アニメゲーム漫画を作れるのは1作品につき1人だけ comceptの稲船敬二さんが語るコンセプトの重要性

51qjv+eCbXLこのゲームを作ったのは誰でしょう

アニメゲーム漫画が作りたいという人が最初にぶち当たるのが、やりたいような仕事ができないという悩みです。しかし、そもそもにおいて作りたい作品を作りたいように作れる人はどれだけいるのでしょうか。プロデューサーやディレクターであれば、ある程度その立ち位置に近いでしょう。基本的に一つの作品に名前が付くのは一人だけです。宮崎駿さんのジブリですし、庵野さんのエヴァですし、宮本さんのマリオやゼルダですし、小島さんのメタルギアですし、手塚治虫さんのアトムですし、鳥山さんのドラゴンボールです。

実際の制作現場には、多い時で1000人近い関係者がいる作品もありますが、その中で「○○さんの」と言われるのは一人だけです。誰か一人でもいなかったら、ということもできますが本当にそうでしょうか。その仕事を誰かが代わりにやっていたとしても実は成り立ったのではないでしょうか。一概に誰がいないと、誰がいなくてもということは言えませんが、どんな作品にも突き詰めてしまえばその境界線は必ず存在します。

41NUeywAK+L稲船さんが語る「コンセプト」とは

「ロックマン」「バイオハザード2」「ロストプラネット」「デッドライジング」を世に送り出した日本を代表するゲームクリエイターの一人、稲船敬二さんが書いた「どんな判断や!」という本では、

クリエイティブの中でも一番重要なのはコンセプトです。コンセプトを生み出す人間のことを僕はコンセプターと呼んでいます。…ゲームは一人で作るものではありません。ストーリーを作る人、キャラクターを作る人、サウンドを作る人、プログラマーなどなど、映画制作並みに大勢の人が関わります。でも、今なにもないところでゲームを作ろうというとき、「こういうものをつくろう」という人が絶対に必要です。大勢で何かをして遊ぼうというときに、たとえば、「鬼ごっこをしよう。こういうルールで、誰それが鬼で」という人がいないと、みんなバラバラに遊ぶしかありません。この最初に「鬼ごっこをしよう」という人がコンセプターです。ゲームは大勢で作るものではありますが、この部分を捉えると、一人で作るものでもあります。

と書かれています。つまり、どんなゲームでもコンセプターは一人です。それがプロデューサーの時もあれば、ディレクターの時もあれば、ほかの誰かの時もあるかもしれません。もちろん、アニメや漫画でもコンセプターは一人です。

shutterstock_205684588I love youは「月が綺麗」、ではアニメゲーム漫画は?

では、コンセプター以外の制作メンバーは何なのかというと、翻訳家です。コンセプターがもっているイメージ、完成形に形を与えてアウトプット、表現にすることが翻訳家の役目です。アニメもゲームも漫画も最初からコンセプターの中で完成しています。しかし、その完成されているものに形はありません。まさにコンセプトです。形はないけれども完成している。それがアニメゲーム漫画の一番最初です。

翻訳は、ただそのまま言われたことをそのまま伝えればいいというわけではありません。きちんと相手の発言の意図を理解しなけば、別の言語に変換することはできません。夏目漱石が”I love you”を「月が綺麗ですね」訳してたのは、有名な話でしょう。アニメゲーム漫画もコンセプター一人を除いて他の全ての人は「月が綺麗ですね」ということが仕事になります。

812FH7NmyNL._SL1500_アニメゲーム漫画を作るためには何よりもまずインプット

では、翻訳するためにはどうすればいいのか。それは徹底的なインプットとアウトプットとコミュニケーションを重ねるほかありません。なめこで有名な株式会社サクセス代表取締役社長の吉成隆杜さんが書かれた「売れるゲーム企画書の書き方」という本に以下のようなチェックリストがあります。

1、月に10冊の本を読んでいるか
2、新聞を毎日読んでいるか
3、ゲームを毎日プレイしているか
4、SNSを利用しているか
5、漫画を読んでいるか
6、映画を観ているか
7、アニメを観ているか
8、音楽を聴いているか
9、舞台に足を運ぶことはあるか
10、旅行に行っているか
11、様々な講演やセミナーに出席しているか
12、ゲームショーやコミケなどイベントに参加しているか

これらはあくまで最低限のチェック項目です。「これだけやれば大丈夫ではなく、これぐらいは最低限やっているでしょう」という基準です。吉成さんの口から直接聞いたところによると、ゲームだけではなく、教養も身につけられている人が少ない、もっと教養を身につけてほしい、と言っていました。それが最低限以上の項目を満たすことということなのでしょう。また、ユーフォーテーブルの近藤さんも必ず一度は全てのアニメに目を通していると言っていました。インプットはとにかく大量に行わなければ、教養も身につかないですし、コンセプターのコンセプトをイメージとして共有することもできません。プロデューサー、ディレクターなど上に上がっていく人は煎じ詰めて言うとコンセプターのコンセプトをより理解できる人です。

shutterstock_91492277コンセプトは頭の中で完成している

では、コンセプターにはどんな人がなれるのか。それは情報が増えすぎて、作る前から作るアニメゲーム漫画が完成してしまっている人です。なので、基本的にコンセプターの指示は抽象的です。よくデベロッパーさんからメーカーの指示が抽象的過ぎて理解できないという話を聞きますが、それはより上のレイヤーにいるメーカーがコンセプトを伝えようとしているからです。そのコンセプトを理解して噛み砕いて現場に指示として落とし込める人がメーカーからも信頼を置かれ、案件がより多く発注されるようになります。

アニメゲーム漫画業界で働くのであれば、何よりまず大量のインプットを大切にしてください。インプットなき小手先のアウトプットやテクニックに頼るようでは、いいものは作れませんし、いつまでも上に成長することもできません。好き嫌いせず、好きなものはとことん、嫌いなものにはあえて、漫然とした鑑賞ではなく、真剣なインプットでより良いアニメゲーム漫画を作っていただければと思いますので、ぜひ参考にしてください。