6月3日の日本経済新聞において、「ソフトバンク、ガンホー株の9割売却へ 730億円で」という記事が掲載されました。しかしながら、ソフトバンクは本来、携帯電話のようなインフラ事業を得意とする企業です。今回は、株の売却がどの程度の影響があるのか。日本のアニメやゲームを取り巻くプラットフォームがどうなっているのかに関して書かせていただきました。
ソフトバンク、ガンホー株の9割売却へ 730億円で
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGD03H4F_T00C16A6000000/
引用始め
ソフトバンクグループがグループで保有するガンホー・オンライン・エンターテイメント株の約9割を売却することが明らかになった。ガンホーが3日深夜に発表した。ソフトバンクグループから1日に売却を打診されたという。ガンホーはTOB(株式公開買い付け)により、株式を取得する。買い付け総額は約730億円となる。
決算の説明をするソフトバンクグループの孫社長(10日午後、東京都中央区)
ソフトバンクグループは子会社のソフトバンクと合わせてガンホー株の計28.3%(約2億7200万株)を保有している。ガンホーがTOBをした場合にソフトバンクグループは、そのうち2億4830万株を応募することで合意した。
売却が完了するとソフトバンクグループによる株式保有は約2400万株で持ち分は2%あまりとなる。ガンホーはソフトバンクグループの持ち分法適用会社ではなくなる。
3日から20日以内にTOBを開始する。買い付け価格は1株当たり294円で、公表日前日の2日終値309円に比べて4.9%下回る。
ソフトバンクグループは開示をしていないため、目的は明らかでない。ソフトバンクグループは2000年に投資し始めた中国の電子商取引(EC)最大手・アリババ集団の株式を売却するなどして100億ドル(約1兆700億円)の資金を調達すると3日に発表したばかりだ。
引用終わり
この記事を読み、多くの方は、730億円という額驚きを持っているのではないでしょうか。ゲーム業界でいえば、しっかりしたネイティブアプリゲームが数百本、アニメで言えば1クールのテレビシリーズが数百本、国産アニメで最も制作費とかけた「ファイナルファンタジー」のフル3DCGアニメーションでさえ、5本前後はつくることが可能な額になります。
(画像元:Amazon 【映画パンフ】ファイナルファンタジー 坂口博信 ミン・ナ)
しかしながら、記事を最後まで読むとまた別の印象を持ちます。ガンホー株の売却とともに中国の最大手の電子商取引のアリババ集団の株も売却することが発表されましたが、その額が100億ドル(約1兆700億円)ということです。この額は、ガンホー株の売却額の約15倍にも想定し、その差に愕然とします。さらに決算報告書より、アリババ集団の取扱額は約60兆、売上高は2兆円にも及ぶとのことです(2015年決算報告書)。
現在のアニメゲームの市場規模とプラットフォーム
皆さんはプラットフォームという単語はご存知でしょうか。皆さんがソーシャルゲームなどをダウンロードする際にGoogle storeやApp storeのサイトに行くと思います。そのようなゲームコンテンツをまとめているサイトや仕組みを作っているのが、プラットフォームになります。アニメなどの映像で言えばYouTubeなどがプラットフォームにあたります。そのようにコンテンツを多数集めているプラットフォームは、コンテンツを扱っている企業よりもより収益を上げている傾向があります。
表からわかるようにプラットフォームを扱っている企業は基本的に数兆円から数十兆円という単位で収益をあげており、パブリッシャーと比較しても2桁ほど大きな収益を上げていることがわかります。加えて、時価総額に関しては、日本のパブリッシャー全てを合わせても、プラットフォームの企業の時価総額にも及ばないほど、パブリッシャーとプラットフォーマーには企業規模の差があります。
ではアニメやゲーム業界の市場規模とではどうでしょうか。アニメ業界全体としての市場規模は、テレビ、映画、ビデオ、商品化、音楽、海外、遊興、ライブなどの広義のアニメ市場で見た場合、2014年で約1兆6297億円になります(アニメ産業レポート2015)。
(画像元:米利上げを決定。映画、アニメ、音楽でソニー、東映アニメ、アミューズに注目。の記事より)
ゲーム業界で言えば、オンラインプラットフォーム、家庭用ゲーム機を合わせて1兆1925億円(ファミ通ゲーム白書2015)という額になります。そのため、ソフトバンクほどの規模の企業であれば、市場規模に迫るほどの出資も可能ということになります。
しかしながらそれをなされていないということは、それだけの価値や成長性がないということ示しており、それはアニメやゲーム業界にとっては残念なことです。さらに言えば、ソフトバンククラスの企業は、世界にもいくつもあります。逆に、世界の企業で日本のアニメやゲームの市場に興味を持った場合、簡単に囲い込まれてしまうことをしましています。その流れは、すでに各業界のプラットフォームの傾向に現れています。
例えば、アニメ業界であれば、ストリーミング配信によるアニメの視聴が年々増加しています。国内では、dアニメストアやバンダイチャンネルが有名ですが、世界的にはHuluやNetflixが有名です。ゲーム業界であれば、近年オンラインゲームの市場が急激に増加していますが、その中でもネイティブアプリ関連のプラットフォームに関しては、Google storeやApp storeが独占しています。このように、コンテンツ自体は国内で何の変わりなく制作、開発されていますが、それを配信するためのプラットフォームに関しては、どんどん海外企業が進出してきております。そのため、せっかく国内で大ヒットしたタイトルがあったとしてもその収益の一部は、海外へ流れてしまっています。Google storeやApp storeの場合では、収益の3割が手数料として天引きされています。
また、日本で最もヒットし、ゲーム業界で最大手となったガンホーでさえ、ソフトバンクの投資戦略で大きく振りまわされたり、世界のプラットフォームを運営している会社からしてみれば一コンテンツを運営する小規模派企業にしかならないのです。
しかし日本には素晴らしいアニメやゲームなどのコンテンツが揃っています。もし国産のプラットフォームに日本のコンテンツがどんどんリリースされたのであれば、海外の運営会社よりも安い手数料で運営され、さらには、そこでの収益の増加によって、新たな作品への開発費用やクリエイターたちへも給与として還元されるでしょう。現状でもソフトバンクのようなインフラのノウハウや資金調達力のある企業は存在します。そのような企業と組んでプラットフォームから日本産で運営できるのであれば、開発会社やクリエイターはより良い環境で作品作りに勤しむことができるでしょう。
それは夢物語でしょうか?でも目の前にお金は大量にあるのです。実際にそういう企業が存在しています。沢山のお金を持ってる企業が作ったプラットフォームに、商品をせっせと作って流通させている日本企業、という図式はいつでも壊せる。それはとても夢のある話です。そんな時が来るためにも、アニメゲームマンガを盛り上げ続けたいのでラクジョブを運営します。