星新一ショートショート・コンテスト選考通過
星新一のショートショート全編をコンピューターに分析させ、人工知能によって面白いショートショートを創作させることを目的に立ち上がった「気まぐれ人口知能プロジェクト 作家ですのよ」にて作成されたショートショートが、実際に「星新一賞」に応募され、なんと一次予選を通過しました。佐藤理史教授の研究グループが作成した日本語出力システムを利用したもので、創作された作品は公式ホームページから見ることができます。(画像は公式ホームページより引用)
実際に読ませていただきましたが、とても人工知能が書いたような文章とは思えないほど整った作品で、人工知能が書いたということを伏せていれば、人間が書いた文章と遜色ないものになっています。このことを取り上げたマイナビニュースの記事では、SF作家の長谷敏司さんも「会話文などは、プロの作家でもこれだけかけない人がいるだろう」という評価を下したほどです。
https://news.mynavi.jp/articles/2016/04/21/ai/003.html
文章を作成する人工知能に関しては、MicrosoftがLineやTwitter上で女子高生AI「りんな」を提供したことは記憶に新しいと思います。機械でも自然なやりとりが可能であるということを広く周知しました。
人工知能を如何に使いこなすかが鍵となってくる
人工知能と人間が小説を書くことの大きな違いは、「完全に自分の持っている情報からすべてを創作できるかできないか」というところです。つまり、ある程度の枠組みを作ってあげれば、人工知能でこのような文章を作るところまで出来てしまうようになってしまいました。人工知能は設計された通りに動くことしかできず、また意図した通りに動かすことが目的でもありますから、設計者が想定しなおかつプログラミングやアルゴリズムを設計できるような範囲のものでしか何かを生成することはできません。しかし、現段階でこれだけ整合性の取れた文章をあみだせるということは、既にうまく人工知能を使って人間が感動するような文章を機械で作り出せる時代であるということです。大まかな文章生成を人工知能にやってもらい、あとはそれを手直しするというようなシナリオ作成方法や、ストーリー構成方法を取ることもできるということです。アニメゲーム漫画業界は、今回のニュースに危機感を持った方が良いでしょう。作品の大まかな方向性を決めるのは人工知能でやってしまえば、作業効率化や人件費削減など、制作チームにとっても良いことづくめです。上記記事で取り上げられていたもう一つ人工知能プロジェクト「人狼知能プロジェクト」では、コンピューターが制作したシナリオを人間が手直しして作品化をしています。アニメゲーム漫画業界のシナリオライターは、大ピンチです。
人間が書くことに意味を持たせるには
人工知能による小説の創作で最大の難関はオチの生成です。物語のオチを生成するためには、何がオチであるかということを人工知能が理解できるようにならなければ、完全な自立した小説作成マシンとはなりません。「気まぐれ人口知能プロジェクト 作家ですのよ」で使われている文章生成プログラムでは、ある程度であればオチの分析が行えるようになってきているそうですが、未だに精密な、つまり意外性があって物語がしっかりと引き締まるといった人間の感覚に訴えるほどのオチを機械が自立して作るまでには至っていないのです。精度があがればあがるほど、人間の出る幕はありません。また、より良い作品を世に出したとしても、人工知能はそれを分析対象として学習することができますから、どんどんその精度は上がっていくことになるでしょう。いずれは人間が一から文章を作ることがバカバカしい時代がやってくるでしょう。
人工知能による文章が当たり前になった世界で生き残るために私たちはどうすれば良いのでしょうか。それは機械の設計者や人工知能を使ってシナリオやストーリーを生成する人たちの想像力よりもさらに上の想像力や文章能力を身につけ続けることです。機械が小説に必要な情報を自分で収集し、アイディアを創出し、臨場感ある小説を書くというような完全なオートメーション化が可能になる可能性は十分にありますが、機械の特徴はプログラミングされたレールの上を走ることしかできないということです。人間は自分で認識の幅を広げ、レールから外れることも、レールに沿うこともできます。シナリオライターや小説家、文章を書くことを職業にしている人たちは、機械が見落としたものを発見し、それを膨らまして価値を付加してくしかありません。大量にインプットした情報をうまくつなぎ合わせ、価値あるものを生み出していくことを今すぐ始めなければ、機械に仕事を奪われても文句が言えない世の中になろうとしています。