注目職種、アートディレクター
アートディレクターという職種、みなさんはご存知でしょうか?アートディレクターとは、その名の通りアート周りのディレクションを行うポジションなのですが、最近特にスマホ系のゲーム会社で重宝されているのが、このアートディレクターという職種なのです。スマホアプリのアート周りはここ数年で劇的に進化しています。最初期の2D静止画のみで構成されて、画面のボタンを押したりスワイプしたりして進むものから、演出も込みのカードゲームやパズルゲーム時代へ、そして2Dと3Dのハイブリッド型へと歩みを進めてきたスマホゲームでは、単体イラストの出来云々ではなく、ゲーム全体としての統一感や新規性、そして作家(イラストレーター)の能力を引き出し、自社で開花させるに至るまでのトータルディレクションが求められるようになってきました。
アートディレクターとディレクターの違い
トータルディレクション・・・というと、ディレクターとの棲み分けがどうなっているのかが気になるところです。ディレクターも、ゲーム全体の舵取りを行い、進捗の管理やクオリティの管理を行うというところが共通しています。一見似ているように見えるディレクターとアートディレクターの仕事ですが、ここは明確に線引きがされています。あくまでアートディレクターはアート周りのディレクション。絵素材が作り上げる世界観なども含めてのディレクションの一環として、イラストレーターの管理や、時にはイラストそのものに赤を入れてキャラごとの見せ方をポーズから全て取り仕切り、指示をすることもあります。
ディレクターとの最大の違いは、「絵の善し悪しを見分け、良いクオリティの絵に仕上げる」というところです。それには、絵に関する基礎的な知識や、何をどうすればもっと魅力的な絵柄になるかといった、絵描きならではの工夫・着眼点が必要になります。そのため、アートディレクターには「元・絵描き」が多いのが特徴です。デッサンの狂いはないか見極めるのはもちろんのこと、プロジェクトによっては敢えて正確でないデッサンにして再現できないポージングなどをさせて、迫力・魅せ方重視で全体の世界観を構築していくということもあります。そうした、演出のためにデッサンの狂いをあえて作り出すような突破力も必要になりますが、昔から「守・破・離」とも言うようにデザインの基本を抑えられていないとなかなかできない荒技です。
アートディレクターに必要なこと
デッサンなどを見るためのデザイナーとしての素養が必要というのは前述しましたが、全体的にどういうことが必要なのか、ここでまとめて見てみましょう。
・デザイナーとしての知識・経験
・コミュニケーション力
・絵へのこだわりがないこと
・スケジュール管理能力
・指示・統率力と思いやりの心
アートディレクター募集をしている企業の人事に直接聞いてみたところ、会社ごとに微妙に求める内容の差異はあるものの、上記はほとんど同じでした。それぞれ、どういう内容か解説をしていきます。
・デザイナーとしての知識・経験
これは前述したとおり、デザイナーを相手に絵のクオリティと全体の世界観構築のために動いていく職種のため、自らがデザイナーとしての絵への理解を持っていることが必要不可欠になります。まれに、絵のことは分からないけど進捗管理や折衝に特化したアートディレクターもいるにはいますが、プランナーや営業と兼務していることも多く、厳密にアートディレクターという職種での募集となると、企業側のニーズは薄くなってしまいます。あくまでアート周りの目利き兼具体的な直しもできる人間がほしい!というのがアートディレクター募集企業の本音です。この部分をアピールするためにも、簡単な職歴書と、ポートフォリオは作って行きましょう。どんなプロジェクトのどのポジションに携わっていたか、そのプロジェクトではどのイラストを担当したかを書ける限り詳細に職歴書に記入するのと、デッサン・年齢性別バラバラなキャラ絵の顔三面図、全身ポージング、背景込みver.、エフェクト付きver.まで用意すれば、スマホ系企業のニーズは大体満たせるでしょう。それぞれどのぐらいの時期に制作したもので制作時間が何時間なのか、使用したソフトが何かを書き添えるのを忘れずに。
・コミュニケーション力
時にフリーのイラストレーター、時に大御所絵師などともやり取りをするアートディレクター。絵描きの心は複雑で繊細です。彼らの視点に立って、感情面はもちろんのこと、欲しい絵柄のイメージを対話で共有するためのコミュニケーションを取るという部分が仕事の大半を占めます。コミュニケーション力とはただ仲良く成るための手法ではありません。プロジェクトのゴールを達成していくためにイメージを会話で伝えること、気持ちよく描いてもらい最大のパフォーマンスを発揮してもらうことを両輪で実現していく必要があります。
・絵へのこだわりがないこと
絵へのこだわりはあった方が良いのでは?と思ってしまいますが、そうではありません。むしろ、ここではアートディレクター個人のデザインへのこだわりは全く捨て去り、あくまでクライアントとその先にあるゲームユーザーの意向に沿って最大限のものを出していけるように、自分の元デザイナーとしてのこだわりや自分の色は抑えて制作にあたっていくことが大事なのです。こだわりは出そう出そうとしなくても、そのプロジェクトにとって必要なタイミングが来れば、自然に発揮されるものです。あくまで顧客の視点に立ち、顧客の求めるものの最大限を追求していくことにエネルギーを注ぎましょう。
・スケジュール管理能力
言わずもがな、プロジェクト全体の完成にも関わる大事な部分です。クリエイティブを仕事にする際、アイディアや工夫や納得感は求めれば求めるほどどんどん深みにはまってしまうことはままあります。しかし、客観的に判断し深みにはまりそうなデザイナーやイラストレーターを引き上げ道を示し、時間通りに最高のものを用意できるように舵取りをするのがアートディレクターの仕事です。時間とクオリティとの両方を一段上の目線から叶えていくことが必要です。
・指示・統率力と思いやりの心
そして当然、これらは高圧的に言ってもただただプレッシャーをかけても、はたまた自分だけが我慢して尻ぬぐいをしたとしても成立しない仕事です。デザイナー、イラストレーターのメンタル面をケアしながら明確に指示を出して時間にも間に合わせるためには、色々な都合を押しつけるのではなく全てに対して思いやりを持って先回りの指示、思い切った決断が求められます。
いかがでしたでしょうか?上記5項目は全て兼ね備えられていますか?自分に足りないのはどの部分か。はたまた自分の長所と言える部分をもっと伸ばして行くにはどうしたらいいか。こうして分解して考えてみるとより就職活動も楽しくなるのではないでしょうか。ぜひ、参考にしてみてくださいね。