意外と穴だらけのポートフォリオ戦略
今回の記事は2Dや3Dのデザイナーさん向けのものです。就職活動に必須と言われるポートフォリオ。作り方は人それぞれですが、その戦略と言えばあまり練られていないものも多く、採用担当者が「この子は気になるな」と思ってくれるようなポートフォリオを作れていないデザイナー志望者が意外と沢山います。これはポートフォリオの戦略を正しく作っていないため。絵や作品を羅列するだけでは単なる「絵を集めたもの」にしかならず、採用担当者が判断するのは「クオリティ」だけになってしまいます。クオリティさえ高ければ確かに文句はありませんが、上には上がいるもの。クオリティ以外の部分でライバルと闘うには、ポートフォリオの戦略をきちんと考える事が何より大事です。
「伸びしろ」のある人材に見せるために
ポートフォリオを作る人材(特に新卒)は、誰もが最初から完璧ではありません。逆に最初から完璧であれば、既に仕事を見つけて稼いでいるかもしれません。しかし学生時代に大抜擢された記憶はない・・・そんな方は焦らず、自らの伸びしろを見せるようなポートフォリオを作りましょう。心配せずとも、現在世の中で活躍しているクリエイターの大半がこちらのタイプです。伸びしろとは「この子はまだ未熟だけど、育てれば伸びるかも知れない」と思わせる可能性とも言い換えられます。これは絵やCG作品のクオリティからのみ判断するのは難しい。なぜなら作品がどういった方向に向かってゆくかは誰にも想像出来ないからです。その代わり、これからお伝えする内容に注力してポートフォリオを作る事によって採用担当者に印象を残すことができます。採用は、1人採るだけでも会社にとって毎月20万前後、毎年200万円以上の金額が出て行く大きなイベントです。そのハードルを越えてでも採用したいと思われるような人材を目指しましょう。
「基礎力」は必ず見せる
まず、ポートフォリオは目で見て理解するタイプのものが多いので、まず最初に担当者の目に入るのは「作品」です。この時、基礎力についてのアピールをしっかり行って下さい。例えばデッサン。これはどのデザイナーであっても必要とされやすい能力ですが、デッサンが狂っていた場合、もうその次以降のページは見向きもされないという超重要ポイントでもあります。2Dデザイナーでもイラストレーターでも3Dデザイナーでも、採用担当者は口を揃えて「デッサンがちゃんとしていなければねぇ・・・」と言います。1にも2にも、まずデッサン!基礎的なものでも、学校で作ったものでもかまいませんので、必ず数枚入れるようにしましょう。
また、3Dの場合は「シンプルなものであっても形が取れるか」が大事とされるため、誰もが知っているような版権キャラクターでシンプルな形のものを1つ作り、堅実な技量を持っている事をアピールしてみてください。以前、このアドバイスをお話ししたある学生さんは、「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉のおやじをモデリングし、見事志望している会社に入社出来たということがありました。オリジナルキャラなどわかりにくいもの、無理に複雑なものを手がけるよりも、シンプルで誰もがわかるキャラクターの方がポートフォリオでもわかりやすく高評価が得られます。
+αの演出で人事が喜ぶ!
ここまでは基礎力のアピールでしたが、他に人事担当者が「伸びしろ」を見出すのはどこでしょう。それは「制作時間」と「制作バリエーション」です。「制作時間」に関しては、1作品ごとにかけたトータル制作時間を作品の下にタイトルや解説と共に書くようにしてみてください。ゲームでもアニメでも漫画でも、仕事で一番重要なのは「納期までに納品すること」。こだわりが強すぎていつまでも発売が遅れると、場合によっては会社自身が倒産しかねません。ですから、制作時間が長すぎないクリエイターに対しては「色々な仕事を任せられる」という理由で採用担当者はチェックを入れます。
同じように「バリエーション」については、例えば2Dなら塗りや絵柄のバリエーション、版権ものがどこまで再現出来るかなど「手の多さ」、3Dであればトゥーン系からリアル系までできるか、どれほどの質感が表現出来るか、ポリゴン数を減らしてもどこまでデフォルメ出来るかと言った「表現の幅」がキーポイントです。単一的なジャンルに偏ったデザイナーよりは、様々なジャンルができるデザイナーがいつでも重宝されます。担当者のニーズを汲み取ってポートフォリオに組み込むことを忘れないようにしましょう。
プレゼンを授業に盛り込む専門学校
ポートフォリオはどうしても「作品で勝負!!」といった傾向になりがちですが、実社会(アニメゲーム漫画業界)において重要視されるのは必ずしも作品のクオリティだけではありません。クオリティが物凄く高いけれど全然納期を守ってくれない、というクリエイターよりも、クオリティがそこそこでも必ず仕上げる(上に伸びしろがある)人材の方が重宝され、欲しがられるものです。
こういった動きもあってか、最近はデザイナー自身が作品以外でも勝負ができるようにプレゼンの授業をカリキュラムに組み込む学校も出て来ました。プレゼンと言えばプランナーやディレクターが学ぶ仕事でしたが、セルフプロデュースはデザインなどの仕事にもこれからは必要となってくることになるでしょう。ポートフォリオはプレゼンの一部として、あなたをより良く魅力的に見えるものを作って頂く事をお勧めします。