就職転職の際に、志望理由として「成長したい」という人が多くいます。前向きな言葉ですし、自分の成長が会社の成長につながるイメージを持っているのだと思います。しかし、「成長したい」と思えば思うほど、資本主義の歯車一直線だとわかった上でその発言をしている人はどれくらいいるのでしょうか。
成長すれば歯車にならずに済むと思っていませんか?
資本主義と聞くと、金持ちが一般市民から搾取している実力主義の世界と思っている人が多いと思います。そして実力主義だからこそ成長して実力をつければ、資本主義社会で勝つことができる、金持ちになれると考えている人が多いことも多数です。しかし、それは間違いだと言わざるを得ません。
世の中の常識は、給料は年功序列で決まっている、給料は実力で決まっているという考え方かと思いますが、それは間違いです。現象だけ見れば、年功序列に見えるかもしれませんが、それは間違いです。実力主義だと思っている人はさらに見当違いです。
あなたがもらえるのは一生働き続ける人生に必要なお金だけです
労働者とはつまり労働というサービスを提供する人です。つまり、具体性を捨象してしまえば、労働力という名の商品です。マルクスは、労働者が労働力という商品であるという発見をしました。「資本論」にはそのことが書いてあります。商品である以上、労働力にも価格があります。つまり、賃金、年収です。この労働力の価格はどうやって決まるかというと、労働力の再生産コストによって決定されます。
もう少し噛み砕いていえば、労働力という商品が稼働し続けるためのコストがいくらかかるかということです。労働力と言えども人は人です。衣食住が伴っていなければ生きていけません。死んでしまっては働き続けてくれないので、毎日自分という労働力を再生産してもらうために、次の日も今日と同じように働き続けてくれるためにお金が必要です。
資本主義はあなたの子供を求めています
また、再生産はロングスパンで考えられています。その人ひとりの人生でなく、その後続く将来も働き続けてもらわなければ再生産は続きません。つまり、労働者には、子供を産んでもらって親となってもらって、子供が労働力という商品として成熟するまで再生産してもらう必要があります。親の年収と子供の年収の相関関係があるかないかという議論がありますが、資本主義的に言えば、労働力は再生産することを求められているのであって、親の年収に子供の年収が近づくことは、資本主義の要請からしても納得できる部分があります。
最後に成長も再生産コストの中に含まれています。1955年の一人当たり名目GDPは9,406円、2007年の一人当たり名目GDPは400万8千円です。つまり52年間で約426倍日本人の生産性は向上したことになります。つまり1年間当たり8倍以上の成長は日本で働く以上、当然ということです。
仕事がつらいのは当たり前
されそこで質問ですが、「成長したい」という思いを持っている人の中で、「年8倍以上」という基準を持っていた方はどれだけいるでしょうか。もし、1.1倍程度、2倍程度、あるいは成長なんかしなくていいと考えていた人にとっては、成長が全然足りないと追い立てられる社会が日本だということです。
直接の上司や会社の社長も意識していなかったとしても、日本のトップ、あるいは世界のトップの意識は年8倍以上の成長です。彼らはその時代を生きていました。無意識下であったとしてもその水準を必ず持っています。だから現代日本資本主義社会で生きるためには年に8倍以上成長している人でなければ必ず息苦しさを感じてしまう、8倍成長してやっと普通でまともな生活ができる社会だということです。
その社会をおかしいと思うのは勝手です。しかし、おかしいといくら一個人が文句を言おうとも状況は変わらないし、日本国民全員が文句を言ったところで何も変わらないかもしれません。そして、たとえ国家というシステムが崩壊したとしても資本主義というシステムは、今地球上にいる人たちが死ぬまで続く可能性が高いでしょう。少なくとも、資本主義の崩壊に自分の人生を賭けて座して待つにはリスクが高すぎます。資本主義というシステムを理解して、資本主義の中で生きることを受け入れる以外に方法はありません。
当たり前の人間として生き続けるために必要なこと
そして資本主義を受け入れている人であれば、成長するということは息をして生き続けるのと同じくらい当たり前だと受け入れる必要があります。大抵の人にとっては自分の望むペース以上で成長することが求められます。もしそれができないのであれば、社会主義というシステムから欠陥商品として排除されます。資本主義社会で生き続けることはできません。資本主義の覆われた人間社会の外で生きることを余儀なくされます。だからこそ人間として生き続けたいのであれば、今この瞬間も成長し続けている必要があります。成長に対して生存の危機を感じる必要があります。求人という仕事は、人の働き方に影響を与えることにこそ意味があると思っているので、このようなことを書きました。最後まで読んでいただきありがとうございます。