ゲーミフィケーション ソシャゲの課金システムを応用して社会貢献?!

gamification2「ゲーミフィケーション」という言葉があります。これはゲーム開発の技術をゲーム以外の領域に応用するというコンセプトです。遊ぶことを目的にしていないビジネス用途のアプリケーションに、ゲームの考え方やシステムを導入し、ユーザーの意欲を向上させ業務達成度を高めたりする事などを言います。

例えば学生時代に、テスト勉強をさぼってゲームにはまり込んだ、そんな経験はありませんか?テスト勉強はどうしても身が入らないのに、ゲームにはそれこそ寝食を忘れて取り組んでしまう…。「ゲーム」にはそれだけ、人を病みつきにさせる魔術的な力が備わっているのです。「ゲーム」の中毒的な面白さを応用したコンテンツは今増加しています。代表的なものを取り上げましょう。「カーンアカデミー」という、アメリカ・シリコンバレー発のNPO法人があります。

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カーンアカデミー
https://ja.khanacademy.org

カーンアカデミーはYoutubeを活用したセルフラーニングシステムで、アップロードされた大量の動画コンテンツを使い、ユーザーは自分のペースで学習を進める事が出来ます。動画は10分程度の短い尺で要点がまとまっており、1つ1つのトピックに簡単なエクササイズがついています。エクササイズをこなすことでステップバイステップに進んでいく感覚にはさながらRPGでレベルアップを重ねていくような小気味よさがあり、ユーザーは次の動画、次の動画とどんどんのめり込んで行く仕組みになっています。また、日本においても、「ゲーミイフィケーション」技術は応用されています。Yahoo!のサービスにはこんなものがあります。
yahooyoukaiuotti「妖怪ウォッチ今日の妖怪おみくじ」

これはサイト全体の作りが宝探しゲームの様になっていて、キャラクターを追い掛けるなどするうちに、自然とweb検索のシステムを習得するように設計されています。このように、「ユーザーにとって快適な利用体験を与え、目的の達成を促進する」ゲーミイフィケーションの技術は至る所で応用されています。

実はこうしたゲーミイフィケーションに用いられるノウハウ・思考が洗練され凝縮されているのが、昨今のソーシャルゲームであると言われています。なぜなら、昨今のソーシャルゲームは,ユーザーに対して特定のタイプのインセンティブを与える事で、ユーザー少しずつゲームに夢中にさせ、課金をさせることによって利益を出す、という手法が使われているからです。

ゲームについて働くインセンティブは、リチャードバートル(イギリス人で、エセックス大学で博士号(人工知能)をとり、現在は著述家、学者、ゲーム開発者として活動。オンラインゲームのジャンル、MUDを発明した人)という学者によって4つに分類されています。すなわち、キラーズ(=他のプレイヤーに打ち勝つことに喜びを感じるタイプ)、ソーシャライザー(他のプレイヤーとの交流)、エクスプローラー(未知の世界を探求すること)、アチーバー(見える結果を追い求めること)の4つです。昨今のソーシャルゲームは他プレイヤーとの競争や交流の要素、課金による更なる記録の追求など、これら4つのインセンティブをテンポ良く刺激するように設計されています。

Group of Children Looking Up with Gaming Symbolsみなさんご存じの「パズドラ」を思い浮かべて見て下さい。これら4つの要素が上手く織り込まれていると思いませんか?ゲームの中で蓄積されているこうしたシステムやギミックが上で説明したようなサービスへと応用されているのです。カーンアカデミーの例で言えば、どんどん新しいステージに進む要素はアチーバーにあたりますし、機能として盛り込まれている他の学習者・講師との共同はソーシャライザーにあたると言えます。さりげなくこうした仕掛けが随所に仕込まれていることによって、どんどんコンテンツに引き込まれていき気がつけば沢山の知識を習得している!とこういう仕組みになっているのです。

ゲームの中にある、「人を夢中にさせる」要素が他のサービスにも輸出され、企業のパフォーマンスが高まったり学習がはかどったりする事はゲーミイフィケーションのもつポジティブな面であると言えます。しかしこうしたゲームの中毒性には、必ずしも手放しに喜べない危険な側面もあるのです。ここで弊社ブログのこちらの記事にも目を通してみて下さい。

ゲーム脳は古い アニメゲームマンガ依存とアップル教信者の共通点

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Online casino concept. Mobile phone and slot machine with jackpot.ゲームもスマホも、お酒やタバコと同じように依存性がありやみつきになってしまう。そんな事実は、現在の科学では当然の常識なのです。依存性があるなら、どのくらいユーザーに依存させれば利益が上がるのか。どのレベルになると危険性があるのか。今やアップルの新商品のマーケティング戦略として、そんなことが大真面目に議論されるような時代なのです。ゲームの売上を高めることも、ロジックに基づき設計することで計算的に達成出来ることになりつつあるともいえます。ゲーミイフィケーションの様にそれを社会に役立てることもできるし、依存症患者を増やすことにも繋がる。両方の面を見て、どうかゲーム開発会社の方達には今後もどんどん腕を振るっていってもらいたいと思います。