突然ですが、機動戦士ガンダムUC見ましたか?ちょっと前のコンテンツですが、重厚なテーマを素晴らしい作画で包んだ名作でした。2010年2月に公開されたepisode1から2014年5月に公開されたepisode7まで、ずっと楽しませてもらいました。何より迫力があったのは緻密なメカ描写。バトル画面は殆どが2Dで描かれ、様々な角度からカメラが回り込んでいるような、迫力の戦闘シーンを楽しむことが出来ました。しかしこの後、2015年4月から公開された「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」でのバトルシーンは全て3Dになっています。
もちろん3Dでも戦闘のリアルさは変わらないのですが、個人的に作画が2D でなくなってしまったことは寂しい限りでした。しかし、アニメ業界の方にお話を伺ったところ「UCのバトルシーンは、手練れの古いアニメーターが頑張って描いていた。でもさすがに体力の限界で、UCを最後に2Dのロボ作画は辞めたらしいよ」ということでした。この話が本当かどうかはわかりませんが、確かに今は初代マクロスやトップをねらえ!のような「狂気すら感じる」レベルの細かい作画に出会うことはあまりありません。アニメ作品が余りに増え、1つのアニメ作品にそこまでの手間をかけられなくなったのも理由の1つでしょう。そしてもう1つは、昔の技術を持った人間がどんどん年を取っていて、もう前線で働いていないから、ということが上げられます。
これはアニメ業界に限りません。ゲーム業界も同じです。アニメゲームマンガ業界だと、一番古いものがマンガ、その次が、アニメ、そしてゲームのため、それぞれの業界が黎明期の頃に働き始めた人がやっと今社長になっている、くらいの感覚なのです。若手の育成についても完璧なノウハウがある訳ではありません。まずはアニメとゲーム業界の平均年齢を見てみましょう。
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2005年に、独立行政法人 労働政策研究・研修機構がアニメ制作会社15社にヒアリングをし、それぞれの設立年、売上高、年齢、学歴、実労働時間等を調べた「コンテンツ産業の雇用と人材育成」というレポートがあります(注1)。このレポートを見る限り、15社ほとんどの平均年齢は20代。しかし東京商工リサーチのデータを元にしても、一企業内の平均年齢は40〜45歳未満。あまりに若いということがわかります。
アニメ制作自身は1960年代から行われていたことを考えると、もっと高い年齢層が在籍しても良いようなものですが、1960年代に設立された会社でさえ20〜30代が中心という表記になっています。つまり20代を超えると大抵の人はアニメ会社に属するという生き方を辞めてしまうのです。その後はフリーだったり会社を立ち上げて独立するのかも知れませんが、若い人材から若い人材に技術や仕事のやり方を受け継ぐのがアニメ業界ということかもしれません。
一方ゲーム業界。こちらは以前も使ったデータですが、あらた監査法人という所から主要なゲーム業界12社の平均年齢および平均勤務年数が計算されています(注2)。こちらを参照すると、コンシューマーゲーム業界の高齢化がどうしても目に付きます。スクエニに至っては平均年齢が44.8歳。最も若いカプコンでさえ35.8歳です。一方ソーシャルゲームは案の定若手が多く、一番若いのはボルテージの27.7歳。最高年齢はガンホーで35.7歳ですが、これはガンホーが昔からオンラインゲーム会社として活躍していたからと思われます。
また、コナミやバンナム、スクエニと言った大手企業は特に経験者採用に力を入れています。するとどうしてもゲーム業界で何らかの経験を積んだ30代以上の人材が採用されやすくなり、結果として高年齢化を引き起こしていると思われます。ソーシャルゲーム業界についても経験者採用の傾向が強く、10年後のソーシャルゲーム業界平均年齢が、今のコンシューマーゲーム業界平均年齢と肩を並べる可能性は無いと言い切れません。
注1:https://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/documents/025.pdf
注2:https://www.pwc.com/jp/ja/assurance/research-insights/accounting-case-study/em-016.html
こうしてデータで見ると、アニメ会社のように若手しかいないという事も、ゲーム会社のように若手がなかなか入れないという事も、どちらもそれなりのリスクがあることがわかります。若手しかいないという事になれば技術の伝達が難しいですし、若手がいないとなると「全く新しいコンテンツ」が生まれにくくなります。
この記事でお伝えしたいのは、皆さんが今目指している会社の平均年齢を気にして欲しい、ということでした。例えばあなたがアニメ会社で働きたいという場合に、年齢が40を超えていれば普通に「アニメが作れる」だけではハードルが高くなります。会社側としては「若手が多い中に突然年齢の高い人が入るリスク」と、「年齢が高い人が入ることで制作力以外に得るものがあるだろうか?」という心配がどちらもあります。「アニメが作れる」以外に、マネジメントや経営関連の部分で何かしらアピールを考える必要があります。
同じようにゲーム会社であれば、年齢が高い応募者が来ることによって更にコンテンツが硬化してしまう可能性もあります。そのリスクを避けるためにどういった提案を応募時にするか?は大事な視点です。
応募したい、と思った時にはその会社の平均年齢や業界の平均年齢、そこから見える自分の立ち位置も確認してアピールをするようにしましょう。それだけで人材としての質がグッと上がります。
いやーいいなー観たくなってきた!