今回の記事はゲームの実況について書きたいと思います。今やニコニコ動画でもyoutubeでも、人気コンテンツの一つとしてのポジションを確立しているゲーム実況。私自身も視聴する機会が多いのでわかるのですが、他人がプレイしている動画を見ていると、自分もそのゲームを一緒にプレイしている楽しさや一体感が心地よく、ついつい長時間視聴してしまうのが、ゲーム実況動画です。
最近ではゲームプレイの巧みさだけでなく、プレイ中のトークの面白さや、実況者のパーソナリティも含めて、タレントのような人気を持つ「プロ実況者」も人気です。
※左の写真は、ニコニコ動画の人気実況者、「ガッチマン」さんの書籍です。ガッチマンさんは実況を仕事にしており、この本はそんな「プロ実況者」としての日常を描いた漫画です。おすすめの作品です。
実況だけで生計を立てている人は他にもたくさんいます。それだけ、ゲーム文化の中に根付いているということが分かりますね。
そんなゲーム実況ですが、視聴者が楽しむだけでなくて、ゲーム業界へのプラスの効果も見過ごせないほど大きなものになっています。
たとえば、任天堂は以前よりゲームの実況には好意的で、任天堂のゲームのプレイ動画をyoutubeやニコニコ動画にアップすると、優れたコンテンツであれば任天堂が奨励金をプレイヤーに進呈するというプログラム「Nintendo Creators Program」を運営しています。何とも気前がいいプログラムですが、これは任天堂が、ゲーム実況がゲーム文化のすそ野を広げる効果があると認めている証拠です。
また、日本よりe-sports文化の浸透度の高いアメリカでもゲーム実況の経済効果が高いという声も上がっています。例えばアメリカの人気インディーズRPGゲーム「Undertale」はプレイヤーの実に4割はネット上での実況動画からゲームを知った、と言われています。
参考記事:https://www.inside-games.jp/article/2016/01/25/95274.html
任天堂のような人気キャラクター、作品を多数有する会社でも、インディーズゲームでも、プレイヤーが新しい楽しさを創出してたくさんの人がもっとゲームを楽しめるようにんなる、そんなゲーム実況は明らかにゲーム文化を豊かにしています。
そんなゲーム実況にも問題点はあります。それは、法的問題です。ゲーム中の画面を録画して、無断でアップロードし視聴可能な状態にすることは、著作権法第23条の「公衆送信権」に抵触する可能性があるのです。基本的にメーカーの許諾を得ていないアップロードは容認されません。Youtube動画でゲームの実況動画を見ていると、続きが消去されていることがありますよね。とはいえ、そんなゲーム実況には、先ほど述べたように明らかにゲームの魅力を増す要素があるのも事実です。メーカー側もそこはわかっているので、「お目こぼし」をして事実上容認しているケースもあります。曖昧でルーズな状態とも言えますが、そんな曖昧さがあるからこそ、ゲームのプレイヤーもメーカーも、視聴者も幸せな環境があるのも事実です。
さて、ゲーム実況という文化は今後どうなっていくのでしょうか。ゲーム実況は文化的に廃れる可能性がある時期もありました。昨年に大筋合意したTPPにおいて争点になった、「著作権の非親告罪化」という問題があります。「親告罪」というのは「告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪」のことを言います。つまり、非親告罪化するということは、告訴がなくとも著作権に触れていたらそれを取り締まることが出来るようになる、ということです。もしそれがゲームにも適用されるならば、ゲーム実況は真っ先に取り締まりの対象になっていたでしょう。現在ではアニメゲーム漫画の創作物における二次創作については非親告罪化を免れる方針になっていますが、完全に文化自体が廃れる危険性もあったのです。
今後ゲーム実況はますますゲーム文化の中になじんで、存在感を増していくでしょう。その時に、現在のようなルーズさが続くのか、それとも企業がもっと介入してオフィシャルなものになっていくのか、注目していきたいところです。今後はTPPも入ってくるので、日本の法体系も大きく変わっていくでしょう。親告罪化は逃れましたが、規制が増えてくる可能性もあります。ゲームを実況する人も、視聴する人も、文化を支える法律についても関心を向けてみてください。
ゲーム業界で今争点になっている問題については下の記事を読んでみてください。
参考記事
スペシャルインタビュー企画・山田太郎参議院議員に聞く!(前編):BLも違法に?!「表現の自由」はいかに危機に瀕しているか。