パチンコ釘問題 遊技機業界に激震が走ったこの問題の根幹を考える

shutterstock_260939468ぱちんこ機がホールに設置されるまでのステップ

2015年、遊技機業界のなかでもぱちんこ業界は釘問題に揺れた年でした。そもそもぱちんこ業界の釘問題がどんなことなのかがわからない人のために簡単に説明していきます。

ぱちんこ台は完成したら一般財団法人保安通信協会(保通協)で検定を受ける必要があります。というのも、ぱちんこやパチスロは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)に管轄される申請事業に分類されます。そのため、遊技機そのものが社会的に問題のない設計でしっかりと作られているかをチェックし、保障を受ける必要があります。その保障をするのが、国家公安委員会規則に則った基準を持つ保通協となります。

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保通協は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」第20条第5項の規定に基づく、国家公安委員会の「指定試験機関」となっており、都道府県公安委員会の委託を受けて遊技機の「型式試験」を行っております。

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保通協ホームページ 遊技機の型式試験業務より抜粋

本来ホールに導入される遊技機一台一台について基準をクリアしているのかチェックする必要がありますが、何十万台とある遊技機をすべてチェックするわけにもいかないので、保通協では遊技機の型式試験を行い、その試験をクリアして適合をうけた型の遊技機であれば、どの遊技機も同一性が担保されるものとして、各都道府県の公安委員会に検定を受けることが出来るようになります。そしてその検定をクリアすると初めてメーカーはホールに販売することが可能となります。ホール側も買うと決めた台が保通協試験に適合し、かつ公安委員会の検定を受けたことをもって、認定を受けることが出来、ホールに設置することが可能となります。つまり一つの台がホールに設置されるまでに、適合、検定、認定といったステップがあります。

shutterstock_286664159国会でも提起される釘問題

では釘問題とはなにが問題なのかという本題に入っていきます。2016年1月19日に国会で維新の党に所属する初鹿明博議員より、「不正パチンコ台の撤去に関する質問主意書」が提出されました。

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平成二十八年一月十九日提出
質問第六四号

不正パチンコ台の撤去に関する質問主意書

提出者  初鹿明博
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不正パチンコ台の撤去に関する質問主意書

 パチンコ台について、パチンコ関連の業界団体の呼び掛けで設立された組織である「遊技産業健全化推進機構」が警察庁の要請により実施した調査において、全国の百六十一店舗のパチンコ台二百五十八台のうち、全ての台の釘の打ち方が違反状態であった旨の報道がなされています(『朝日新聞』平成二十七年十二月二十五日)。
 この調査結果を受けて、警察庁はパチンコ店等の業界に不正パチンコ台の撤去を要請し、その数は数十万台に上るとみられます。
 この現状を踏まえて以下、質問します。

一 不正改造をした台を放置しておくことは問題であるものの、直ちに全ての不正パチンコ台を撤去してしまうことは店舗側に与える影響が大きいと考えられるが、いつまでにどのような方法で撤去を行うのか。
二 警察庁は、メーカーの出荷段階でもくぎ曲げが行われている可能性があるとして、メーカーの業界団体である「日本遊技機工業組合」に調査を指示し、その結果、メーカーの出荷時で、検定を通過したものとは異なるパチンコ台があったと報じられているが(『毎日新聞』平成二十七年十二月二十四日)、それは事実か。
三 二が事実であれば、上記のような不正を行った業者に対して制裁措置は課さないのか。
四 このような不正行為を根絶していくためにどのような手段を取っていくのか。

 右質問する。

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衆議院ホームページより抜粋

単に業界だけの話では済まなくなってきましたが、これからどのような流れになっていくのか、そこを書いていきます。そもそも釘問題がなぜ発生するのかという話です。保通協により適合を受けたのであれば、それを設置して何も問題はないはずです。ですが、上記にもあったとおり、実際にホールに設置されている台を調べてみると釘の打ち方が試験の時と大きく異なる状態になっています。となると、ここで疑問が生じます。どこで釘の打ち方が変わったのか、ということです。

shutterstock_189634283適合後にどこで釘の打ち方が変わったのか?犯人は・・・

考えられる箇所は2箇所あり、メーカーがホールに出荷する前に台を作った段階で釘の打ち方が変わっている、もしくはメーカーから台を納入されたホール側で設置時に釘の打ち方を変えている。それ以外に釘を調整する箇所はありませんので、そのどちらかになります。ちなみに試験を通過するために設定した釘は普段パチンコを打ちなれている人からするとあり得ない釘の設定になっています。実際の台は確変に入って大当たりしないと通常は玉がどんどん減っていくような設計になっています。実は法律上パチンコには役物比率は60%以下という決まりがあるので、そこをクリアするためにそれ用の調整で試験を受けています。役物比率とは、全体の払い出しにおける、大当たりによる払い出しの割合を出したものです。ですので、大当たりで一気に払い出すということをやってしまうと約物比率が一気に跳ね上がってしまうわけです。ここが適合試験時と実際に打つ台の大きな違いです。

仮にメーカーが釘調整をして出荷していた場合、適合自体を不正なことをして通過したことになってしまい、その場合2項取り消しというメーカーが作った型式そのものがNGという厳しい結果になってしまいます。2項取り消しとは正確に言うと風営法第20条第2項違反による認定取り消しのことです。

