とあるアニメ会社に訪問して、採用担当者に未経験、新卒の業界志望者、応募者について話を聞いたところ、「99%の人が何もわかっていない」という話を聞きました。今回はこの「何もわかっていない」という状況に対して説明していきたいと思います。
まず、新卒の方にお聞きしたいですが、就活で何社に応募しましたか?東洋オンラインによると、2014年卒就活生のエントリー数の平均は60.1社に及んだそうです(https://toyokeizai.net/articles/-/34995)。
多い人では、100社以上に応募した問いう話もザラです。さて、この人たちは、果たしてその60社に入社したかったのでしょうか。もし、60社全てに100%の気持ちで入社したい、そこで働きたいと思っているのであれば、それは素晴らしいことだと思います。実際その方は複数社から内定を得ることができるでしょう。しかし、多くの人は応募した中で本気で働きたいと思っているのは1、2社、多くて5社程度。それ以外は本命が上手くいかなかったから、あるいは単に興味があった方という方がほとんどでしょう。「ここで働きたい!」と思った会社にけんもほろろにされた挙句、「自分は本当は何がしたいんだろう」と悩み、「そうだ!俺が好きなのはアニメだ!私が好きなのはアニメだ!」と悟った気になる気持ちを否定する気はありません。そしてそれはあなたのせいでもありません。
そもそも新卒採用専門サイトなる分類ができたのはほんの最近のことです。ネットで求人サイトを見て応募するという文化が根付いたのは、21世紀に入ってからです。それまでは、求人情報雑誌、つまり紙媒体が求人情報源でした。さらにそれ以前は、大学の先生の紹介など、人と人とのつながり、コネだけで就職先が決まる世界でした。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」でも、自動車の大手企業に就職できると思って青森から上京してきた六ちゃんが、東京に来てから自分の就職先が古びた下町の工場だったと知ってがっかりするところから話が始まります。昭和33年(1958年)を舞台にした物語なので、かなり昔の話にはなりますが、自分の就職先に対して全く情報がないままという初出勤を迎えるという状況はにわかには信じられないことかと思います。
現在、マイナビ2016には約17000社、リクナビ2016には約14000社が掲載されています。さらに総務省統計局の平成24年の調査によると、日本には、412万社以上の企業があるとされており、その気になれば、その大半についてネットで調べることができる時代です。しかし実際には、マイナビ、リクナビなどの新卒求人サイトに掲載されていない企業はほとんど認知されることがありません。新卒求人サイトに掲載されている企業のみが存在を認知され、その全国のうちの1%以下に1人当たり60社近くの志望を出すといういびつな状況こそが現在の新卒採用です。
そしてそのいびつさに学生も企業も疲弊しています。2015年新卒採用からニコニコ動画で有名な株式会社ドワンゴが受験料制度を始めたことは記憶に新しいのではないでしょうか。以下、ドワンゴ採用HPから一部引用。「2015年の新卒入社試験よりエントリー時の「受験料制度」を導入、実施いたしました。本当に入社したい人にエントリーしてもらい、集まった応募者の採用活動に時間をかけて一人ひとりの潜在的な能力をしっかりと見極めるためです。結果、応募者が減少する一方で前年と変わらない数の内定者を出すことができ、さらに内定辞退者も減少するという、期待通りの結果を得ることができました。」ボタンひとつでエントリーできる今の新卒採用は、多くの企業にエントリーしなければ内定を獲得できない。エントリーがあったからには、選考しなければならないという状況を引き起こしています。その結果、新卒の学生は1社1社を真剣に調べる時間を失い、企業も多大な時間とコストをかけて内定を出したのに辞退されるという事態を生み出しています。
特にエントリーが集まりやすいのがアニメ業界です。それまで経済の大きな流れとは無縁の世界に生きてきた新卒学生にとって、文字を目にしただけでは、何をやっている業界なのかさっぱりわからない業界も少なくありません。その中で子供の頃から馴染みの深かったアニメは一目見ただけで関心を惹きます。あまり内容を精査しないで応募する新卒学生もいます。「アニメ業界は大変らしいですね。給与が高くないらしいですね。でもアニメが好きだから頑張ります!」というような方が大半です。もっとアニメを作ることに関心を持ってください。あなたが志望しているその会社に関心を持ってください。あなたはどんなアニメが作りたいですか?そのあなたが作りたいアニメはどうやったら作れますか?その仕事をするためにはどういう会社に就職する必要がありますか?その会社がどんな理由があってあなたを採用したいと思いますか?就職した後何年後までにどんな仕事をしていますか?詳細にイメージしてください。面接で質問された時に自信を持って答えられるくらいに前もって自分自身に何度も何度も質問してみてください。その上で発せられる言葉でなければ、99%に埋没するだけのただのアニメ好きとしてあっという間に切り捨てられてしまいます。アニメ業界の発展のため、よりアニメ業界のことを知って納得していただいた上でアニメを仕事にする方が一人でも増えるようにラクジョブは新卒学生を応援しています。