最近、複数のゲームパブリッシャーさんと話をする機会があり、色々な考えを聞くことができたので、今回はそれらの印象をまとめてお伝えしたいと思います。
IPを活用しようとするパブリッシャー
近年IPを活用したスマホゲームが増えています。その背景には、スマホゲーム市場の成熟化とそれに伴う新規ゲームの参入の難しさがあります。3,4年前であれば一本のスマホゲームが大ヒットする可能性も大いにありました。パズドラもそのゲームとしても面白さもさることながらタイミングや運も相当に影響していたはずです。事実、その後パズドラのヒットを受け、パズドラにひねりを加えたようなゲームもたくさん登場しましたが、ついぞパズドラを超えるゲームにはなりませんでした。
近年のヒット作と言えば、「Fate/Grand Order」「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」などが挙げられますが、これらもFateシリーズ、マイドルマスターというIPありきのゲームでした。コンシューマーゲーム時代からIPを活用することに長けていたバンダイナムコエンターテインメントさんがここに来て勢いを増している背景にはやはりIPものがヒットになりやすいからということもあるのでしょう。
なので、パブリッシャーさんからも、「IPを活用したスマホゲームの開発実績のあるゲームデベロッパー」や「IPのテイストに似せた絵を描けるイラスト制作会社」などの需要は高まっています。これは今すでに起こっている現象ではありますが、デベロッパーさん、イラスト制作会社さんであれば、このIP活用のニーズにどう応えていけるかが今後の勝負になるでしょう。
IPを育てるパブリッシャー
一方で、IPを活用したスマホゲームではなく、1からオリジナルのスマホゲームを作ってそれを自分たちのIPにしようとするパブリッシャーさんも多くいます。パスドラ、モンスト、白猫、黒猫などのゲームはそれらの代表作とも言えるでしょう。IPを1から育てて自社のオリジナルのIPを作り上げることは、ゲームが心から大好きで自分のゲームを世に出すことを夢見て会社を立ち上げた社長にとってはそれこそ大願と言えるものでしょう。しかし、ビジネス的な側面でいえば、難しさもあります。
すでにIPがあるのであれば、IPに固定のファンがいます。ドラゴンボールのファンはドラゴンゴールのスマホゲームが出れば注目しますし、ポケモンのファンはポケモンのスマホゲームが出れば遊んでみようと思ってもらえる可能性は高いです。しかし、0からスタートして、スマホゲームがそのIPの最初の1歩になる場合、まずそのIPに対するファンを育てることから始めなければなりません。当然、ユーザー数も伸びにくいですし、課金率や課金額も悪くなるでしょう。端的に言ってしまえば、収益化が難しくなりますし、黒字化するまでに時間がかかる、あるいは黒字化できずにクローズする可能性が高くなります。
IP活用ゲームに飛びつくゲーム業界全体のリスク
では、ゲームのビジネス的な側面を優先してIPを活用したゲームだけ作り続ければいいのでしょうか。確かにIPを活用したゲームの方が収益化しやすいです。ビジネス的なリスクは減少します。しかし一方でIPにも限りがあります。人気IPをゲームにすればそれだけ初めから多くのファンの注目を集めることができ、ビジネス的に成功しやすいのは事実ですが、そうやって人気IPから次々とゲーム化していった先には、ビジネス的に旨味のあるIPが使い尽くされる未来しかありません。それでもビジネスを優先させるのであれば、同じIPを使った別ジャンルのゲームやパズドラ2、パズドラ3などが市場を埋め尽くす未来しかありません。
オリジナルゲームでヒットを出すことは難しいです。そしてその難しさはこれから先どんどんとハードルが高くなっていきます。しかし、逆に考えるのであれば、今がオリジナルスマホゲームをヒットさせる確率が一番高い瞬間です。これから先難しくなる一方なのであれば今が最善の瞬間です。そして、市場に様々なゲームがあり、スマホゲームオリジナルIPが育っている未来はそれだけ日本のコンテンツ産業全体の可能性を広げ、市場規模を拡大させるためにも必要なことです。
IPを活用するという選択肢を否定するわけではありませんが、IPを育てるという発想とその発想を共有してスタッフたちがゲームを作る、企業間を超えてゲームに対して愛情を持って取り組むこともまた大切なのではないでしょうか。ビ・ハイアではそのために業界の経営者のみを集めた200名規模の大規模交流会も開催しています。ゲーム業界の発展のため、ぜひゲーム業界の経営者の方々に参加していただいて、情報交換、意見交換、ゲーム開発のためのパートナー探しの機会にしていただければと思います。