アニメゲーム漫画業界で働きたい未経験者の方は多くいらっしゃると思います。今回は、どういう人がアニメゲーム漫画で働くことができるのかという話をします。漫画はアウトプットです。アウトプットのためには、良質で圧倒的に大量なインプットが必要です。株式会社サクセス代表取締役社長の吉成隆杜さんが書かれた「売れるゲーム企画書の書き方」という本に以下のようなチェックリストがあります。
1、月に10冊の本を読んでいるか
2、新聞を毎日読んでいるか
3、ゲームを毎日プレイしているか
4、SNSを利用しているか
5、漫画を読んでいるか
6、映画を観ているか
7、アニメを観ているか
8、音楽を聴いているか
9、舞台に足を運ぶことはあるか
10、旅行に行っているか
11、様々な講演やセミナーに出席しているか
12、ゲームショーやコミケなどイベントに参加しているか
なかなかこれら全てを満たせている人は少ないのではないでしょうか。さらにこれら全てを満たしても、「これだけでいい企画が立てられる訳ではなく、単なる必要条件を部分的に満たしているに過ぎない…糞ゲーが生まれるのは糞が作るからである…すべては作り手の問題なのだ」と、ゲーム開発対するストイックさが感じられる発言が見られます。
カプコンで「ロックマン」「バイオハザード2」「鬼武者」などのプロデューサーを務め、2010年に独立し、株式会社comceptを立ち上げた稲船敬二さんの著書「矛盾があるからヒットは生まれる」では、アイデアを練り上げる、発想するための方法として、「ただ漠然と映画や漫画やテレビを見るのではなく「この結末をボクだったらこうするんだけどな」とか、「このシーンはこうしたほうが面白いよ」なんてことをいつも考えながら見てください。そして友達でも恋人でもいいから、そのことをどんどん話してみてください。」とあります。
確かに業界の社長や採用担当に、「業界未経験だったらどんな人を採用したいですか」と質問すると、
「アニメゲーム漫画を作ることに興味がある人がいいです。アニメゲーム漫画が好きで応募してくる人は、アニメゲーム漫画を作るのが好きな人ではない場合が多い。単にアニメゲーム漫画を楽しむのが好きな人ではそこに採用側と応募側のズレを感じます」といわれます。楽しいことが好きなのは当たり前ですけど、作るのが好きかは全く別物です。作るのが好きな人は会社に入る前から作り始めてしまっています。作り方がわからないとは言いません。作りたいから作り方も調べますし、わからなくてもやってみます。もし教えてもらうまではやり方がわからないので作りませんという人がいたのであれば、その人は作るのが好きな人ではないと判断されてしまいます。いくら口先で面白いゲームが作りたいですと言っても、面白いゲームが作りたいので、面白いゲームの作り方を教えてくださいではどの会社も相手にしてくれません。
楽しむのと作るのが楽しいのは別
未経験者が経験者に比べて不利な状況にはありますが、だからと言って採用が全くないわけではありません。経験者であれば必ず採用されるというわけではありません。とある大手ゲーム開発会社の社長から聞いた話を紹介すると、「ゲーム業界は、医者や弁護士のように一度資格を取れば安泰な世界でもないし、バイトのように全くスキルがなくても勤まる仕事ではありません。必要とされる技術もどんどん変わります。ゲーム業界は入るのも大変だけれども、ゲーム業界で仕事し続けるためには、ゲーム業界に入るときと同じくらいの努力を辞めるまで続ける必要がある」と聞きました。それができないとクリエイターとしてやっていくことはできないし、会社全体がその努力を怠ればその会社は倒産するしかない、そういう会社をいくつも見てきたと言います。
確かにゲーム業界の変遷は激しいです。今ゲームプログラマーに一番求められるスキルはUnityでスマホゲームの開発ができることでしたが、一昔前はC++でコンシューマーゲーム開発ができる人、そのさらに前はCやアセンブラが使える人でした。3Dも昔名前を聞いたXSIの名前を聞くことはほとんどなくなりました。何か一つのスキルを身につけておけば安心ということはありません。
しかし、逆に言えば、これは未経験者にとってチャンスでもあります。タイミングを見極めれば、業界経験の長いベテランと同じだけのスキルを持てる可能性があります。例えば今ならUnityのプログラマーはまだ注目を浴び始めてから3、4年しか経っていません。たとえこれまでの経験値に歴然の差があったとしても、一つの言語に関してだけであれば横入りで同じスタート地点から始めることはできます。もちろんゲームプログラマーとしての業務経験がはない人であれば新しい技術の習得もその分速いですが、若手には若さがあります。年齢は高くなればなるほど給与も上げる必要がありますし、その人が現役でいられる時間も短くなります。しっかり実力の保証されたベテランを採用したいというニーズもあれば、若手の可能性に懸けたいというニーズもあります。そして可能性の多寡がどこで見極められるかというと引き出しの多さ、インプットの量です。
アニメゲーム漫画が好きであれば、アニメゲーム漫画を面白くするためにも、アニメゲーム漫画以外にも積極的に触れる機会を自ら作ってください。本を読んで、新聞を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、舞台に足を運んで、旅行に行って、講演やセミナーに出席して、ゲームショーやコミケなどイベントに参加して、その他思いつく限りのインプットを行って、他の人とは一味違うニッチな未経験者になってください。そういう人は確実に採用される可能性が上がります。是非、がんばって下さい。