ラクジョブ会員様からの問い合わせ
記事を読んでいただきありがとうございます。先週末ラクジョブの会員の方から問い合わせの電話をいただきました。会話した時間はだいたい40分ぐらいでしたが、アニメ業界へ転職したいということについていろいろと質問をいただき、ひとつひとつ回答をさせていただきました。その際によくキーワードとして出た言葉が「安定している企業」と「発展性のある企業」でした。やはり転職するというときに、入った会社がすぐに倒産してしまっては、せっかくの転職が台無しですし、また転職活動をする必要が出てくるのでそれはかなりの労力を必要とします。だからこそ、転職先の会社の情報はしっかりとおさえた上で、転職活動をすることにより長くその会社に勤めたいという気持ちもよくわかります。
私自身、転職と言うよりは就職活動をしようと思った矢先に第一希望であった会社が倒産しました。小学校5年生の頃からゲームセンターに通っていて、中学生の頃からアーケードゲーマー向けに出ていた専門誌で「ゲーメスト」という雑誌がありました。当時ネットもない頃だったので、そのゲーメストを通じて日本の有名なプレイヤーやハイスコアランキングを見て、自分もその中に入ってみたいと思っていました。そして大学3年生になり、春先から少し気が早いけどそろそろ就職活動をしようと思って、ゲーメストを発行していた新声社という会社のゲーメスト編集部宛にメールを送りました。就職したいです、と。すると、当時の編集長から返事が来て、メールの書き方から社会人としてのマナーまでいろいろと教えてもらいました。大学3年生の8月頃、それまで週1程度でやりとりしていたメールが突然来なくなり、そして9月になったときに新声社の倒産が発表されました。そのとき会社はつぶれるものだとものすごく身近に感じた出来事でした。
安定はあるのか
では今回お問い合わせをいただいたようにせっかく転職なり就職なりをするのであれば、きちんと会社が続いてお給料もしっかり出る安定した会社に入りたいと思ったときに、安定している会社とはどんなところなのか調べてみました。下記のデータは東洋経済オンラインで公開されている2014年の記事です。安定しているということの定義を就職時の年収の高さと、30代、40代となったときの年収の伸びをひとつの物差しとしてみたときに、どんな企業、どんな業界が上位に来るのかを見てみましょう。
業界別大卒初年度年収ランキング(上場企業)
順位 業種 年収 主な企業
1位 鉱業 493万円 国際石油開発帝石、石油資源開発
2位 保険業 439万円 第一生命保険、東京会場HD、損保ジャパン日本興亜HD
3位 石油・石炭製品 425万円 出光興産、JXHD、コスモ石油、東燃ゼネラル石油
4位 倉庫・運輸関連業 416万円 上組、日新、郵船ロジスティクス、近鉄エクスプレス
5位 食料品 391万円 山崎製パン、JT、伊藤園、味の素、ブルボン、森永乳業
6位 陸運業 363万円 JR東日本、日本通運、JR西日本、JR東海
7位 建設業 360万円 鹿島、清水建設、大林組、大成建設、積水ハウス、大和ハウス工業
8位 ゴム製品 351万円 ブリヂストン、住友ゴム工業、横浜ゴム
9位 輸送用機器 351万円 トヨタ自動車、デンソー、ホンダ、日産自動車、マツダ
10位 医薬品 346万円 武田薬品工業、アステラス成約、第一三共、中外製薬
全産業平均 314万円
業界別30歳推計年収ランキング(上場企業)
1位 保険業 658万円 第一生命保険、東京会場HD、損保ジャパン日本興亜HD
2位 石油・石炭製品 617万円 出光興産、JXHD、コスモ石油、東燃ゼネラル石油
3位 鉱業 613万円 国際石油開発帝石、石油資源開発
4位 海運業 559万円 日本郵船、商船三井、川崎汽船
5位 倉庫・運輸関連業 524万円 上組、日新、郵船ロジスティクス
6位 医薬品 514万円 武田薬品工業、アステラス成約、第一三共、中外製薬
7位 食料品 507万円 山崎製パン、JT、伊藤園、味の素、ブルボン、森永乳業
8位 証券、商品先物取引業 498万円 野村HD、大和証券グループ、SBIHD
9位 不動産業 495万円 三井不動産、住友不動産、三菱地所、イオンモール、大京
10位 陸運業 491万円 JR東日本、日本通運、JR西日本、JR東海
全産業平均 453万円
業界別40歳推計年収ランキング(上場企業)
1位 保険業 826万円 第一生命保険、東京会場HD、損保ジャパン日本興亜HD
2位 海運業 782万円 日本郵船、商船三井、川崎汽船
3位 石油・石炭製品 758万円 出光興産、JXHD、コスモ石油、東燃ゼネラル石油
4位 鉱業 747万円 国際石油開発帝石、石油資源開発
5位 証券、商品先物取引業 739万円 野村HD、大和証券グループ、SBIHD
