アニメ なぜアニメーターの年収が上がらないのか?その本当の理由とは!?

低賃金、長時間労働が当たり前と思われているアニメ業界、実際、人材の不足や経営の脆弱性も問題点と挙げられていますが、本当にそれだけなのでしょうか。クールジャパン政策により、日本のアニメコンテンツへの注目は高まっています。そのため、政府支援を求めれば、そのための予算を確保することも可能ではないでしょうか。しかしそれがなされていない現状から考えると、経営サイドには、これら以外にも何らかの不安要因があるのではないでしょうか。

スクリーンショット 2016-06-02 10.51.41アニメ業界の職種別平均年収

アニメーション制作者実態調査報告書2015によれば、アニメ業界全体の平均年収は、332.8万円、最も低いのが111.3万円の動画、最も高いのが監督の648.6万円になります。もちろん職種別の平均年収になりますので、動画であってもこれ以上低い方もいれば、監督で648.6万円以上の収入のある方もいます(アニメーション制作者実態調査報告書2015)。

アニメ業界、特にアニメーターは、出来高制が多く、作画を何カットこなしたかで月収が決まり、ある程度こなさなければ生活もままならない状態になってしまいます。そのような状態だからこそ低賃金、長時間労働が当たり前となってしまっています。現場のアニメーターからも悲鳴じみた話はよく持ち上がってきます。経営側から見れば、アニメに対する制作費の減少、出資会社から見れば、アニメの販売による収益の回収が難しいという背景があります。一般的な30分のTVシリーズのディスクで、収益を回収しようとするのであれば、だいたい1巻あたりで6000本を売る必要があります。しかし実際にその本数まで行くのは2から3割程度でしょう。逆に万を超える大ヒットタイトルにアニメ会社からも一部でも出資していればその配当としてアニメ会社への収益となり、スタッフへの報酬にも還元されるでしょう。

また、そんな確率論のような話をしなくても、政府への援助という手もあります。クールジャパン政策として、日本のコンテンツを世界にPRしようとしていますし、もちろんその中には、日本のアニメも含まれています。加えて、来年は、日本でアニメが制作されて100周年という節目の年にもなります。そのような状況の中、政府の方で、アニメ業界の待遇改善を求めた支援策が出ないわけがありません。しかし現状、そのような動きは見られません。それはなぜでしょうか。

そこには、低賃金、長時間労働が当たり前だったアニメ業界特有の問題点があります。経営者はそのことに関して、肌感的に感じ取っているため、政府支援へ踏み切れないのではないかと考えます。

shutterstock_341393339生活ができればいい?

その不安要因となっているのが、アニメーターを中心としたクリエイターがあまりにもお金をもらうことに対して慣れていないということです。低賃金・長時間労働という業界だということがわかって就職を目指すのですから、大変さはある程度認識し、何か達成したい夢があるために目指しているのだと思います。しかし実際は、ある一定の画力とスピードがなければ生活も立ち行かなくなり職種を変更したり、ひどければ絵を描くこと自体が嫌になり、業界を離れてしまうというケースもあります。また、生活が成り立っている人でも、長時間労働のため、趣味などに使う時間もお金も確保できません。もしアニメ制作が好きで、ずっと描き続けられる人ばかりでは問題ありませんが、生活のためにやむなく長時間労働を行っているのだとしたら、政府からの支援は裏目に出てしまいます。そのような場合の方は、自分が最低限の生活費を稼いでしまった時点で満足してしまうため、それに合わせた仕事量や時間の使い方をしてしまうため、作業効率が大幅に落ちる可能性が高いです。加えて業界の背景に人材不足ということは以前から叫ばれているため、1クールに数百タイトルあるアニメの制作がままならなくなってしまうでしょう。

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そしてもう一点が、アニメーターの作品に対する選り好みが激しいということです。以前アニメ業界において、カット単価が大幅に上がった時期がありました。それは、パチンコ・パチスロなどの遊技機に使われるアニメです。場合によっては、TVシリーズの数倍のカット単価の時もあったということもあったそうです。しかし先ほど紹介したアニメーション制作者実態調査報告書2015ではあまり状況は良くなっていません。その理由としては、アニメーターがパチンコ・パチスロのお仕事を受けたがらなかったからです。背景には、守秘義務の関係で実績として表に出せないことになります。TVシリーズや劇場版であれば、最後のエンドロールに名前が出たりもしますが、パチンコ・パチスロの場合、公に見られるところに一切情報を開示できないというデメリットがあります。そのようなこともあってアニメーターは、TVシリーズや劇場版の仕事を優先させますし、その影響によってアニメ会社も仕事をもらったものの社内ではまかないきれないため、外に出してトラブルになるというケースもありました。そのため、もし全体的なカット単価が上がったとしたら、自分の好きなテイストや好きな作品しかやらなくなってしまう可能性もあります。

kleiner junge ganz groアニメーターだから業界を変えられる!!

これらのことが考えられるためになかなか資金周りが改善されないのではないでしょうか。ではどうすればいいのでしょうか。それもアニメーター次第だと思います。なんだかんだ言って、アニメーターの影響が大きいのがアニメ業界です。アニメーターを目指す人は、よく「〇〇のような作品を作りたい。」「人々に感動を与えたい。」という志望動機を持って就職する人がたくさんいますが不思議なもので、その夢の一部でも叶ってしまうと、途端に夢への情熱がだんだん冷めてしまう傾向があります。しかしこれは非常にもったいと感じます。日本の作画のアニメーターは世界でも最も優秀な集団であり、目標次第で、今まで以上の実力が発揮できると考えます。そのような高い目標とやる気に満ちたアニメーターが集まれば、作品の質もこれまでの作品を上回るものもどんどん生み出せますし、それに憧れてアニメ業界を目指す人が増え、低賃金・長時間労働という環境から脱却できると考えます。そして何より世界に影響を与えている作品を作り、それだけの価値を生み出しているという自覚と自信を持つことが大切です。

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