アニメゲーム漫画と言えば、オタクカルチャーとして、子供から若者、中高年まで幅広い層に親しまれています。アニメゲーム漫画が売り出されるときに、単独のメディア、作品形態だけではなく、メディアミックスで打ち出す手法は一般的になっています。今回はそのメディアミックスが何を目的としているのかについてのお話です。
アニメでもゲームでも漫画でも楽しめる
メディアミックスの最大の効果は何といっても作品が幅広く展開できることです。オタクと一言で言っても、アニメを好きな人もゲームが好きな人も漫画が好きな人もいます。また、アニメゲーム漫画が全部好きな人もいます。作品を作る以上は多くの人に手に取って楽しんでほしいものです。会社経営上からもより多くのユーザーにリーチした方が売上にも繋がります。また、売上が上がれば、それを次回作の資金としてよりユーザーの面白いと思えるような作品を練り上げて作り上げることができます。
だからこそ、漫画作品を原作としてアニメが作られたり、アニメ化に合わせてゲームが開発されたり、ゲームのリリースに合わせて漫画が作られたります。どれか一つだけをメインに楽しんでいるファンにとっても、自分の好きな作品がアニメ化、ゲーム化、漫画化されればそれも楽しみたくなってしまうのがオタクの性です。これをマーケティング手法と言ってしまうことは簡単ですが、オタクは単純なマーケティング思想に基づいたメディアミックスには敏感にそのにおいを察知するので、その点には留意が必要です。
メディアミックスありきで作品を作るほかに、アニメなりゲームなりマンガなりの作品が大ヒットして後からメディアミックス的に多方向に展開していくパターンもあります。というよりは、本来的には、こちらの流れが多くなってきたことから、ならば最初からアニメゲーム漫画の同時展開で始めた方がいいのではないかという考えが、メディアミックスの根底にあります。
メディアミックスが短期的に爆発的に認知を広めるためのマーケティング的な手法だと考えるのは間違いではありませんが、アニメゲーム漫画の真骨頂はメディアミックスのその先にあります。例えば、ポケモンで考えてみましょう。ポケモンは1996年にゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター 赤・緑」の発売からスタートしました。今から20年前のことです。今から20年以上前の作品にも関わらず、いまだにゲームの続編やジャンルの違うゲームになったり、スマホゲームやイングレスにも進出し、アニメ化、グッズ化も盛んにされています。株式会社ポケモンの公式発表によると、ポケモンの市場規模は全世界で4.6兆円以上とのデータがあります。これだけの数字をアニメやゲーム、漫画単独で達成することはほぼ不可能でしょう。
メディアミックスのさらにその先
では、なぜそれを為しえることができたのか。それはポケモンがアニメやゲーム、漫画という枠を超えてその作品世界そのものを作り上げることに成功したからです。例えば、ピカチュウと言った時に、ゲームで戦っているピカチュウやアニメで動いているピカチュウよりも先に、ピカチュウというキャラクターそのものがイメージされます。それは、ポケモンがアニメやゲームではなく、世界として頭の中に存在しているからです。そしてそこまでの世界観を作ることができると、新しいゲームになっても、アニメになっても、グッズになっても、CMで使われても全く違和感がなくなります。メディアミックスはその世界観の上で展開されてこそその真価を発揮するのであって、世界観なしに設定やキャラクターだけ表面上共有させても作品の持ち味を活かしきることはできません。
2016年はパズドラのアニメ化、漫画化、コンシューマーゲーム化が発表されました。パズドラリリースから4年以上経ち、「時間がかかった」という印象を持った方も少なくないかもしれませんが、むしろ十分な人気があったからこそ時間をかけて世界観を醸成して、満を持して動き出したということも言えるかと思います。メディアミックスを前提とした作品作りを完全に否定するわけではありませんが、一応の連続性だけを確保した単独の作品作りが作品の価値を最大化することには繋がりません。ポケモンやパズドラのように長く愛され続ける結果には繋がりにくいです。最近で言えば、「Fate/Grand Order」も醸成された世界観の上に新たな作品を展開することに成功した例とも言えるでしょう。世界観の醸成は結果論と言うこともできるかもしれませんが、同時にメディアミックスの手法が方法論として強くなってしまっているとも言えるのではないでしょうか。アニメゲーム漫画で作品を作るときは考え方として参考にしていただければ幸いです。