アニメ 制作進行の仕事 未経験者・経験者に求められる仕事の違いとは

アニメ業界への憧れは誰しも持っているもの

アニメが好きで、アニメ業界に入りたいと考えている人はラクジョブの会員の中にもたくさんいるでしょう。私の最初に影響を受けたアニメは『シティーハンター』でした。弾丸を肉眼で捉えて軽々避けたり、依頼人の女性を優しく力強くフォローしたりと二枚目要素もありつつ、すぐにもっこりしたりする変態三枚目要素も持ち合わせた冴羽リョウは、「かっこいいけどおもしろい」という私の理想のタイプの原型を作り出し、当時幼稚園児だった私にとっても理想のヒーローとして、大人になったら冴羽リョウと結婚しようと思っていました。

その後、幼稚園女児の間で流行っていたセーラームーンを見始めてからはセーラームーンの虜になりました。銀水晶もキューティームーンロッドも持っていましたし、主人公のうさぎちゃんのように髪を伸ばしてツインテールにして幼稚園に通っていました。冴羽リョウもセーラームーンも現実にはいないと知ったとき、次になろうと思ったのはアニメを作り出す人でした。しかし、アニメを見ている側の子どもがわかるのは、アニメを作り出す=絵を動かしてみせるということ。当時の私には一生懸命新作アニメの絵柄をマネしてイラストを描くことぐらいで、それをどう動かすのかはもちろん、どのようにして毎回原作漫画と近しい絵柄に統一できているのか、どうしてイラストが動いているように表現できるのか、ということもわかりませんでしたし、のちのちそのカラクリを知ってからは、自分にはとてもアニメーターになるのは無理だと諦めてしまいました。

animebehigherhp-239x300アニメーターになるのはハードルが高い上に続かない

アニメは通常1秒24〜30フレームでできています。日本のほとんどのアニメはリミテッド・アニメーションといい、1枚の絵柄を3コマずつ撮影しているので、実際に1秒に必要なのは8〜10枚ほどの絵になりますが、例えば20分のテレビシリーズ本編1話分を作ろうとすると20分×60秒×8枚=9600枚。つまり、毎回1週間に1回の放送のために1話で9600枚〜12000枚ほどの新規の絵柄が必要になると言うことです。私がいくら絵を描くのが好きとはいえ、毎週10000枚前後描くのは至難の業です。もちろん、これを全部1人でやるわけではありません。アニメーターには動画マン・原画マンがおり、動画マンだけで考えれば月産500枚ぐらいが平均と言われています。じゃあ、月産500枚原作の絵柄に似せた上でクオリティを落とさず納品できるか?というとなかなか難しいものがあります。

しかも、1枚あたり150〜200円が動画マンの相場。1ヶ月500枚、死ぬ気で描いても75,000円から10万円の報酬しか出ないのでは東京に住んでいる限り家賃がギリギリ払えるかどうかというライン。これでは業界に飛び込む前に尻込みしてしまいます。アニメーターは、なれるかなれないかでいったら、技術的には入ってから作り上げていく部分もあるので空間把握能力があり、描くことが好きであればなれやすい職種ではありますが、賃金と制作枚数が比例するため身を削らないと金銭的余裕のある生活ができないけど、身を削って賃金を上げても今度は時間的余裕が無くなるのである一定の数字を越えると収入と自由さが反比例するという状況に陥ります。こうした情報を先に知っていると、アニメーターになるにはハードルがありますし、いつか老いる自分を考えると長く続けられない職種だと言わざるを得ません。

seisakushinkou

制作進行はハードルが低いが続けられるかが勝負

その点、制作進行はアニメーターに比べて未経験者でもなりやすいのが特徴です。『キルラキル』などで有名なトリガーの舛本和也さんが言うには、制作進行に求められるスキルは①場の空気が読めて自分から行動(処理)できる能力。②体力③まじめさ④アニメが好き。とのことで、専門的な技術は必要有りません。要はフットワークと気遣い、業界への愛です。しかも、平均月給は20〜25万ほどで、正社員契約であることが多く、低賃金で早く美しくたくさん描くことが要求されるアニメーターと比べると、いかに同じアニメ業界の中でも待遇が違うかということがわかります。

