今回は、ラクジョブに実際にいただいた求職者からの質問に答えます。同じような悩みを持っている方はぜひ参考にして就職活動に活かしてください。
質問の内容は要約すると以下の通りです。
「4年制大学のデザイン学科に所属しています。After Effectsを2年間勉強しています。After Effects以外のソフトはほとんど使えません。After Effectsもプロと比べると見劣りしてしまいます。デッサンや空間デザイン、色相学の知識もありません。遊技機系の映像演出は苦手で、テロップやPV制作が向いているのではないかと考えています。私に合うような会社はありますか?」(YouTubeのURLも併記あり)
ネガティブなことを書かない
まず早速ツッコミですが、対企業でネガティブな言葉は使うべきではありません。これはあくまでラクジョブへの質問だったので、実際に応募企業に送る履歴書にどう書いているかはわかりませんが、「〇〇はできませんが、」や「まだまだ未熟ですが、」といったことは書くべきではありません。日本には「謙遜が美徳」という価値観があります。しかし、企業はできない人や未熟な人にお金を払いません。
自分がお金を払う立場になった時を想定してください。パスタが作れないイタリアンに行きたいと思いますか?「まだまだ未熟な」お寿司屋さんに行きたいと思いますか?もし謙遜する料理屋さんがあったとしたら、お客さんが入らずにたちまち閉店してしまうでしょう。お金を払ってもらう立場なのであれば、お金を払う側の人に「これなら満足してお金を払える」と思わせる必要があります。このことを理解せずに会社に就職できてしまった人はむしろ不幸です。いざ働き始めてから、「仕事」に直面して、ギャップに悩み、早期離職してしまいます。
実際、とあるCGアニメ制作会社の社長さんにお話を伺った際には「給与を払うからには私(社長)よりも優秀な人でないと困る」と言っていました。その方は、CGアニメ業界で20年以上のキャリアがある大ベテランです。それよりも優秀でなければお金を払う価値がないというのは、例えるのであれば、レストランで料理を食べた時に「これだったら俺の方が美味しい料理を作れるわ」と思わせないでほしいということです。これは業界問わず、お金を払う側とお金をもらう側の極々基本的な関係法則です。新卒の学生でこのことをわかっていなかった人は今すぐ理解してください。本題からずれましたが、これはあなたがこれから入社する会社から当然要求されることです。
では、本題です。まずはAfter Effectsで何ができるのかを押さえてください。
まずAfter Effectsは、アニメ業界で使われています。アニメ制作には、撮影という工程があります。撮影は、動画を繋ぎ合わせて映像にする作業です。アニメは、動画という1枚1枚の絵を繋ぎ合わせることで、あたかも本当に動いているかのように見せています。アニメを一時停止させれば、それが1枚の絵であることが見えます。かつては、その1枚1枚の動画を1枚ずつカメラで実際にフィルムに焼き付けていたので、「撮影」と呼ばれています。今は全てAfter Effectsを用いてデジタルで撮影しています。
次に遊技機(パチンコ・パチスロ)業界があります。After Effectsの作業量が多いのは間違いなく遊技機業界でしょう。遊技機業界がAfter Effects経験者を求めたから、専門学校や大学のデザイン学科でもAfter Effectsを積極的に学生に勉強させるようになったと言っても過言ではありません。遊技機の映像演出は、それ以外の映像演出に比べて圧倒的に「派手」です。パチンコ台・パチスロ台の大音量と大光量に見合うだけの見栄えが求められます。その見栄えは主にエフェクトによって演出されます。業界関係者からはしばしば「エフェクトが命」と言われるくらい遊技機映像演出に欠かせない存在です。
また、質問でも言及されているように、テロップやPVにもAfter Effectsは使われます。すでにある素材をAfter Effectsを用いて動かして映像にします。モーショングラフィックスとも呼ばれ、ゲームのOPやPV、あるいは企業PVでよく用いられます。確かに企業の採用担当者から未経験でも問題ないと一番言われる募集でもあります。しかし一方で、最もセンスが大切とも言われるのがモーショングラフィックスです。クライアントからは、曲とイメージを素材だけを渡されて、細かい指示もないまま「あとはよろしく!」と言われたります。それだけ曖昧なオーダーからでも満足度の高い映像を作り出せるかどうかに「センス」が問われます。
狙い目はゲーム業界
ここ1年ほど企業から「2Dのモーションデザイナーが欲しい」というオーダーを聞くことが多くなりました。「パズドラ」の大ヒットからスマホゲーム市場は拡大を続け、今日現在も一昔前のコンシューマーゲーム顔負けのスマホゲームが日々世に出ています。ガラケーのソーシャルゲームからスマホゲームへ舞台を移したことの最大の変化は、デバイスの性能の向上です。3Dの本格アクションRPGも簡単に遊べる時代になりました。
しかし、2Dイラストをメインのグラフィックにしていたソーシャルゲームは、3Dとは別の方向へも進化を遂げました。それが2Dのモーション、アニメーションです。ガラケーのゲームでもFlashを用いたソーシャルゲームは一般的でしたが、スマホゲームだと、Live2DやSpine、SpriteStudioが主な2Dモーション制作ツールです。ツールが多様化していることからもわかるように、2Dアニメーション自体まだ標準化されていません。今のところ一番大切にされていることは「2Dで動かすことに興味があるかどうか」です。
だからこそAfter Effectsの使用経験のある人を求めています。2Dデザイナーと2Dモーションデザイナーは似て非なるものです。社内に2Dデザイナーはいても、2Dモーションデザイナーはいない会社がまだまだ多いです。絵を描く、素材を作ることと素材を動かすことは本質から違います。だから「動かす」ことに興味のある人は新たに採用する必要があります。動かすことに興味がある人であれば、実際のLive2Dなどのツールの使い方は入社後に覚えられます。
さらに言えば、1、2年後には2Dモーションデザイナーの採用市場も一旦の落ち着きを見せるだろうことからも今年が一番の狙い目でしょう。「ゲームがどうしても嫌だ」というのであれば、もちろん希望に近い業界を探していただければと思いますが、「動かすことに興味がある人」であれば、ゲーム業界をぜひお勧めしたいです。ぜひご自身の就職活動の参考にして、良い会社を見つけてください。