文化庁プロジェクトで3Dアニメ制作
アニメ業界で新しい試みが始まっています。日本経済新聞「かれんとスコープ」によると、アニメ産業の底力を鍛え、未来を切り開いていくための施策としてCGを本格導入してアニメの職場にてOJTプロジェクトを始めた企業がいるというのです。今までも、アニメ業界でOJTのアニメーターインターン制度はありましたが、今回は3DCGアニメで、かつ文化庁の委託事業とあって従来の各企業への丁稚奉公的な体制とは違い、本格的に次世代のトゥーンレンダリングを扱ってアニメーションを作る若者を育てていこうという方針のようです。
見る人が見ればわかる3Dアニメ
文化庁で3Dアニメが指定されるように、現在は日本のアニメ=手描き2Dとは限らなくなってきました。『機動戦士ガンダム』『妖怪ウォッチ』『ワンピース』なども、一件2Dの作画のように見えてモビルスーツや背景、キャラ、船などいたるところに3Dが使われています。3Dはその名の通り立体的な表現に適しています。従来は2Dの平面の紙の中で独自の技術によって立体的に見せる描き方をしていましたが、どうしても線や描き込みが多くなりアニメーターにかかる工数や技術的負担がありましたが、3Dで作る事によってPC上でカメラ位置や動きを付けることができ動きのバリエーションも簡単に増やせることから作業効率が高く、様々なアニメスタジオで3Dが導入されてきています。3Dアニメと聞くとピクサーやディズニーのようなフル3Dの作風を想像する人が多いかも知れませんが、日本における3Dアニメは2D作画に慣れ親しんだアニメファンに合わせて独自の進化を重ねてきたガラパゴス3D。前述の「トゥーンレンダリング」という技術を使ってCGでありながらも塗り方や陰影で手描きに見せるため、よっぽどアニメを見ている人出ない限り、一見してどこが3Dなのかはわからないようになっています。最近では2Dと3Dのハイブリッド型も多く、2Dも徐々に紙からデジタルへと移行してきています。
紙からデジタルへ。デジタル作画に対応する若手獲得問題
紙からデジタルへの移行に際してアニメ業界の中でも早く導入に向けて動いたのはグラフィニカ、サンジゲン、ポリゴンピクチュアズ、旭プロダクション等でした。政府の協力などもなく、完全に自社独自の試みだったため、各社とも設備投資や人材確保・育成、既存プロジェクトの進行を遅らせないで新体制へ移行することの苦労と立ち向かってきました。作画スタジオであるグラフィニカは、2013年からデジタル化へ踏み切り、当初は1人当たりの平均動画作成枚数が導入前の3割に減るなど辛い時期もありましたが、後々の効率アップを見据えて乗り越え1年半後には1.7倍の効率アップに成功しました。グラフィニカでは国の実習事業に指導者して参加するほか、全国の専門学校に出向いてデジタルにアレルギーのない若い人材の採用を進めています。このような新しい試みはアニメを成長させてきた熟練アニメーターたちとの対立を招くことにもつながっています。アニメ制作の現場では、未だ力と人脈を持ったベテランを中心にディレクションが回され、その采配によって成り立っている部分が大いにあり、そうしたベテラン世代が演出・プロデュース側にい続け若い世代の育成に時間を使えなかった今までの積み重ねが、これからのデジタル移行への大きな障壁になっています。優れたアニメを作るためには演出力・プロデュース力は必須です。現場の効率だけ上げても作品自体が良くならなければ先細りになってしまいます。丁稚奉公的に若い世代には安い賃金で数をこなさせ、本人が耐えられなくなったら放出するという今までのやり方を是正し、若い世代の育成体勢と賃金アップ、それに伴う上流工程である演出・プロデュース能力の習得を進めていく試みが今回の文化庁の資金力も使っての委託事業をきっかけに広まっていくことを願います。
日本経済新聞「かれんとスコープ」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO96053190T10C16A1TZD000/
アニメ制作におけるデジタル作画のメリットは? – アニメ業界の現状と課題の解決に向けて
https://news.mynavi.jp/articles/2015/07/09/ac/
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』https://g-tekketsu.com/
『TVアニメ ONE PIECE』https://www.toei-anim.co.jp/tv/onep/
グラフィニカの直近実績 https://www.graphinica.com/category/works/works-pickup/