求人情報を取り扱う弊社においてゲームプログラマーで経験3年、転職回数0回という人がいたら、もちろんやってきた内容や実際に話した印象による部分はさておき、基本的にプログラマーの人手が足りないゲーム会社であればすぐに確保したくなります。いい人がいたら採用したいというレベルではなく、それなりにやってきた経験者であれば押さえておきたいというぐらい、ゲーム業界においてプログラマーは不足しています。完全な売り手市場です。なんらかの理由で所属するゲーム会社から転職を考えているゲームプログラマーの人がいたらぜひ一度吟味していただきたい。なにを吟味するかというとそれは2つあります。
1つ目はそもそも転職すること自体です。転職の理由は何でしょうか?数多くのデータから示されているとおり、ゲームプログラマーのみならず転職回数を重ねれば重ねるほど生涯年収が下がる傾向にあります。私の方でデータを表にしてみました。
実際の数値として見てみると、男性の最終学歴別生涯年収を見てみると、中卒は2.2億円、高卒は2.4億円、専門・短大卒は2.4億円、大卒は2.8億円です。ただしこれらはすべて転職回数が0の場合です。転職回数が1回以上ある場合はのきなみ生涯年収が1~2割下がっています。では女性の最終学歴別生涯年収を見てみましょう。中卒は1.4億円、高卒は1.8億円、専門・短大卒は2億円、大卒は2.4億円です。これらの数字は先ほどと同じく転職回数が0の場合で、転職した場合は2~2.5割下がります。これらの数字はあくまで全体の平均値であり、その枠組みに入らない人たちももちろんいます。いますが、それはこの数字が指し示しているとおり、全体の中の少数です。ほとんどの人が転職を重ねると年収が下がっていくというデータが出ています。
転職回数と年収に関してはこのブログ内にもいくつか考察した記事がありますので、そちらもあわせてみてみるといいかもしれません。
アニメゲームマンガ業界 転職について考える その転職、割に合う転職ですか? データで見るクリエイターの転職と収入
アニメゲームマンガ業界 転職と年収アップの関係
ほかにもありますがまずはこのあたりに目を通してもらうとよいでしょう。
プログラマーの方が転職を考えた時に吟味すること、2つ目の話に入ります。転職先を選んだとして、本当にその会社でいいのですか?ということです。
どういう意味かというと実際に転職をする場合、どこかのゲーム会社に応募して面接して内定して転職完了!となるわけですが、転職先の企業についてどの程度吟味したでしょうか?1つ目で挙げた通り転職は生涯年収が下がるかもしれない行為です。多くの人が生涯年収を下げてしまっています。それでも転職しようと思うのであれば、転職先の会社についていろいろと知ったうえで、ここならと思えるところではないと今後の人生をともにしていくには心もとないでしょう。
もしかしたら結婚や出産という話も出てくるかもしれませんし、さらにいえば親の面倒を見ていく必要も出てくるかもしれません。そういったときに備えて安心して働ける職場なのかということについては今一度吟味してほしいと思います。仲のいい友達や過去一緒に仕事をしたときに気があった人が呼んでいるからという理由だけで、その会社のことを大して知らないまま転職してしまうのは非常に危険です。友達に声をかけるのは自由ですし、それに乗って転職するのも自由です。ですが、その声をかけた人はあなたの人生の面倒を見てくれるわけではありません。自分の人生は自分で面倒を見るというか責任を取ります。当たり前の話ですが。ほかのだれかが責任を取ってくれることも保証してくれることもありません。あなただけのものですし、ほかのだれにも他人の人生の責任まで追うことはできません。
だからこそ、転職というときに、売り手市場ということもあって転職先の候補の会社からはものすごくアプローチが来るかもしれませんが、目の前の条件の良し悪しだけで判断するのはとても危険です。本当に自分のやりたいこと、かなえたい夢と合致する部分が多いのか少ないのかはたまた全くないのか、そのあたりをしっかりと調べて考えたうえで決断しましょう。
では現在の状況を軽く説明したところで、今後の話をしていきましょう。日本でゲーム開発を行う上で日本人に発注するメリットとは何でしょうか?1つ目は日本語でのコミュニケーションが取れること。2つ目は開発している現場にすぐに行けること。3つ目は日本の文化に触れてきているので、日本人ならではの話や考え方に対する齟齬が外国の人と比べると発生しにくいこと。大きくわけてこの3つではないでしょうか?その3つがあるうちはまだ売り手市場も続くかもしれません。ですが今世界的に国という枠組みを超えて仕事ができるようになっています。現にアニメーターの仕事である動画や原画においては韓国や中国への発注も多いですし、アニメの背景もベトナムやタイにスタジオを構える会社も増えてきました。そしてゲームにおいても同様で特に3DCGという分野に至っては海外への発注によるコストの削減はもはや常識となっています。一時期大量にニーズが発生したイラスト制作についても同様に中国への発注がよくありました。今は3DCGにおいて顕著ですが、これがプログラマーにおいておきないといいきれるでしょうか?
プログラマーの特徴というか仕事を行う上で重視される部分は開発の現場にいて打ち合わせができることです。ディレクターやプランナーと話をしながらアイディアを取り入れてすぐに作り変えるということを考えると、その点にアドバンテージはあります。だから外に出しにくい。でもそれもインフラがどんどん整備されてそれこそ事務所という垣根自体取り払われてしまったら、そのアドバンテージはもはや意味を成しません。インフラの発展やITの成長、そして異国間でもコミュニケーションがすぐにとれるという世界は容易に想像できると思います。
この記事を通して伝えたいのは、危機感を単にあおりたいわけではなく、まだまだできること、成長や進化の可能性はみなさん秘めていますよということです。成長を求めるのをやめたときは、筋トレが40代を超えると筋肉をつけるためではなく筋肉維持のための運動になるように、衰えていくだけになってしまいます。肉体面だけではなく特に技術面であったりマネジメントという経験などは年をとっても衰えることはありません。ゲームの中身やゲームのハードがどんどん進化したり、携帯電話が出たように新しいデバイスが出たりするように進化はそれをあきらめない限り可能性は無限に広がっています。来るべき国境なき戦いのためにも今から最大限の成長を目指して進化していってほしいと思います。