6位 医薬品 696万円 武田薬品工業、アステラス成約、第一三共、中外製薬
7位 銀行業 668万円 三菱UFJ、みずほ、三井住友
8位 情報・通信業 659万円 日本電信電話、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク
9位 その他金融業 656万円 オリエントコーポレーション、オリックス、ジャックス
10位 不動産業 640万円 三井不動産、住友不動産、三菱地所、イオンモール、大京
全産業平均 589万円
(参照:「給料が伸びる業界」ランキング)
保険業は年代問わず、トップレベルの給料水準であることがわかります。石油・石炭製品も高水準を維持していますし、40代になったときの伸びで見れば海運業は後咲きの業界だと言えるかも知れません。
ではこれらを見て、安定を求めるのであればここの上位に全く入ってこないアニメ業界やゲーム業界、漫画業界には行かない方がいいという結論になります。非上場の企業や企業単体で見れば上位に食い込めるような企業もあるのかも知れませんが、そこに入れる方はごくわずかでしょう。ですが安定を求めている人は実際これまでに多くの転職活動を手伝っていく中で必ず出ると言っても過言ではないキーワードの一つです。
先日相談を受けたゲームプログラマーの方も、ご本人からはスマートフォン向けのゲーム開発経験しかないが将来的にはコンシューマーゲームの開発に関われるチャンスがほしいと言っていたので、これまでの経験も生かしつつ、コンシューマーゲームのプログラマーになれるチャンスのある会社から内定が出ましたが、最終的に決断したのはスマートフォン向けのゲーム開発しかやる予定がない会社でした。その理由としては年収が100万円以上違ったからとのことです。
仕事をする上で重要なこと
プログラマーの方の事例は将来的にどうなるかはわかりません。年収設定が低いけどコンシューマーゲームの開発もできる会社に入っていたらそこが倒産するかもしれませんし、決めた転職先でコンシューマーゲームの開発にかかわれるかもしれません。どちらにせよ一つ言えることは、腕の立つプログラマーとして成長し、認められれば、転職先に困ることもなく、向こうから勝手にウチに来てくれないかと相談がやってきます。会社はいつ倒産するかわかりません。上場企業でさえ倒産しないと断言できる会社はありません。昨年の倒産状況に関して東京商工リサーチのデータを見てみましょう。
全国における企業の倒産件数は8,812件のうち上場企業の倒産数は3件でした。そう考えると上場企業の倒産率は全体のたった0.03%です。つまり倒産しない会社に入ることが安定の一つと考えるのであれば、上場企業に入ることはそのリスクをかなり低減してくれるでしょう。ただ考えるべきこととして、倒産しないというだけでリストラを行うことはありますし、リストラとまでいかなくとも、単純にクビになる可能性もあります。会社としては存続していてもその会社と雇用契約がずっと続くということはイコールではありません。
では考えることは何なのかというと、それは仕事で成果を出し会社からはやめるといったら引き留められ、取引先からはウチに来ないかと誘われるくらい仕事が出来る人になることです。逆にそれさえ実現すれば、安定した会社がとか、給料がずっと出るかとか、企業の発展性はあるのかとか、考える必要が一切なくなります。給料がきちんと出て、安定して、企業を発展させる力を持てば良いのです。そんな人は何処の会社に行っても何処の業界に行っても引っ張りだこでしょう。
転職を考える上で重要なのは、自分が何をしたいのか、そしてどうやってその会社に貢献できるのか、そしてどれぐらい会社からかけてもらった給料や経費という投資に対してリターンを提供できるのか、これにつきます。投資に対してリターンがあるのであれば、会社はその人を必ず雇用し続けますし、給料もきちんと払うでしょう。企業が安定しているかどうかはすべて外部の要因です。それは景気や業界動向、法改正などによって左右されることがあります。ですが個人の力はずっと個人について回りますので、外部の要因の影響を受けにくい。だからこそ、自身が成長し会社に貢献できる人材となっているかどうかが、最も考えるべきことになります。転職や就職を考えている人は、ぜひその点こそしっかりと吟味した上で、就転職活動に望んでほしいと思います。
最後に、ラクジョブでは会員の皆様の相談に乗ることがよくあります。業界に関する情報をしっかりと発信できるところがまだまだ少ないと思います。だからこそ個別の質問にもしっかりとお答えして、業界の就業人口は増え、さらに良い作品が生まれるお手伝いをしたいと考えています。なにか就職や転職において困ったこと、相談したいことがあれば、下記の連絡先まで気軽にお問い合わせ下さい。