しかし、なぜ制作進行がこんなにも好待遇なのかというと、アニメーターが個々人の枚数との戦いであるのとは対照的に、制作進行が個人VS他人(他社)との戦いを余儀なくされ、全職種ナンバーワンの転職理由である「人間関係」とモロにぶち当たっていかなければならない職種だからです。逆にいうと、ご多分に漏れず制作進行のほとんども「人間関係」が理由で退職します。社内の原画・動画マンをせっついたり、言いにくい上の決定を、関わる現場の人間に逐一説明したり、会社対会社の責任を背負いながら両方にとって動きやすい言い方・伝え方を心がけて全てを納期に間に合わせるといった重圧に耐えられずほとんどの人間が入社1年もせずに辞めていくのです。それがわかっているからこそ、会社側もなるべく待遇を厚くして彼らが止まり、クッション役を快く果たしていけるような環境作りを心がけています。

Ambitious businessman looking for his targetアニメーターと違い、続ければ続けるほど仕事がやりやすくなる制作進行

制作進行のいいところは、長く続ければ続けるだけその人としても仕事がどんどんラクになっていくことにあります。動画マン、原画マンなどのアニメーターは毎回必要な話数とそれに応じた枚数が必要なので描けないと意味が無いですし、年を取っても常に細心の絵柄に合わせていく柔軟性が求められるので、ノンストップで自己研鑽が必要ですが、制作進行は続ければ続けるほど人脈が形成されていきますし、いい意味での力の抜きどころが見えてきます。誰が仕事が早いか、誰が空いているか、誰に頼めば伝達が早いか、など経験が引き出しを作るため、どんどん自分にとって動きやすく現場を回していくことが出来るようになってくるのです。

そのため、未経験者から制作進行になるのは、確かに会社のルールや業界のルール、個人個人の感情に振り回されて疲れることも多いですがその最初の時期を乗り切ってさえ仕舞えば、どんどん仕事がラクになり、正社員で人並みの収入も得ることができるのです。さらに、経験者であれば尚更求められるのは若さとかがんばりとか体力的な部分と言うよりも、その培ってきたネットワークと経験です。アニメ業界では制作進行を続けてきたというだけでメンタルの強さと体力と人柄については保証されたようなものなので、あとはその経験をどのようにいかしてもらえるかが経験者に求められるところであり、そのような下積みがあって入ってきてくれる経験者進行には相応の敬意と報酬が支払われます。現に、制作進行を続けてきた人がアニメ会社の社長や2番手になるケースというのはかなり多く、『ガンダム』などの有名アニメで不動の地位を築いている「サンライズ」の内田社長も制作進行出身です。自分自身の続けてきたことそのものが評価されるということはこの上なく幸せなことです。

Animation word cloudアニメ業界と一口に言っても

アニメ業界と一口に言っても、色々な会社があります。前述の会社は主に普通の頭身のクオリティ高めな人気テレビシリーズアニメを手がけている会社を想定していましたが、動物ものとか子ども向けのように線画少なく激しいアクションや繊細な描写を必要としないアニメを作っている会社であれば、更に必要名動画枚数は減りますし、その分関わる人間も減るので制作進行としても仕事がしやすくなります。

また、テレビシリーズのように流行に乗っていてかつ人気で作画クオリティも高いアニメに関わっているにもかかわらず、比較的人間関係のトラブルも起きにくく安定した仕事が出来る会社もあります。それは、テレビシリーズではなくテレビシリーズのオープニングアニメやPVなどのショートムービーだけを専門的に請け負っているアニメ会社です。そもそも作るムービーが短い尺のものなので、少ない枚数で集中して良いものを仕上げると言うことに特化しています。経験者制作進行として、今までの人脈とネットワーク、仕事のノウハウを結集して良いものを作る事に特化していきたいと考えているならば、こういった会社が一番オススメです。

現在ラクジョブでも募集をしている会社がありますので、ぜひ応募して見てください。

ポイント・ピクチャーズ 経験者制作進行募集
https://raku-job.jp/index.php?op=offer_detail&id=563300ae3ec0d0157&pos=0