廃校を漫画塾に
毎日新聞は6月1日付けの記事で、山口県周南市が公募した廃校の活用策に「周南マンガヴィレッジ」という漫画家を育てる塾を設置すると報道しました。
(引用開始)
漫画家を育てる塾「周南マンガヴィレッジ」が6月末、周南市長穂の旧翔北中学校でスタートする。市が公募した廃校の活用策で、運営するデザイン会社「周南クリエーティブセンター」(中司隆文社長)が、塾生を募集している。
(中略)
翔北中は2012年度に休校(昨年度廃校)した。中山間地域の活性化を探る市が同社に無償貸し付けし、補助金も交付する。市地域づくり推進課の菅田浩司・中山間地域振興室長補佐も「若者の移住や働く場所が生まれてほしい」と期待している。
(引用終わり)
引用元:周南マンガヴィレッジ 廃校の中学活用し漫画家育てる塾 今月末開校 塾生を募集 /山口
https://mainichi.jp/articles/20160601/ddl/k35/040/491000c
漫画の技術を学ぶ際、多くの人は漫画の専門学校という選択肢を選ぶかと思います。しかし、専門学校は都心に集中しており、地方の漫画家志望者は都心への移住か、独学で漫画を描いていくしかありません。また、出版社の多くは東京都心部に集中しているため、漫画家として活動する際も、やはり都心への移住をしたほうが後々都合が良いということで、地方だけで漫画家が育ちにくい状況であると言えるでしょう。今回のニュースは、過疎化によって学校が休校、もしくは廃校になってきている山口県にとっても(参考:少子化背景に次々と消える学校山口県内・10年で小・中56校減)、地方から都心へと移りすまなければ漫画を学ぶことができないと考えている人たちにとっても朗報です。本格的な塾になる予定で、入学金なし、年間授業料は40万円と専門学校と比べてはるかに安い値段で、プロ漫画家による指導を受けることができます。
漫画家の発掘
また、鳥取県では2012年から開催されている漫画家の発掘のためのコンテストの作品募集を今年もはじめました。
(引用開始)
個性的な漫画家を発掘しようと、県が「第5回国際マンガコンテスト」の作品を募集している=写真はチラシ・県まんが王国官房提供。テーマは「ヒーロー・ヒロイン」で、最優秀賞には賞金50万円が贈られる。応募は8月31日まで。
漫画を通した観光振興や人材育成を図る「まんが王国とっとり」の事業として、県が2012年から毎年開いている。入賞作などは県が出版する作品集に掲載される。
(中略)
プロ、アマや年齢、国籍を問わず、母国語の作品も受け付けている。「食」をテーマに開いた昨年のコンテストには405点の応募があり、うち118点は海外からだったという。県は「これまで以上に幅広い層からの応募を期待している」と呼びかけている。
(引用終わり)
引用元:国際マンガコンテスト:県、個性的な漫画家発掘 最優秀賞に50万円 /鳥取
https://mainichi.jp/articles/20160517/ddl/k31/040/577000c
まんが王国とっとり主催 国際マンガコンテスト公式サイト
https://www.pref.tottori.lg.jp/238597.htm
こうしたコンテストを開催する利点として、その地域に対して漫画というコンテンツに馴染みを持たせるということが挙げられるでしょう。若い世代の興味関心はアニメや漫画、音楽などのサブカルチャーに傾く傾向があります。(参考:若者の関心と政治や選挙に対する意識に関する調査)地方が置かれている現状とアニメゲーム漫画というサブカルチャーというものを考えてみると、人口流出によって若い世代はどんどん都心に向かっていってしまうので、アニメゲーム漫画というものに馴染みのない高齢者や中年層ばかりが増えて行くことになります。若い世代を引きつけるという意味でもこうしたイベントを開催することは重要でしょう。鳥取県は「第13回国際マンガサミット」を誘致したり、「まんが博」というイベントを開催したりして、継続的な取り組みの発展に取り組んでいます。しかし、鳥取県の人口は減り続けています。(参考:鳥取県の人口動態の推移)
地域で育て、その土地で働いてもらう仕組みづくり
人口流出の原因の一つに、教育機関が充実していない、職業訓練を十分に受けられない環境が関わっている可能性は大きいです。鳥取県では多くの漫画家が出身地であるというPRをしていますが、次のステップとしては、漫画家が育つ環境を整え、かつ漫画を世の中に出しやすい環境を作り、PRすることでしょう。これはアニメーターやCGデザイナーも一緒です。冒頭で紹介したニュースのように、地方でもアニメゲーム漫画の技術を学べる環境を増やすことをしなければ、結局のところ都心で学ぶしかなく、仕事の口も多いので都心にそのまま住もうと思う人は減っていかないのではないでしょうか。
インターネットというインフラは整備されていますし、Pixivなどのイラスト投稿サイトからの引き抜きなども現在では普通に行われています。デジタルデータでのコンテスト受付や持ち込みなどを実施されている出版社もありますし、文字でのやり取りで伝わらない場合はスカイプなどの無料通話サービスを併用するなど、いくらでもやり方はあります。その地域で育て、その地域で働いてもらう仕組みづくりを行政レベルで働きかけることが、漫画というコンテンツの発展と地域活性化を同時に推し進める手立てになるでしょう。人材の育成は欠かせません。腕のよい講師を雇えて、塾生徒がプロになったりコンテストに入賞するということになれば学校や教育機関として実績になり、ここで学びたいという人も増えます。冒頭で紹介したニュースのように、廃校など、既存の使われなくなった施設を使えば新たに建築予算を立てる必要はありません。使われなくなった箱物を、教育や技術を教えるための施設にすることは安全や運営費用の面を考慮すると簡単なことでは無いかもしれませんが、一つの手段として山口県のケースは非常に参考になるのではないでしょうか。
記事を読んでいただきありがとうございました。
ラクジョブの会員登録はコチラから!