イラスト 仕事 イラストレーターの皆さんへ・・・今いくらですか?イラスト単価とその歴史、そして今後の予想

Fotolia_86592917_Subscription_Monthly_M乱高下するイラストの単価について

ラクジョブはアニメゲーム漫画業界との付き合いが長いため、ゲーム会社さんから様々なお仕事の単価を伺うことが多々あります。そんな中、ここ数年で一番価格の乱高下を感じたのが・・・イラスト制作。2012年頃には1枚2桁万円!という高価格で取引されていたイラストが、今では半額以下・・・という事も当然のようにしてあります。その結果、仕事をいくらで請ければ良いの?というご相談を結構頂くようになりました。今回は、イラスト仕事を請ける上で気をつけたい点と、大体の相場についてご案内します。

イラスト制作の仕事をフリーでされている方は、1つ又は複数のイラスト制作会社さんにクリエイターとして登録しているかと思います。イラスト制作会社さんはソーシャルゲームが流行り始め、これから盛り上がるという2011年頃から、いよいよ盛り上がってきた2012年にかけて沢山設立されました。元々は広告会社としてイラストを制作していた会社さんが、ゲーム専門のイラスト制作会社になったりという変化もよく見られました。2012年には(イラスト制作業界の人間なら)誰もが知っているエポックメイキング的なゲーム作品、「神撃のバハムート」がリリースされます。これはとにかく美麗な厚塗りイラストに定評があり、日本国内のみならず海外のクリエイターもよく使われていました。この頃は他社のゲームでも美麗系、厚塗り系がとにかく流行り、手間と時間がかかる厚塗りのイラストは、レア度が高くなればなるほど高価なもので20万近くの発注額だったと聞いています。同じように有名作家によるイラスト制作もこの頃少しずつ見られ、士郎正宗先生のような超大御所がイラストを提供しているゲームもありました。とにかくイラストを量産すればゲームが売れる、とされていたのがこの時代です。

Fotolia_86142816_Subscription_Monthly_M上がったり下がったり大変です

しかし量産をするとはいえど、イラストレーターの数は限られます。早くも2013年頃には「国内より安くクオリティの高いイラストが量産できる」という理由でアジアを始め海外への発注が相次ぎました。海外を専門とするイラスト制作会社も多数立ち上げられ、そこでは大体国内の半分ほどの単価でイラストの受発注が行われました。また、腕の良い専門学校生などに声を掛けて安価でイラストを頼むというのもこの頃良く行われています。まさに「良いものを、安く沢山」という時代の到来です。やがて海外発注はゲーム業界の中でも一般的となり、同時に高い金額でのイラスト発注ができる会社は限られていたため、イラスト単価は少しずつ落ち着いてきます。2013年頃には、1枚のイラストが10万円以上、というのが大体当たり前になってきました。もっともこれは企業が企業に発注する場合のため、個人に対しては8万円くらいの感覚かと思われます。

更にこの頃、美麗系のゲームブームも収まってきます。代わりに、2012年の後半からサービスが開始され2013年が明ける頃には「(^q^)『くおえうえーーーるえうおおおwwww』」でも話題になったガールフレンド(仮)のような萌え系イラストの需要が急激に増します。しかし萌え系イラストは文化として特殊なため海外発注が難しく、また国内生産へと戻ってゆきます。海外や学生への発注でイラストの相場が下がったため萌え系イラストは差分を含め大体8〜10万(企業間)というのがこの頃の相場でした。

kankoreそして・・・2013年の春には「艦これ」がリリースされます。当初こそ話題にならなかったものの、じわじわと人気を伸ばし、同年夏には一度運営がストップする事態に。しかしこの艦これ人気からゲーム事業に力を入れ始めたDMMは、アダルトを含めたゲームの制作に積極的に乗り出します。これが未だに続くDMMゲームイラストのニーズの高さです。2014年頃にはゲーム業界の開発会社さんに声を掛けると「実はDMMのためのゲームを開発しているんです」というお話を6〜7割の会社さんから聞くことができました。6〜7割の会社さんが同プラットフォーム内のゲームを制作しているというのは異常な事態です。当初はこのようにゲームの量産をしてヒットを狙う目論見があったため、1つのゲームに割り当てられる予算も少なめでした。結果的にイラスト単体の金額も低く、5〜7万円くらい、という声もよくありました。

そして現在。DMMのゲームを制作している、という会社は正直減っています。量をそれなりに作ったら、その後は質に集中するというのは当然の話なので、淘汰が行われたと考えて良いでしょう。しかしその代わりにイラストへの予算は少しずつ余裕が出てくるようになりました。もちろん昔のように20万!といった高額は望めませんが、場合によっては10万ほどの金額でイラストの受発注が行われている企業も見かけます。もしあなたがフリーのイラストレーターでアダルトもOK!という場合は、クオリティにもよりますが差分を含め5〜8万円くらいの金額は見込めるかと思います。

Graphic designer in her officeこれからのイラストレーターはどうなる?

現在他の非アダルトソーシャルゲームやゲームアプリでもイラストのニーズは確かにありますが、どうしても外注では無くクオリティとスケジュールの安定する社内生産へと移行している流れがあります。そのため、イラストレーターとして確実な売上を望む場合は1つの手として就職をお勧めします。ただし、就職後は多種多様な絵をリクエストされたりUI部分(バナー制作など)の依頼が来る可能性もあるので、対応出来る範囲は広ければ広いほど良いでしょう。ラクジョブも「イラストレーター」で検索するだけで沢山の求人が出てくるため、参考にしてみてください。

まだフリーで、という場合は、このように現在のイラストレーターをめぐる金銭状況はいまだ不安定だという事を心にとめて頂ければ幸いです。例えば背景美術などであればそんなに乱高下が無い・・・?と思いきや、「没になったゲームの背景を安く売ります/レンタルします」というようなサービスも業界内には出て来ているため、一概に安心安全とも言い切れません。(因みに背景の相場は企業間で5〜7万といったところ。個人向けであれば3万くらいとなります。)

今後のイラスト業界の流れですが、3Dがどこまで実装されるかが1つのポイントにはなるでしょう。少なくとも昔のようなカードゲームブーム、それに伴ったイラストブームが再来するとは考えにくいため、少しずつ不利な状況にはなってゆくと思われます。ただしUI、ロゴ制作といったニーズはゲームが産み出される限り続きます。この辺りは前回にも書いた「ソーシャルゲーム イラストレーター求人の将来 3DCGを学ぶべきなのか」

ソーシャルゲーム イラストレーター求人の将来 3DCGを学ぶべきなのか?

という記事をご参照ください。

最先端の業界だからこそ、ニーズはくるくると変わります。せっかくのクリエイターの情熱がその変化に巻き取られて使い尽くされてしまわないよう、知識を仕入れて伸ばせる技術に注目することをお勧めします。

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