青春はあったか
思春期、青春という言葉をきくと、どうにも私とは遠い存在であると思わざるを得ません。思い返せば私は中学高校と彼女もつくらず、部活で汗水たらすか、教室の隅で男子で固まりながらモンスターハンターポータブル2ndGで遊んでいました。そうです、女子と全くと言っていいほど遊んでいませんでした。恋愛に対して一喜一憂するのも格好悪いと思っていた私は恋愛を自分とは全く関係ないものなのだと思い込むことで、モテない自分を磨こうともせずに他人の恋愛を見ては「いいな~」と思う情けない日々を過ごしていました。青春という名の舞台において脇役に徹しようとしていた私は最近までこの作品の存在を知らなかったのですが、友人におすすめされてKindleで購入して読んでからというもの、すっかり高木さんと西方さんの可愛らしいやり取りの虜になってしまいました。
からかい上手の高木さん
(画像はAmazonより)
「からかい上手の高木さん」は中学生男子「西方くん」と西方くんの隣の席に座る女子「高木さん」のやりとりを描くラブコメディです。ヒロインである高木さんは西方くんをからかうのを生きがいにしています。ありとあらゆる方法で西方くんをからかい、その反応を楽しんでいるのです。話しかけてくる女子すらいなかった私としては西方くんいいな~とか思ってしまいます。からかい方も絶妙で、思わせぶりなセリフを言ってみたり、西方くんが恥ずかしがるようなことを敢えて言わせてみたりするというところからラブコメの波動を感じざるを得ず、そういう生活と無縁だった私からしてみればこのー!羨ましいぞ眩しいぞ!となるわけです。1話完結になっており、テンポよく読み進めることができます。西方くんも悔しがって仕返しをしようとするキャラクターなのですが、トムとジェリーのトムよろしく、すべて裏目に出てしまうのです。男性だったら「西方くんは気づいてないかもしれないけど、君は羨ましい状況なんだよそこを変わってくれ!」と思うでしょうし、女性だったらまさしく高木さんのような気持ちになれること間違いないしです。男性女性どちらにもおすすめできる青春コメディ作品です。
理想の青春なのかもしれない
(画像はAmazonより)
あまり青春コメディや恋愛漫画などのジャンルを読んでこなかったのと、思春期に恋愛やら青春というものを自分から遠ざけてしまっていた私は、理想の学園生活というイメージを持たずに学生を過ごしていました。モテたいとも心の何処かでは思っていたのかもしれませんが、そうした心には蓋をして、見ないふりをしていたのですが、「からかい上手の高木さん」をもし中学時代に読んでいたら、きっと「こんな学校生活送りたいな~」と思ったに違いありません。いいなあ西方くん。それしか書いてないですね。失礼しました。
どっちなの高木さん
高木さんのからかいの中で、思わせぶりな事を言ってからかうというテクニックが頻繁に使われ、西方くんも気が気でなくなるということが何度もあるのですが、その中で西方くんのことをどう思っているのかということが垣間見えたり見えなかったりします。ん?いまのどういうことですか高木さん?というセリフがポンポン出てきます。そうです、読者である我々も高木さんに翻弄されているのです。それに甘酸っぱさを思わず感じてしまいます。そういえば、「からかい上手の高木さん」、手元に正確なアンケート結果などはないのですが、ネットを見てみるとミドル世代の人たちからの支持もあるとのこと。「MFブックス」など30代社会人男性ををターゲットにしたライトノベルレーベルなどの存在もありますし、こうしたボーイミーツガールの作品は登場人物の年齢層というよりかは、それよりも少し上の人達に人気が出るのかもしれません。
日常系マンガはファンタジーである
(画像はAmazonより)
私は日常系のマンガ作品を多く読む傾向にあります。読むのに疲れないし、共感できるところがあれば「そうだよな〜」と没入できますし、舞台が現代社会なので簡単に作品に没入することができます。これは私の持論なのですが、私は日常系マンガも「ファンタジー」の1つであると考えています。ファンタジーと聞くと魔法や驚くべき機械文明が出てくる作品のことを思い浮かべると思いますが、それは1つの用法に過ぎません。ファンタジーのジャンルの中にロー・ファンタジーという言葉があります。これは現実世界において超自然的な世界が描かれたファンタジーのことなのですが、広く見ると日常系マンガはロー・ファンタジー作品が多いのではないでしょうか。『聖☆お兄さん』や『ふらいんぐうぃっち』など、日常系と分類される作品でもファンタジー要素がある作品は多いです。『よつばと!』の登場人物だって現実では考えられない躍動感ある動きをするし、主人公の「よつば」は孤児で髪の色も緑色、正直日本人かそうでないかもよく考えたら分かりません。しかしそれが自然とそこにいる世界を描いています。『からかい上手の高木さん』はどうでしょう。こんな手の込んだいたずらをしているのに嫌われない女子っているでしょうか。はたまたそれを満更でもないように思ってしまう男子はいる…かも知れませんが、フィクションにはやはり現実では考えられない部分がどうしても入ってしまうのです。現実世界に似た舞台装置によって、より深い没入感に浸らせる日常系マンガの話題作『からかい上手の高木さん』は、「甘酸っぱい青春」という1種のファンタジーを我々に提供してくれる素晴らしい作品だと思います。ぜひ読んでみてくださいね!