記事を読んで頂きありがとうございます。今回もまた、VRについて最新情報をお届けします。
突然ですが皆さん、ビョークというアーティストはご存じですか?ビョークはアイスランドのシンガーソングライターです。ビョークは黒髪に黒眼、ハウス調ながらポップな音楽、独特のステージパフォーマンスなど、得も言われぬ魅力をもったアーティストです。音楽の独創性もさることながら、子供のころから三島由紀夫を耽読して育ち、日本文化に詳しかったり、女優としてスクリーンデビューを果たし、女優として受賞経験のあるなど、ミュージシャンに限定しない魅力を放っています。
そんなビョークが、自身の音楽世界をさらに深化させるためにVR技術に注目しているという事が話題になっています。ビョークはVR技術を、ファンとより親密につながる事が出来る技術として捉え、「音楽の仮想世界」を作ることで感情をダイレクトに伝えようとしています。
VRを使った彼女のパフォーマンスは、日本でも見る事ができます。7月の18日まで日本科学未来館では、ビョークのライブパフォーマンスを見る事ができます。
ビョークデジタル音楽のVR18日間の実験
https://www.miraikan.jst.go.jp/exhibition/bjorkdigital.html
ビョークの不可思議な世界とVR
ビョークのVRを使った表現の斬新さは、言葉を尽くすよりも実際に観てもらった方が早いと思いますので、Youtube動画をご覧になってみてください。
björk: mouth mantra
björk: stonemilker
一つめの動画は、「マウスマントラ」というミュージッククリップです。視聴者はビョークの口の中に入り込んで、ビョークの舌の動きを目の当たりにしながら音楽を聴きます。ビョークの感じている感情を、文字通り当事者となって体感する映像になっています。2本目は、ビョークがアイスランドの海岸線で、風に吹かれながら気持ちよさそうに歌っている映像です。ビョークの真横で、一緒に風に吹かれ、アイスランドの土地の広大さ、寒々しさを一緒に感じながら、ビョークの歌の世界に浸ることができるでしょう。
ビョークの音楽は何とも言えない感情や情景を想起させるものが多いですが、VRはそんな漠然としたものを目の前に取り出して見せるのにピッタリの技術です。
ビョークのVRクリップが話題を呼んでますが、日本のアーティストも負けてはいません。日本でVR映像を使ったトップアーティストして、私は初音ミクを挙げたいと思います。セガゲームスは、2016年の10月、初音ミクのコンサートをVR映像で体感することのできる「初音ミクVRフューチャーライブ」を発売すると発表しています。PSVRでのローンチタイトルになると言われています。
フューチャーライブでは、視聴者が客席にいる一人のファンとして、ライブを楽しんでいる気分に浸る事ができます。視聴者はPSMOVEなどを使って映像に対して影響を与える事ができます。腕を振るなどのリアクションをすれば、ライブのボルテージは上がって行き、それによって映像自体が変化する事もあるそうです。
VRの、ライブパフォーマンスへの応用について、初音ミクの例とビョークの例を紹介しました。どちらの例も、かなり興味をそそる内容だったのではないでしょうか。元々ライブはレコードだけでは記録することのできない生の迫力を伝えるものですが、VRでは生の迫力と非現実のハイブリッドな表現をする事ができます。ビョークの例のように、表現の次元を新しい所へもっていくことも出来ますし、初音ミクのように、バーチャルにアイドルのライブに参加したい!というファン共通の願望を実現する事もできます。
VRのニュースは、VRのハードウェアが持つ性能の面に視点が行きがちですが、真に大切なのは、「どうしてもこんな表現がしたい!」という溢れるような表現欲求そのものであるということを、特にビョークの映像は教えてくれます。ほとんどどんな表現でもできる可能性のあるVRだからこそ、表現したいと思っているアーティストのアイデアが重要になってくるのではないでしょうか。