皆さんは「ONE PIECE」の新刊をいくらで買いますか?現在Kindleでは400円、店頭であれば大抵432円で買えるはずです。アニメであれば今月29日に発売される「おそ松」さんは、後述する特典や新規映像が入ってDVDが6,264円。Blu-rayは7,344円です。・・・しかし、これらの値段設定に疑問を持ったことはありませんか?今回は「表現にお金を払うとは何だろう」という結論の出にくい問題について、皆さんに気づいてもらい、そして考えてもらうための記事です。
アニメは安くなった?
アニメが今の用にDVDとして売られる以前、アニメファンは作品をビデオグラムで買っていました。・・・というより、真のアニメファン(?)はLDで購入していました。LDを知らないであろう若い世代にお話ししますと、LDとは「レーザーディスク」の略です。(左の画像は、Amazonに出品されていたボトムズのLD)DVDの6倍の大きさで、重さも40倍ほどあります。正直ものすごくかさばりますが、ビデオと違って何度見ても劣化しないためにファンの間では重宝されていました。この頃のLD1枚の値段は安くて5千円前後。劇場版やOVAなど高いものだと1.5万円のものもありました。その上LDは1枚で最大60分までしか記録出来ません。今のアニメDVDが1枚あたり最大でも3話まで収録していることを考えると、たとえLDが一枚1万円でも単純計算で全話揃えるのに2.4倍の値段を払う必要がありました(しかも重い)。
LD全盛期に青春のオタク時代を送った弊社代表によれば、買って良かった!と思ったLDは「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」で、記憶によれば15,000円だったそうです。今調べてみたところ、同タイトルのBlu-rayは5,400円でAmazonにて購入出来ます。約1/3の値段!しかもこのBlu-rayはキャスト&スタッフによる新規オーディオコメンタリー、特報、予告、本予告、TV-CM、デジタルパンフレットギャラリーといった映像特典が付いています。LD時代は映像特典なんてありませんでした。こうして見ると、現代のアニメファンは30年近く前に比べ、随分恵まれているような気がします。
ムンクの叫びは200億円
LDやDVDの値段、それに限らずこの世のものの値段はいかにして決まるのでしょうか?よく言われるのが逆算方式で「このDVDを売るために必要な諸経費、人件費、制作費、広告費・・・等々の全予算から逆算して損益分岐点を見極め、値段を決める」というものです。Blu-rayはDVDより少し製作費が高いために値段が高い、という訳ですね。確かにこの方法はとても論理的で理に適っているように見えます。しかし、今回はあえてその「平和に見える解決方法」にメスを入れます。「安いのでは?」「高いのでは?」という方向では無く、「何故金額が決まっているのか?」についてです。
ここで少し視点をずらしましょう。この絵はよく知られているムンクの「叫び」です。制作は1895年。値段は1億1990万ドルです。今のレートでも約200億。現代美術になると更に謎なことに、ただキャンバスが赤と白で塗られているような作品(下図参照:バーネット・ニューマン「アンナの光」)でも約100億円ちかくで買い取られています。絵画の世界での値段設定は、少なくとも「逆算方式」ではありません。もし絵画の値段が、絵の具代、道具代、画家の人件費やアトリエの家賃から逆算して決まっているのであれば、モナリザだってたいした値段にならないでしょう。そこで金銭が支払われているのは、陳腐な言い方ですが「感動」に対してでしょう。それに加え誰が描いたか、どんな時代に描いたか、どんな技法が使われ、どんなシチュエーションで描かれたか・・・そういった情報的価値の1つ1つ、そしてその芸術家にしか生み出せない1つの表現が全て合わさって絵の価値として積み上がります。
それであれば、アニメや漫画といった作品もほんらいは金額がつけられないものなのかもしれません。アニメや漫画を人が見るのは何故でしょうか?一種の「感動」を覚えたいからではないでしょうか。逆に感動が無かったり満足できないものであれば、視聴者や読者は減ります。人に寄っては人生を変えるほどの価値がある作品もあれば、なんてことのない1作品だってあります。例えば前述の弊社代表は、いくつものOVAを「ジャケ買い」していますが、その中には「1万円以上ドブに捨ててしまった・・・!」と思える作品もあったそうです。もちろん一方で、「1万5千円以上払っても良い」という作品もあります。今ではその半分近い値段でDVDを購入することが出来ます。更にいえばBOOK OFF等の中古取り扱い店なら4000円ほど。また、文字通り違法ですが、違法アップロードサイトであれば全話0円で見ることが出来ます。様々な抜け道ができてしまったからこそ、私達は作品の価値を以前より意識しにくくなってしまったのではないでしょうか?
私達は何にお金を払うのか
今回の話には軽々と結論を出せません。私達はいくらでも安くアニメや漫画に触れることが出来る時代になりました。しかしアニメや漫画が皆さんにもたらす価値は果たしてどれほどのものでしょうか?制作側だからこそ、または制作側を目指す立場だからこそ、作品への価値を感じるという場合には最低限メーカーや出版社が決めた値段で買って欲しい・・・と私達は常々思っています。公式からの無料放送も増え、その一方でグッズ等での売上回収が増えたのも確かです。そういった形のビジネスも確かに働いていますが、DVDやBlu-ray、単行本といった作品そのものにお金を使うことは、クリエイターや業界に大きな励みとなります。もし少しでもその作品に魅力を感じているなら、どうか定められた金額を払って楽しんでみて下さい。
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