短期決戦でも心にゆとりを
就職活動山場を迎え、そろそろ焦り始めている学生の方々もいらっしゃるかと思います。転職活動中の方も、短期決戦で望まれていることと思います。「時間が無いかもしれない」と焦る気持ちも分かりますが、どうぞ落ち着いて就転職活動をなさってください。朝遅刻しそうになっている時、財布や家の鍵を焦って探しても見つからず、会社に遅刻するという電話を入れて、少し落ち着くと意外なところから出てきたりしますよね。人間は焦ると目の前のことに集中しすぎてしまい、長期的な視点を得にくくなってしまいます。それは本人のIQや知能のレベルだろうとお思いになる方もいらっしゃいますが、ポジティブな心だろうがネガティブな心だろうが、気持ちが全面に出てしまっている「情動優位」の状態の人間は、いくらIQが高い人であっても一時的に低下してしまうということが認知科学の領域で言われています。焦る気持ちは物事を早く終わらせたい時に出てくるネガティブな心です。「就職、転職活動が失敗したら人生が終わる!」と思っていればいるほど「焦り」が出てしまいます。そういう人は今回ご紹介するような、就職活動中の学生を餌にする悪徳商法に注意が必要です。
不安な心を利用する悪徳商法
随分前の記事ですが、昨年の就職活動で選考解禁の8月から1ヶ月ほどたった時期あたりに報道されたJ-Castニュースの記事が参考になるのではないでしょうか。
J-CASTニュース:「就活に役立つ」と占いスクール勧誘 悪質商法が跋扈、「関係者を紹介する、と100万円要求」
https://www.j-cast.com/kaisha/2015/09/04244419.html
(引用開始)
就活生などを狙った悪質商法への相談は、リーマン・ショック後で就職率が低かった2009年度に347件。就職氷河期にあたる2010年度が200件、11年度129件、12年度173件、13年度は147件で14年度が130件。2015年度は9月3日までに45件の相談が寄せられている。2009~14年度の契約金額の平均は、約38万円にのぼる。
(引用終わり)
リーマン・ショックの年がダントツで多いものの、毎年100件以上の相談が国民生活センターに届けられています。町中のキャッチセールスと同様にアンケートに答えてから事務所へ案内されたり、「友人を紹介すれば報酬を貰える」というマルチ商法さながらの就活塾の存在などが報告されています。実は筆者である私も去年、友人から「就活塾」へ誘わていますが、事前にこのような情報を知っていたので丁重にお断りさせていただきました。調べてみると案の定黒い噂の立っている就活塾でしたから、友人から誘われた場合でも一旦待ってもらい、健全な運営をしているか調べ、実際に自分に必要かをよく吟味してから承諾をするようにしましょう。
中には売り込みのスタッフに囲われて、「今支払いができないのは決断力がない証拠。そんなんじゃどこも受からない」などといった事を言われ、結果商材の契約に応じてしまったりする例もありますから、「自分は大丈夫」と思う前に、まず警戒し、次に周囲の人に相談することを忘れないようにしてください。
騙されないために必要な3つのこと
こうした商法の餌食にされないために日頃から心がけて欲しいのは、
1.自己肯定感を下げないこと
2.就活に失敗しても人生は終わらないので焦らないこと
3.あらゆる買い物において、「本当に必要なものか」と自問自答すること
の3つです。
自己肯定感や自己効力感などが下がっている状態ですと、セールスマンが優位になってしまいます。自分ではどうにもできないと思っている人ですから、そういう人たちに対して「この商品を購入しなければ就活できない」と声をかければ良いので、思うツボです。
私の就職活動関係の記事では何度も書いていますが、就職活動が失敗してしまったからといって人生が終わるわけではありませんし、今後の人生が苦労するわけではありません。そもそも大学進学率は2013年の段階で50%ほどです。同世代の半数が大学に入っていないのです。だから大学に行っているあなたはすごい!というわけではもちろんありませんが、同世代の半数の人が大学に行かなくても社会でしっかり働けているのです。万が一就職活動に失敗して行く宛がなくても、アルバイトで働きながら就職活動はできます。ですから第1志望に落ちてしまったらどうしようではなく、今のうちからこの企業は面白そうだと選択肢をどんどん増やすことが大切です。
最後に、ものを買うときに限らず何かお金をつかうときには必ず「自分にとって必要か必要じゃないか」を考える癖を付けておけば、安易に騙される可能性は少なくなるのではないでしょうか。こうした商法の入り口は、友人からの勧誘、もしくはキャッチセールスなどですが、この段階で断らない場合、うっかり契約してしまう確率がものすごく増えます。社会心理学者のロバート・チャルディーニによれば、人間には「一貫性ある人間だと思われたい」という心理が働くことがあり、一度承諾したことは、なかなか変えようと思ってもできません。(影響力の武器参照のこと)必要か必要じゃないかということを瞬時に判断できれば、中途半端な態度をとって押し切られることもありません。
もしその入り口の段階で「話だけでも」と承諾してしまうと、時間をかければかけるほど、セールスマンにどのような人間かを探られ、巧みなテクニックによって商品の購入に対して承諾をさせようとしてきます。「決断力がない。このままでは就職できない」など、自尊心と焦る心にどちらもダメージを与えるような言葉も、承諾誘導のテクニックとして有効なものです。この言葉を投げかけられたあとに契約に応じてしまうと、その後も自尊心が傷つかぬように一貫性を保持しようとしてどんどん話に応じてしまうのです。
これから選考が始まり、さらに余裕がなくなってくる頃だと思いますが、以上のことに気をつけて就職活動を無事に乗り切ってください!