画段階まで差し戻しになったりと、いろんなところでプロジェクトのスピードが鈍化していきました。プロジェクトが進まないと特に一番ラインが大きく膨らんでくるときに活躍する映像制作会社の仕事量が激減し一気に厳しい状態に追い込まれていきました。プロジェクトが進まない、立ち上がらない、立ち消えになる、企画段階まで戻ってしまう、本制作になかなか入らないなど、遊技機の映像制作を行っている会社からは悲痛な声が上がっています。ではなぜラインが全く動かなかったりするのでしょうか。その点について考えていきたいと思います。

適合試験の費用と適合率

パチンコやパチスロの実機開発においては、釘問題の記事でも取り上げたように、保通協による型式試験の適合を受けたのち、メーカーが各都道府県の公安委員会から検定が通ればメーカーは各ホールに販売できることになります。型式試験を受けるのには、パチンコだと144.2万円かかり、パチスロは162.8万円かかります。これは一回の試験の金額で通らなかったらまた費用を支払って適合試験を受ける必要があります。では実際に適合試験で通過できる確率はどれぐらいあるのでしょうか。

引用開始

保通協は2月3日、1月中に実施した型式試験等の状況を発表した。
適合数は、パチンコが結果書交付54機種のうち26機種(前月比2機種減)、パチスロが結果書交付59機種のうち25機種(同比4機種減)。適合率ではパチンコが約48.1%、パチスロが約42.4%となった。また、受理件数はパチンコが73件(同比1件減)、パチスロが55件(同比12件減)。
パチンコの適合率は4カ月連続で下落が続き、遂に50%を割り込んだ。

引用終了
パチンコ業界誌「遊技日本」 パチンコ適合率、50%割れ より抜粋

パチスロ規制の大きな変革のあった2014年9月の適合試験適合率は6.5%です。46の型式のうち、3つしか適合しませんでした。これは表の中でも最も低い数字で規制が発表された8月からの駆け込み申請はほぼ通らなかったために数値がかなり落ち込んでしまいました。逆に一番高い数値となった2014年11月を除けばすべて5割を切っており2014年も2015年も適合率の平均は37.2%という結果でした。

一方パチンコは2014年は平均83.9%だった適合率が2015年には平均こそ75.1%ですが、2015年9月から適合率が下がり続け、ついに2016年1月には50%を割り込んでしまいました。さきにあげたパチンコの規制の結果、新基準に適合した機種じゃないと新台入替ができないことに伴い、新基準適合のパターンというかそこにはまるスペックがつかみ切れていないのが原因と言えると思います。

shutterstock_117604597落ち込む適合率と売上の低下

本題であるパチンコの新しいプロジェクトが立ち上がらない、もしくは進まない理由の多くはここにあります。これまで作ればおおかた適合してきたパチンコの台が、5割未満まで落ち込んでしまっているわけです。そして不適合と判定された台は改めてスペック等の調整を行い、再度適合試験を受けます。そうすると新しいプロジェクトを立ち上げる前に適合試験を受けている進行中のプロジェクトがきちんと終わりを迎える必要がありますが、それがなかなか通らないがために新プロジェクトが延期になったりしてしまいます。その結果予定していたラインが埋まらずに遊技機液晶開発を行っている会社は困ってしまうことになります。

そしてもう一つの理由として業界全体の売上が下がっていることがあげられます。2015年の遊技機販売台数を見てみましょう。パチンコ部門ではサンセイの牙狼魔戒ノ花が12.6万台とトップでしたが、2014年比で約4%落ち込んでいます。パチスロ部門はサミーの北斗の拳強敵が7.8万台でトップでしたが、こちらも2014年比で見ると、パチスロ全体の販売台数は約4.5%落ち込んでいます。

パチンコプラス パチンコパチスロ販売台数一覧(2015年版)を参照

shutterstock_228344008これからの遊技機業界で液晶開発を担うのは

つまり販売台数が落ちると言うことは売上も落ちると言うことになるので、その結果発注する量というかライン数そのものが減り、1メーカー当たりの発注量も減ってしまいます。これが規制によるストップがかかったこととダブルで響いてしまい、遊技機液晶制作の下請けをしていた会社は各社とも厳しい状況に追い込まれる結果となりました。パチンコは適合率が5割近くダウンしたことが響くとともに、売上も落ちているので一つのプロジェクトを立ち上げるのもこれまでよりも難しくなった上に、開発費の削減も厳命されており、開発会社には厳しい状況が続くと予想されます。

とはいえ、こんな状況下でも伸びている遊技機液晶開発の会社もあります。現在受注量減により厳しい状況に追い込まれている会社は、そういった伸びている会社と付き合いを深めることにより、これからの遊技機開発においてアドバンテージを握ることが出来るでしょう。逆に、遊技機開発にそこまでの強みとスタッフ自身のモチベーションが低いのであれば、他の業界で仕事を探した方が良いでしょう。これから先、大きな変革があって遊技機業界が再び好景気になる可能性がゼロではないですが、やはり作りたいものを作るという意識がない限り、遊技機業界もさることながらどの業界においてもクリエイティブは難しいと言えます。遊技機というエンターテイメントをお客さんに楽しんでもらいたいと心の底から思っている会社であれば、これからの遊技機開発において、業界とともに成長し生き残っていける可能性が高いと思います。

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