今回は、4月23日(土)より、全国で上映された劇場版アニメ「響け!ユーフォニアム」の見どころに関するレビューになります。内容は総集編のためネタバレの心配は少ないとは思いますが、もしTVシリーズを見ていないという方は、ネタバレになるかもしれませんのでご注意ください。
TVアニメシリーズ「響け!ユーフォニアム」は、2015年4月から放送されたアニメで、制作会社は、京都アニメーションになります。京都アニメーションでといえば、「涼宮ハルヒの憂鬱」や「らき☆すた」、「CLANNAD」などの人気作を数多く手がけてきたアニメ会社です。その中でも、2009年4月に放映された「けいおん!」は、1期、2期、劇場版と続いた大ヒット作になります。ヒットした要因としては、等身大の女子高生らしい仕草であったり、アニメーションと音楽との一体感、各キャラクターのスキルに合わせた音楽のクオリティーや再現性によって、幅広い層が深夜アニメに興味を持つきっかけとなった作品となっています。そして今回の「響け!ユーフォニアム」は、「けいおん!」以来の音楽を題材とした作品です。
劇場版に求めるもの
テレビの録画機能やタイムシフト機能、インターネットなどの動画配信が発達した今、劇場までわざわざ足を運び、お金を払って観たいと思うためには、そのアニメに飛び抜けていい部分がある必要があります。今回のように総集編であれば、TVシリーズを見ている人にとっては、ストーリーがわかっているため、アニメーションや音のクオリティーが飛び抜けて高くなければなりません。
最近の劇場版アニメでのヒット作はといえば、「劇場版 ガールズ&パンツァー」ですね。累計興行収入19億円、累計動員数114万人突破(4月22日付)となっておりまだまだ上映が続いております。そしてこちらの作品を見た人が必ずいうセリフが「ガルパンはいいぞ」です。このセリフがtwitterなど多くの媒体でつぶやかれ、この公開によっても興行収入や動員数が伸びている要因となります。ただ根本的な要因は、アニメの中にあります。こちらの作品の特徴は、とにかく出てくる戦車へのこだわりが高いということです。実際の戦車から出る走行音や発射音などを使用したり、車体の外装のみならず、内装までも忠実に再現したり、機種には、ほとんど資料の無いため、その国の軍と交渉して、スケッチの資料を貸してもらうなど、細部まで忠実に再現した作品でした。そのため、アニメ好きのみならず、戦車好きのファンからも評価を受け「ガルパンはいいぞ」というフレーズになりました。
(画像配信元:公式サイトより)
今回の劇場版は、総集編のため、ストーリーに関しては、メインとなるストーリーのみの抜粋となるため少々駆け足という印象がありました。しかし、その点を上回るほど楽器へのこだわりは高いものがありました。
(画像配信元:公式サイトより)
1点目が、出てくる音の再現性です。けいおん!の時同様、指の動きに合わせたメロディーはもちろんですが、こちらの吹奏楽部がもともとそんなにうまくなかったということもあり、最初は音が全く合わなかったり、リズムがまちまちだったり、音を外したりなどがありました。実際は、プロの人が音を撮る時に演奏しているため、わざと外すということはかえって難しかったのではないでしょうか。また、けいおん!の時とは違い、数十人単位での演奏なのでさならなる苦労があったでしょう。その中でも、シーンが進む中で、上達が目に見えてわかるという技術は感動しました。
2点目が、楽器の描写です。ユーフォニアムがタイトルにあるだけあって、管弦楽器が多く登場します。管弦楽器の多くは、滑らかな金属のため、光を反射します。今回の劇場版ではそのような光の反射が、TVシリーズよりも忠実に再現されており、楽器に周りの風景が映りこむというところまで表現されていました。特に印象深かったのが、ヒロインの黄前久美子が吹奏楽部のユーフォニアムを手に取った時、ユーフォニアムの表面に自分の顔が映りこむシーンがありました。加えて、ユーフォニアムの表面が曲面のため、その歪みも表現されていました。そしてもう一つ印象深かったシーンがサンライズフェスティバルのシーンになります。TVシリーズでは、ほとんど楽器がクローズアップすることはありませんでしたが、劇中では、行進のシーンがさらに追加され、さらに管弦楽器類の表面に路面や空の風景を写り込ませるということまで描かれていました。そのような描写は他にもたくさんあり、楽器への写り込みという点もこちらの作品の大きな魅力の一つとなっています。
他にも新作カットが多数あり、また作画アニメでは苦労しそうなよく動くシーンが多数登場し、見ごたえのある編成となっていました。もしご興味がありましたら劇場まで足を運んでみてはいかがでしょうか。