取次 倒産が相次ぐ中で、出版業界や漫画業界は本当に大丈夫なの?

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昨日、出版取次会社の「太洋社」が自主廃業を視野に入れている、というニュースが話題になりました。太洋社はコミックスの取り扱いが多い事で知られていましたが、去年の6月に同じ取次会社準大手の「栗田出版」が民事再生申し立てを行ったりと、出版取次業界の不振はここ最近に始まったことではありません。出版取次会社が立ちゆかなくなる事は、アニメゲーム漫画業界に於いてどういった影響を与えるのでしょうか?

そもそも「取次」とは。

そもそも「取次」とは何でしょう。これは、出版社(版元)と書店を繋ぐための会社です。出版社に対して国内では書店が多すぎ、全ての流通を出版社側が行うのには無理があるため、間に「取次店」を挟んでいるのが出版業界です。流通の部分を請け負うため、営業利益は他の出版関連会社より低く、版元で営業利益が20%ちょっとというところ、取次は8%となります。版元、書店ありきのビジネスのため、出版業異界の景気に大きく左右されます。今回大洋社が自主廃業を視野に入れているというニュースは漫画業界、出版業界の不振を表すものかと思われがちですが、実際はどうなのでしょうか。

データで見る出版業界

今回の様な取次店の不振や、書店の相次ぐ倒産というようなニュースを目にすると「出版された本が売れないのだろうか」と思われがちです。たしかに出版科学研究所から毎年発表されている書籍の売上推移は激減しており、書店の数も右肩下がりが止まらないように見えます。(以下画像はクリックで拡大)

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しかし、「書籍」の指標には「電子書籍」が含まれていないという大きな盲点があります。以下は『電子書籍ビジネス調査報告書2015』からのデータですが、後半の予測データはとにかくとして、年々電子書籍の売上が増している事がわかるかと思います。この2つのデータを足してみても先ほどの右肩下がりカーブは微妙にゆるくなります。

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その上、先ほどの「書籍」売上の中には、版元からの直売やAmazon などの直接取引データは入っていません。ですから一概に「出版不況だ!」とも言えない訳です。それでも取次店が潰れてしまうのは何故か。実際それらの問題は、ネットを通じた書籍の売買が多くなってきたからこそ起きたとも考えられます。

toritsugiネット販売は出版取次店の敵か

書籍のネット販売でも出版取次店は必要とされるため、Amazonなどの台頭が出版取次会社の活躍の場を根こそぎ奪った訳ではありません。しかしそれらネット書店も、主立った取次会社は決まっています。例えばこちらをご覧下さい。これは主立ったネット書店の取次会社をまとめたものですが、Amazonは日販とトーハン(共に取次店の二台大手)と大阪屋、楽天BOOKSや紀伊国屋、丸善といったリアル店舗のネット販売も、全て主だった取次は日販・・・という形で、ほとんど大手に絞られている事が分かります。去年の6月に民事再生申し立てをした栗田出版販売は、18のリストの中で1サービスにしか名を連ねていません。大洋社に至ってはゼロです(主立った取次店のリストのため、全くのゼロでは無いと思われますが・・・)。

また、配達が必要ないKindleや端末への電子書籍配信は、元から取次店が必要ありません。そのため紙媒体の書籍より割り引いた価格でセールを行われることもたびたびあります。消費者が電子書籍側を選ぶようになるのも頷けるでしょう。先ほどのように電子書籍の売上が伸び、ネット書店の取次を大手が押さえてしまえば、いくら名を知られた古くからの取次店と言えど、大変苦しい状況になってしまうのです。

漫画は売れない、は本当か?

以前、このブログで漫画の売れ行きについて書きました。

漫画家 採用 新人漫画家採用枠は1年に200人!? 電子書籍とWEBマンガに見るマンガ業界の未来

そこでは、新人漫画家採用枠が年間200人くらいという狭き門である事、ウェブ漫画が盛り上がってきているが、まだビジネスとして土台が弱いことから突然の打ち切りや単行本発売に至らないこともあるという事を中心に執筆しました。実際、漫画の売上自身は年々少しずつ伸びており、必ずしも漫画に関しては不況が訪れているとは言えない状況です。しかしそれに反比例して「漫画家」の競争は激しくなっており、売上が伸びる一方でタイトル数も増えているため、1タイトルがものすごい売上を上げる、というより「漫画」というジャンルそのものが人気である、ということがわかります。

今でも私達に漫画家の採用に関するご相談はよく来ます。それはウェブ連載用であったり、紙面掲載だったりと色々です。雑誌の新人賞もかなり力を入れています。たしかに漫画は今、売れています。漫画で育った人達が大人になり、どんどんビジネスを展開しているのですから。しかし実際クリエイトする場はまさに戦場と覚悟した方が良いでしょう。逆にそういった状況が、更に人をのめり込ませる奇跡のような作品を生む土台になるのかもしれません。

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