「3Dのゲームが簡単に作れる!」との評判からあっという間にスマートフォン向けゲーム開発市場を独占したゲームエンジン「Unity」。ユニティ・テクノロジーズによって開発されたこのゲームエンジンは、iOS、Android、ウェブブラウザ、PlayStation 3、PlayStation 4、PS Vita、Xbox 360、Xbox One、Wii UそしてVR/AR向けの開発にも対応し、マルチプラットフォームで開発が可能。C#、JavaScriptで書いていくことになりますが、とにかくいちばんの特徴は「3Dのゲームが簡単に作れる!」これに限ります。今やスマホ向けにゲームアプリを作るプログラマーには必須ツールになっています。
3年前、パズドラが大ヒットして、App Store、Google Playのセールスランキングの1位になったぐらいから、Unityの名前を密かに聞くようになりました。ゲーム開発各社の熟練のプログラマーが触ってみたところ、「スマホで3Dのゲームが作れる!」ということで、こぞって技術研究に乗り出しました。当時スマホ自体もちょうどデバイスとして着目され始めたぐらいです。かつてスーファミ2D全盛期の時代にプレステが登場し、ポリゴンを使って3Dのゲームが作れる!FFも3D!ドラクエも3D!と各社が3Dに着目した時とイメージが重なるのは私だけではないはずです。今のスマホの性能はちょうど昔のPS2並のスペックですし、ストリーミング通信を使用するクラウドゲーム専用ですが、PS3でリリースされたFF13もブロードメディア株式会社からスマホアプリとしてリリースされています。4Kに対応したスマホやPS4のゲームをスマホでプレイできるPS4 Remote Playも登場し、スマホの技術革新のスピードには目覚しいものがあります。
ラクジョブもすでに8年以上、アニメ・ゲーム・マンガに専門特化したニッチな求人サイトとして、800社以上の求人採用をお手伝いしてきましたが、1、2年前から急激に「Unityのプログラマーを採用したい」という声が増えてきまいた。それも最初の方は「Unityの経験者」だったのが、段々と「専門学校でUnityを使ったことがある人、独学でもUnityで作ったことがある人」、「プログラミング経験者ならとりあえずOK」とどんどんハードルが下がっています。Unityの利便性が向上していくにつれて、より手軽にUnityでゲーム開発できる環境が整っています。しかし、いくらUnityで簡単にゲームが作れるようになったからといって、ゲームらしきものを作れることとユーザーが求めるゲームを作れることは全然別物です。確かに、Unityはちょっと触れれば誰でも使えるようになるので、開発会社もそれほど高いハードルは設定していません。しかし、それはスマホゲームの市場がどんどん伸び、第二のモンスト、白猫を狙うゲームが増えているからで、市場がゲームを作ること求めているからに他なりません。確かに2015年、オンラインプラットフォーム(スマホ/タブレット向けゲームアプリ、フィーチャーフォン、PCオンラインゲーム)の市場規模は13%増の7886億円で好調ですが、2013年は前年比141%を記録しており、成長率は鈍化しています。また、少子化と共にスマホゲームのメインターゲットである若年層の人数も減少することを考えると、いつまでもスマホゲーム頼りというわけにもいきません。ゲーム一本一本に質が求められるようになれば、それだけ「ちゃんとしたゲーム」を作ることが求められるようになります。
現にラクジョブでも、「Unityは使えなくても教えるから大丈夫。しっかりC++でゴリゴリコードを書いていたような人の方がいいという声も増えてきています。元々業界への入り口が狭い中で今はUnityが市場を掻きまわせているおかげで一時だけ、専門学校卒、新卒、第二新卒、未経験者という層の受け入れが増えていますが、それで業界に入れた事に安心していると、次に始まるのはUnity淘汰の時代です。Unityだけ使えてもしょうがないと言われる事になってしまいます。現に、かつてC++でバリバリコンシューマーゲームの開発をしていたプログラマーはなんとかUnityを覚えたり、社内にはいられなくなって派遣で仕事するようになったり、C++でできる仕事(例えば遊技機業界でのパチンコ・パチスロ開発)に移ったりしています。プログラミングの仕事ができればいいというのであればそれでも構わないかもしれませんが、プログラミングがしたいからという理由でわざわざ好き好んで平均給与も低いゲーム業界を選んでいる以上、「ゲーム業界で仕事がしたい」という理由でゲーム業界を選んでいる人が多いでしょう。ちなみに技術系(IT/通信)のSE・プログラマが平均年収468万円に対して、クリエイティブ系ゲーム関連の平均年収は368万円と、100万円の差があります(DODA2015調べ)。
では、ゲームプログラマーとして生き残るためにはどうすればいいのか。業界に就職して仕事を始めることができたのであれば、まず第一段階はクリアです。そのあとは常に最先端を追い求め続けてください。入ってすぐの頃はわからないことだらけかもしれませんが、そのわからない部分にこそ成長のヒントがあります。わからないことを面倒だからといって後回しにし続けると圧倒的に成長のスピードが遅くなります。聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥と言いますし、失敗したとしても自分の責任でカバーできるのであれば問題ありません。また、現場の人間だからといって社内にこもってしまうのもよくありません。外の世界を見て外部の技術者との交流を深めることがブレークスルーのヒントになることもあります。また、外部とのコミュニケーションはある程度の役職以上になれば職種問わず必要になることなので、機会があれば積極的に外に出ることをお勧めします。Unityは確かに強力な武器ですが、自分自身の地力を底上げしないことにはうまく武器も扱えませんし、いざ武器の耐久が落ちた時に一気に使い物にならなくなってしまいます。そうならないよう、Unityからゲーム業界に入ったプログラマーには日々の鍛錬で自分を鍛えて良質なゲームを開発できるプログラマーになってほしいと考えています。