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(遊技機の規制及び認定等)
第二十条  第四条第四項に規定する営業を営む風俗営業者は、その営業所に、著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして同項の国家公安委員会規則で定める基準に該当する遊技機を設置してその営業を営んではならない。
2  前項の風俗営業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該営業所における遊技機につき同項に規定する基準に該当しない旨の公安委員会の認定を受けることができる。

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風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年七月十日法律第百二十二号)より抜粋

逆にホール側で違法な釘の調整をしていた場合、無承認変更という処分が下ります。釘調整自体は釘がへたってくることがあるのでそれを元に戻す意味で調整すること自体は違法ではありませんが、あくまで出荷時と同じ状態に戻すという範囲で認められています。勝手に変更してしまった場合、適合、検定、認定の流れ自体の意味がなくなってしまいますので、処分されるのですが最悪ホールだけではなくグループ全体の責任にまで波及します。

ここから実際にどういった判断にするかですが2項取り消しにしても、無承認変更にしてもメーカーかホールへの大ダメージは避けられません。しかも1台だけ変更したというわけではなく、不正パチンコ台の撤去に関する質問主意書にもあったようにホールに設置されているすべての台の釘が型式試験と違っていたというとてつもない事態です。とはいえこれまではそこにおとがめが入ることもなかったのですが・・・。数台勝手にホール側が釘の調整をしただけで書類送検され、下手するとグループ全体が営業停止に追い込まれてしまう中、ホールの責任とすればすべてのホールが営業停止、下手すると倒産となるでしょう。メーカー側の責任にするとホールに設定している全パチンコメーカーへ処分をすることになります。これもまた業界にとっては大ダメージです。

shutterstock_222746809遊技機規制違反という結論

結局のところ今回はどういう判断になったのかというと下記の記事を参照して下さい。

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警察庁は11月6日、都内新宿区の遊技会館で、ホール5団体の関係者を集め、検定機と性能が異なる可能性のあるパチンコ遊技機について、業界を挙げて撤去を推進するよう要請した。

当日配布された文書には、今回の要請に関わる経緯等が記されている。まず、遊技産業健全化推進機構による遊技機性能調査の現状に触れ、「同年8月までの調査結果によれば、約6割が一般入賞口に玉が全く入らず、残りの4割も10分間に10個も入らないとのことであり、検定機と同性能のパチンコ遊技機が1台も発見されない」という現状を指摘。それとともに、日工組より既に「メーカーがホールに出荷する時点で、既に検定機と異なる性能となっている可能性があることから、該当するぱちんこ機について、業界挙げた回収を今後進めていくと報告を受けた」と説明。

以上のことから、警察庁はホール団体関係者に対し、風営法の遊技機規制に違反するおそれがある遊技機について「業界を挙げた回収に最大限協力するとともに、可及的速やかに該当型式に係る遊技機の撤去を推進して頂きたい」と要請した。

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パチンコ業界誌『遊技日本』 釘問題抵触機を撤去要請――警察庁 より抜粋

要するにメーカーもホールも遊技機規制違反に該当する恐れがあるから適合しないパチンコ機は自主的に撤去をして下さいね、ということになったわけです。メーカーもホールもどちらか一方を処分するわけでもなく、健全な運営が出来るように両者が速やかに対応しなさいという、一見すると温情判断が下りました。なぜ一見するとなのでしょうか。それはメーカー側の責任となると、適合を認めた保通協側の責任に波及します。逆にホール側の責任となると、遊技機を認定したものの、法律違反が行われていたことを見過ごした公安委員会や都道府県警所轄の責任に波及します。遊技機を出荷する際に必要な、適合、検定、認定という業界の根幹を揺るがす凄まじい事件になりかねません。ですので遊技機規制違反という体でなんとかしなさいということにすることにより、業界全体の安定を図りました。

shutterstock_178291424これからのぱちんこ機と業界の行く末

結局のところこれからどうなるんだという部分に最も注目が集まると思いますが、それはメーカーもホールも警察庁も保通協も業界を盛り上げていく団体が歩み寄ってこれからのことをしっかりと話し合う必要があると思います。それこそ遊技機法とか作って独立した法規制の中に組み入れるとか、カジノに向けたギャンブル解禁の流れに乗るとか、いろいろな方向性はあるでしょう。消えていく業界とは思いませんし、消えていかないと思います。それは経済的な面もそうですし、エンターテイメントとして楽しめるものであれば社会的必要性もあると思います。ギャンブルが全部だめなら競馬や競艇、宝くじだってギャンブルですし。

いっそのこと今の台の状態を正しい状態と認定するとか、逆にパチンコにスロットのような設定を入れるとか、釘自体をなくしてしまうとか。いろいろな方向性は考えることが出来ると思います。考え続けていけば、社会的にも業界団体的にも許容できるラインがきっとあります。そこを目指してお互いに歩み寄りつつ、方向がそれているときは是正しながら、業界がこれからも残って成長していく方向性を見据えて、さまざまなアイディアを取り入れて進んでいってほしいと思います。そして我々もそれに貢献できるよう、ビジネスマッチングや交流会はもとより、更に貢献できることを考えつつお手伝いしていきたいと思います。

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