カードキャプターさくらとは
カードキャプターさくらは、1996年から2000年にかけてなかよしで連載していたCLAMP先生の少女向け漫画作品です。CLAMP先生といえば、今や少女、青年、アニメキャラクターデザインなど様々なジャンルで活躍している大御所漫画家ですが、元々は同人業界で名を馳せた実力派集団でした。カードキャプターさくらは商業誌作品の中では22番目の作品で、同人時代から含めるとすでに50作品以上を世に送り出しており、何人かの入れ替わりはあったものの、現在の4人体制のCLAMPになるに至るまで、アシスタントを使わず作品制作にあたってきたという少数精鋭、多彩で多作な、未だ謎の多いヒットメーカーとして知られています。そんなCLAMP先生の『カードキャプターさくら』はアニメやゲーム、玩具展開も盛んにされ、今でいうメディアミックスの手法をとって爆発的ヒットを生んだ作品でもあります。
漫画の掲載誌は「なかよし」で小学生女児向けだったのですが、1998年からNHKでのアニメ放送をきっかけによりファン層を広げます。NHKによると自社製作の作品の中で過去最高に費用投資を行った作品がカードキャプターさくらであり、脚本の大半をCLAMPの大川七瀬さんが担当し、オリジナルを数話挟むもののほぼ原作通りの進行かつ声優も過去のCLAMP作品に出演していたお馴染みの面々を揃えるなどCLAMPファン・原作通りのファンに配慮した作りになっていました。そうしたファン好みの設定と、小学生魔法少女である主人公さくらのひたむきさ、親友である知世ちゃんの趣味という設定で多彩に変わる可愛らしい衣装が相まって大人のお兄さんたちのファン層をも獲得しました。
アラサー女子にとっては青春でありバイブル
当時「なかよし」を読んでいた小学生女児たちはいま、アラサー世代に突入しています。私もその一人ですが、当時の私たちにとってカードキャプターさくらは等身大の頑張る女の子であり、彼女の着ている可愛い衣装、魔法のステッキ、クロウカードなどは憧れでした。不思議な力に目覚めて、小狼くんのような運命の人と一緒に戦い成長していくんだと何度も夢に描きました。そして恐ろしいことにCLAMP先生はカードキャプター以後も私たちの成長とともに別時間軸や世界線の違う、平行世界での作品を数多く発表していき、「CLAMP作品」としてのファン層を育てていったのです。
CLAMP先生の作品は、どの作品からハマったとしてもその作品のキャラが他の作品にも出ていたり、何かしらの繋がりがあることを匂わせたりといった、「スター・システム」を取っていることでも有名です。「スター・システム」とは、永井豪先生が言うところの「番組」と「出演」の関係がわかりやすいですが、永井先生は作品のことを番組と呼び、既存キャラが作品の枠を飛び越えて複数登場することを「出演」と呼びました。一度作ったキャラはキャラとして独立し、時には彼らの持つ設定を作品ごとに変えて、出演をしているんだという考え方です。舞台背景が異なる場合、顔や基本的な性格は同じでも前の作品の設定を引きずっていない場合というのが大半なのですが、CLAMP先生の場合、少しずつ設定を踏襲していたり、「同じ人物なのかどうか?」を読者に考えさせる演出がとても上手な作家さんです。そのため、より多くのCLAMP作品を読んでいるファンであればあるほど、各作品にまぶされた関係性や縁、生まれ変わりの可能性などのエッセンスを敏感に感じ取り、より深く作品世界に没入していくことになります。CLAMP作品の中には、圧倒的な人気を得ながらも完結せずに止まっている作品もあります。その解明されない謎が神格化され、一部のアラサー女子にはバイブルかのように崇められているのです。
そんなアラサー女子を狙い撃ちにしてくるグッズ展開
そして、そんなアラサー女子たちを狙ってきているグッズが今回のドライヤーです。これまでも美少女戦士セーラームーングッズにだいぶ心乱されてきたアラサー女子たちですが、実は水面下でカードキャプターグッズも2014年末ごろから進行してきており、プレミアムバンダイさんからリップとチークのコスメセットが出たり、2015年頭には封印の杖そのものが10年ぶりに再販されたりもしていました。なぜここ数年、じわじわとカードキャプターさくらグッズが出てきているかというと、実は「なかよし」にて『新編カードキャプターさくら』が7月から連載開始するのです!!2016年はカードキャプターさくら連載開始20周年の記念イヤー。それを記念しての新作連載として、なかよし4月号での発表がされました。ファンとしてはもう、たまらないですね!そういえば、セーラームーングッズが増えだしたのも新作アニメが始まるちょっと前だったような・・・。完全に旧ファンの新作への呼び戻しが来ています!!!
セーラームーングッズ同様おしゃれで「わかる人にはわかる」旧ファンの自己満足仕様なところが今回のグッズ展開のポイントです。今の作品に対してのオタクなのであれば、なるべく主張したいのがオタ心ですが、微妙に訴求している層が違い、オタクというほどではないんだけど懐かしくて可愛いものが好き!あの頃のキラキラした気持ちを思い出したい!と思っている普通の女子層狙いのため、基本的に自宅で使うグッズや、化粧ポーチの中にさりげなく紛れていても不思議じゃないものが多くグッズ化されています。もちろん、隠れオタをしている社会人女子も、会社でバレることなく好きなものに囲まれて仕事できる心の安定剤的な使い方もできます。ドライヤーのような自宅向けグッズなど、誰に見せるわけでもないのに高いお金を払っても欲しいと思ってしまうのは、グッズそのものではなくそのグッズに憧れを抱いていた頃のキラキラした気持ちを買っているのです。誰かに見せたいわけではなく、自分自身が日々の生活に笑顔になれる要素を取り入れたい。そのグッズを見るだけで毎日少し笑顔になれる。キラキラした気持ちを思い出せる。それこそが、アニメや漫画が持つ本当の魔法なのかもしれません。