ゲーム会社で仕事する上で大切なこと ゲームユーザーの高年齢化から考えるターゲットの選定と課金のポイント

「僕たちを追いかけてていいの?」

「ゲームは子供がやるもの」「子供がゲームをやり過ぎてしまうから親がそれを止める」おそらくゲームに対してこのようなイメージを持っている方は多いかと思います。しかし、今や「ゲームは大人がやるもの」になっています……

米国の調査会社EEDARが北米(米国とカナダ)、日本、中国、韓国の4地域におけるモバイルゲーム市場に関する2015年最新の調査では、モバイルゲームプレイヤーの平均年齢は34~36歳。つまり、30代中盤のおじさん、おばさんが実は一番ゲームをしています。もちろん、子供が月に10,000円近い利用料がかかるスマホを持っているという可能性は低いので、必然的に年齢層は高くなりますが、それにしても想定よりも10歳くらい高いのではないでしょうか。また、日本の一人あたりの平均課金額も平均24.06ドル(約2,970円)と非常に高額です。スマホゲームのユーザーは独身の社会人と言われており、比較的自由にお金を使える環境と電車の通勤時間が相まって課金に至っている様子が想像できます。飲み会1回分のお金を考えれば彼らにとっては高い買い物ではないのでしょう。

彼らにとって月3000円は高い買い物ではない

しかし、なぜゲームのメインユーザー層が変わってしまったのでしょうか。それは彼らが子供の頃からゲームをしていた人たちだからです。子供の頃から「FF」「ドラクエ」「ポケモン」にはまった子供たちは、そのままゲームと一緒に成長して、今の30代20代になっています。「FF」「ドラクエ」「ポケモン」の新作が出れば必ず買っていた世代が、時代とともに最新ハードではなく、最新スマホを持つようになったため、今のゲームはスマホがメインになっています。その証拠に「FF」も「ドラクエ」もユーザーを追いかけてこぞってスマホに大量のゲームを投下しました。一番子供向けに見える「ポケモン」もゲームアプリへの進出を決定しています。子供の頃からゲームにお金を使うことに慣れているため課金に対して最も抵抗が少ないです。

また、遊技機(パチンコ・パチスロ)で遊ぶ代わりにスマホゲームで遊ぶようになったという見方もできます。かつて独身男性のお金の使い先の一つは遊技機でした。しかし、遊技機の射幸性(ギャンブル性)の向上により、客単価は年々上昇している。遊技機の1人当たりの平均利用金額は年97,100円。月額にすると8,100円。1回行くと数万負けることもザラにあります。実際この射幸性の高さが新規ユーザーの流入を阻害して、新しく遊技機を始める若者が減っています。数値的には、2002年から2012年の間に、10代男性は14.8%から2.0%に、20代男性は49.5%から18.1%と大幅に減少しています。そこで時間を持て余した若者がかつて遊んだゲームを今手に持っているスマホで無料で遊ぶことができると知れば、まずはインストールしてみようと思うのではないでしょうか。そのままついつい熱くなってしまって課金してしまうという流れです。昔から思っていたのですが、「パチンコ・パチスロ」と「課金」どことなく似た匂いの言葉ではないですか。

お金の出所は一緒

また、働く側、開発側に目を向けてみても、年齢33.79歳、30歳代が52.8%とユーザー層との年齢差も比較的少なめです。もちろん、乙女ゲームや「妖怪ウォッチ」などの子供向けゲームもありますが、一番のユーザー層に対してアプローチを狙うのであれば、35歳を年齢層として考える必要があります。ゲーム会社の社長からは、「アニメをヒットさせるなら美少女、スマホゲームをヒットさせるならドラゴンとモンスター」と聞いたことがあります。もちろんそれだけではないと思いますが、「FF」「ドラクエ」「ポケモン」で育った世代にドラゴンとモンスターが重要な要素であることは想像できます。しかし、これからゲーム業界で働こうとする若手は美少女始めキャラクターを重視する傾向が強いです。若手でゲームのイラストレーターとして活躍する人のポートフォリオも多くがキャラクターイラストです。またゲーム会社もイラストレーターにはキャラクターイラストを描かせる、発注させるケースがほとんどですが、ユーザー層に対してキャラクターがどこまで重要な要素なのかは考えてもいいかもしれません。

これから自分でゲームを作りたい、ゲームを作る予定がある、ゲームを売る必要があるという人は、まず誰がゲーム対してお金を払うほど楽しんでくれるのかを考え、売上トップセールスランキングのゲームを一通りやりこみ、自分でも課金してもいいなと思うゲームを見つけて、その時何で課金してもいいと思ったのか、ゲームスタートから課金までどういう設計がされていたのかを観察してみてください。コンシューマーゲームを買ったり、スマホゲームを無料で遊んでいる人は大勢いますが、課金までやりこんだゲームがある人、さらにはその課金をプロセスとして分析した人は多くありません。ゲーム業界に勤めている人でも、自分の仕事に必要な要素だけ取り入れて、どうすれば課金につながるのか、売上に繋がるのかというお金のことまで考えられる人は多くないです。しかし、自分たちのゲームを作ってそれを楽しんでもらおうとするのであれば、その先にある課金と売上についても必然的に考える必要があります。将来的にディレクター、プロデューサーを目指す人にはぜひ考えておいていただきたいことです。