【業界徒然コラム】実写化は漫画ビジネスの中心になるの?

t640_983682毎年、次々と発表される実写映画。去年2022年も、xxxHOLICや鋼の錬金術師のような懐かしの作品から、マイ・ブロークン・マリコやカラダ探しといった最新作まで実写が相次ぎました。
かつては「不自然」「向いてない」と言われた実写化も、現在では抵抗が少なく、実写化発表が歓迎されるムードもできつつあります。
それでは実写化は大きなビジネスモデルになっているのか…?というと、実はそうとも言えません。

コロナの影響で大きな打撃を負ったものの、邦画市場は増加傾向にあります。
とはいえ2019年から2021年は3年連続で邦画アニメが1位、コロナで厳しかった2020年も鬼滅の刃のヒットがあり、日本の歴代興行収入ランキングを19年ぶりに塗り替えています。
この歴代興行収入ランキングも、3位(タイタニック)を除くとすべてがアニメ映画。つまり、日本国内の映画産業で強いのは未だにアニメ映画で、実写化映画が興行収入として強い、という話はまだ多くないのです。

それではなぜ漫画の実写化が後をたたない、どころか増え続けているのでしょうか?ここには出版社に限らず最近のコンテンツビジネスに関わる人の思惑が見えてきます。

現在、コミック市場(紙・電子含む)は26年前に比べ1.15倍となっており、特に電子市場においては更に成長が見込まれています。これまで漫画をあまり読まなかった人がコロナ禍などの影響でWEBコミックに手を出しやすくなったのも一因でしょう。この「今まで作品に触れてこなかった人が作品を知る」というのが、漫画ビジネスにおいては最も大事なことです。

実写映画化で多く話題にされるのは何よりキャストですが、これはキャストのファンをそのまま漫画のファンとして取り込みたいという理由が一番大きなものです。アニメ化の場合、声優のファンを取り込むことができますが、「漫画にあまり触れていない」という層からは少し外れます。最近の舞台化傾向も、映画に比べると低予算でファンを取り込めるスキームと言えるでしょう。つまり、「ビジネスとして実写化が魅力的」というよりは「原作のファンを増やし、原作の売上を上げるためのマーケティングに実写化が最適」といった選択肢だと考えられます。

令和2年に経産省が発表したデータでは、日本のコンテンツ市場の存在感が世界で減少傾向という結果が出ていました。調査当時はコロナも無く、その後のデータには変化があったと思われますが、日本のコンテンツ力を高めるために出版社や映像制作会社が期待されているのは確かでしょう。
世界的にも映像メディアの作品が市場規模を増やしており、海外でも実写化コンテンツの力は強くなるように予想されています。

日本国内でのみ人気を獲得できる「実写化」や「舞台化」は、国内のパイを取り合う状況になってしまう可能性もあります。もっと海外にもファンを増やすための展開にも期待したいところですね。

参考:
映画業界の動向や現状、ランキングなど

日本のコミック市場:21年の販売額推定6759億円、2年連続で過去最高を更新

コンテンツの世界市場・日本市場の概観

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