ゲーム会社の転職 なぜ大手から中小デベロッパーへの転職が多いのか。ゲーム業界転職者の心理とは?

大手から転職する人は何を求めているのか?

アニメゲームマンガ業界の求人サイト、ラクジョブは40000人の登録があり、10年間でアニメゲームマンガ業界の数々のクリエイターの転職支援を行ってきましたが、その中で大手企業から中小開発会社への転職が少なからずあることに気づきました。昔から有名なタイトルの数々を世に出し、実際にそのシリーズの最新作に関わるような仕事も手がける彼らがなぜわざわざ中小企業に転職するのでしょうか。

近年のゲーム開発の特徴として、大規模化、長期化という特徴が挙げられます。ゲームが初めて誕生した時、それはたった一人のプログラマーの手によって作られました。そこから必要に応じる形で、デザイナー、ディレクター、プロデューサー、プランナー、デバッガー、サウンドと様々な職種のクリエイターが集まって集団でゲームを作るようになりました。PS4やX box Oneなどのハイエンドゲーム機になると100名以上の人数はザラで、iPhone,Androidなどのスマホ向けゲームでも30~50規模の大規模開発の話を聞くようになりました。予算規模も数億円から多い時には10億円以上をかけてスマホゲームを作る時代になっています。それだけのお金をかける以上、もちろん失敗するわけには行かず、コンシューマーゲームメーカーもスマホゲームパブリッシャーも慎重に開発を進めています。

大きくなればなるほどやるべきことが増える

しかし、それが現場のクリエイターにどういう事態になって降りかかるかというと、作業の細分化、専属化が問題になります。特に近年のハードの性能向上は、ハイクオリティなグラフィック表現を可能にし、ハリウッド映画並みにのCG技術でリアルさを追求するような制作がされています。特に洋ゲーや海外でも高い評価を受けている「メタルギアソリッド」などのゲームのレベルは凄まじいでグラフィックが作り込まれています。しかし、その結果現場のデザイナーはモブキャラ1体を1年近くかけて作る必要が生じる。もちろんそれだけの労力が投入されているからこそのクオリティということはできますが、現場のスタッフとしては疲弊してしまいます。5年かけて1つの超大作ゲームを作り上げるスタイルはクリエイターがクリエイターらしく働ける機械の減少を招いています。

お金を気にしながら走ると疲れてしまいます。

また、長期化は何もコンシューマーゲームだけの問題ではありません。スマホゲームでもビッグタイトルは1年以上の開発期間を要しますし、何よりスマホゲーム含めオンラインゲームの場合、リリース後も運営が続きます。中にはすでに20年近くサービスが続いているゲームもありますし、大ヒットゲームアプリ「パスドラ」ももうすぐ4周年を迎えようとしています。その間プレイヤーに満足していただけるクオリティでサービスを提供し続けるためにクリエイターはゲームを更新し続けますが、クオリティを安定させるためには布陣の不用意な変更は得策ではありません。結果、ヒット作を生み出した有能なクリエイター、運営ノウハウ豊富なチームが一つのゲームにかかりきりになります。やはりこちらも一つのタイトルの長期化という事態を招いています。

ゲーム開発会社は確かにゲーム開発を仕事にしたい人たちの集まりですが、持ち前のクリエイティビティを発揮して自分の作りたいという気持ちを抑えられなくなる人も中にはいます。その人たちがどうするかというと、最終的に独立するか転職します。メタルギアの小島秀夫さん、ロックマン、バイオハザードなどの稲船敬二さん、ICO、ワンダと巨像の上田 文人さんを始めとして有名クリエイターが独立して自らのスタジオを構えることは珍しくありません。「ゲームを作りたい」という気持ちはそれほどまでに人を突き動かします。転職に関しても同様です。

たまりにたまったものがエネルギーに…!

転職には少なからずリスクがあります。特にメーカー、パブリッシャーなどの大手企業から転職するとなると年収ダウンはある程度予想されます。しかし、それでもやりたい仕事ができないのであれば、転職しようと決心する人は少なくありません。例えば、大手メーカーで有名タイトルの3Dハイエンド背景を手掛けていたようないたデザイナーが、中堅規模の3DCG制作会社に転職したり、ゲームのメニュー部分だけに特化してグラフィック制作をしていたデザイナーが転職したりという話はよく聞きます。とにかく何かをやろうにもそこを動けないような状況が大手企業であるがゆえに起こってしまいます。

それに比べて中小企業であれば、直接社長と話をして要望を聞いてもらうこともできますし、自分の作りたいゲームに挑戦できる機会も増えます。挑戦的に働くことで実力を身につけ大手で働けるようにまでなったクリエイターが、安定的な大手の環境に嫌気が差して、中小で自分に合った働き方に戻っていくことは想像できます。いずれにせよ、ゲームクリエイターの開発制作環境の整備は今後のゲーム業界の課題の一つであることは間違い無いでしょう。