
「盗まないAI」とアニメ業界の現在をお届けする記事、前編はAIの可能性について多くの反響を頂きました!
後半は、実際に現場で手を動かすスタッフの方へのインタビューと、AIアニメ会社の最先端であるCreator‘s X社代表からのお話をお届けします!
目次

AIは“革命”だと思った
最初にお話を伺うのは美術監督を努めている大石樹さん。
スタジオちゅーりっぷ出身、ガールズ&パンツァー劇場版での美術監督補佐を始め、多くのアニメ・ゲーム作品に関わっています。現在はCreator’s X社が立ち上げた背景美術の「スタジオSAIGA」に、美術監督として就任しています。
描画AIが発表された時、クリエイター側の反応は様々でした。ネットでは否定的な意見も目立ち、SNSでは多くの議論を呼んでいます。
美術制作者として10年以上のキャリアを持つ大石さんは、最初にAIを知った時に抵抗は感じなかったのでしょうか?
大石樹監督(以下「大石」)「抵抗はありませんでした。むしろ、これは業界が変わるツールだ、革命だとすら感じました。その理由として、現在の背景美術業務に「とにかく量が必要」という側面があるからです。
アニメ業界はキャラクターを描きたい人が多いため美術スタッフが少なく、その一方で1人がこなせる仕事量も限られていますが、物量が求められると無理な働き方が必然となってしまい、健康を損なうことも業界内では珍しくありません。その問題を解決する手段としてAIはとても魅力的なツールでした。」
大石「抵抗を感じるという人の気持ちもよくわかります。特に趣味として絵の技術を向上させたい人にとって、AIが脅威のように映るのは自然でしょう。
しかし、アニメーターのように絵が生活の手段であり、更には一枚あたりの単価が低く大量にこなさなければいけない、となると状況は違い、できれば短縮できる部分は短縮したいという気持ちが生まれます。
特に自分が在籍しているCreator’s X社のように、個人クリエイターの過去素材を元に作られたAIであれば、抵抗も少なく最適化されたツールとして活躍の場が多いのではないでしょうか。

AIは個人の技術力を奪うのか?
―― 現在は描画のどのプロセスにAIを使っていますか?
大石「ラフから清書をする段階です。
実作業の場合、ここが一番時間を取られるため短縮できるのはありがたいところです。自分のデータを読み込んだAIなので、清書の段階で自分らしい絵ができあがってくるのが嬉しいですね。
他に、イメージボードや絵コンテなど、表に出ない段階の作業でも使われることがあります。今後ももっと活躍の場は広がるのではないでしょうか。」
―― 制作過程の中でAIの出番が増えると、今後個人の画力や技量が下がってゆく危険性もあるのでしょうか。
――あくまでAIは補助であり、クリエイターの個性は必ず表出すると。
大石「はい。AIで作られた絵でも、仕上げの段階で人の手が入りますし、その結果個人の絵柄が必ず出ます。
自分自身を発展させるツールとしてAIは使えますが、AI自身が0から生み出せる訳では無いんですよね。
業界全体は「AIを欲しがっている」
―― ここまでは一個人のクリエイターとしてのご意見を伺いましたが、業界全体の温度感はどうなんでしょう。
大石「管理側と現場で少し温度感が違うように思いますね。“上の方は使いたいと思っているが、現場に抵抗感があるので表立っては使えない”という意見はよくあります。
そのため、絵コンテやラフ、設定資料案など表に出ない部分で活用されているのが現実でしょう。“盗まないAI”という概念が入ることで少しでも変われば、と思います。」
―― 会社としては使いたい…というような制作会社さんもあるんですね
大石「実際表には出ていませんが、大手ゲーム会社さんや老舗アニメ会社さんでAIを使っているという例は既に複数あります。
時間短縮というわかりやすい部分で結果も出ているので、今後補助ツールとして更にAIが広がれば嬉しいですね。」

配信プラットフォームから制作の現場へ
―― 藤原さんは、配信プラットフォームなどを手掛けているU-NEXT HOLDINGS社CEO室の出身です。そこからアニメ業界に入ろう!と思われたのは何故でしょうか。
―― そこから背景美術スタジオSAIGAの起ち上げ、K&Kデザイン社の子会社化と、スピード感のある動きでしたね。
藤原「大石美術監督やK&Kの川上取締役など、アニメ業界の中でAIと積極的に関わっている方が集まったのは大きかったと感じています。
大石さんも川上さんも話されていますが、AIはあくまで補助としてアニメ業界の制作を改善させることが目標です。
特に背景美術はスタジオもスタッフも少なく常に人が不足しているため、スタジオSAIGAを外注先としても是非活用して頂きたいと考えています。」

クリエイターが“想いを込める”制作を増やす
――Creator’s X社の特徴である「クリエイターごとの専用AI」は、業界にも受け入れられやすい仕組みです。
藤原「AIと創作、という話になると必ず議論されるのが盗作問題です。不特定多数の個人のデータを無断で利用し商用利用するのではないか…というお話ですね。我々としてもそれは目標とするアニメ業界のクリエイティブではありません。
Creator’s X社では、クリエイター個人の過去作を元にした専用AIを開発し、本人の描画の延長線上を実現できるようにしています。現在はK&Kデザイン社、スタジオSAIGAでの利用に留まっていますが、最終的に業界全体への提供を視野に入れています。」
―― クリエイター個人に寄り添うAI開発、ということですね。
藤原「大石さんの話にもありましたが、AIを使って出来上がった絵に最終的な手を加えるのはやはりクリエイター自身です。
今の制作環境は、人の手でやらなければいけないプロセスが多すぎて、クリエイターが“想いを込めたい”と思うシーンに充分力が入れられないのが現状です。
力を入れたいところに力を入れられる、そうして人を感動させる作品が生まれることがAIの理想的な使われ方と我々は考えています。」
「土日は休み、給与は1.5倍」の
アニメ業界を目指して
―― クリエイター自身の余裕ができることは、業界の長寿化にも繋がりそうな気がします。
藤原「私達が最終的に目指しているのは業界全体の待遇改善です。
アニメ作品の予算感を増やす、というのはK&Kデザインの川上取締役も語っていた通り、現実的ではありません。
しかしAIを補助的に使って業務の短縮化とメリハリを産めば、土日がきちんと休めて給与は今の1.5倍、という状況も夢では無いと思います。」
藤原「3〜4割は制作過程が短縮できている、という声が現場から上がっています。また、その分手間を掛けたい部分に時間を避けるためにクオリティも上がっています。
現在開発しているAIはβ版ですが、これから更にクリエイターに使いやすい形へ進化させていくため、時間の短縮や効率化はもっと進む未来が見えています。」
―― 現在Creator’s X社では美術監督を募集していますが、どんな方に来て欲しいでしょうか。
藤原「アニメ制作とAIの未来にワクワクできる方、より良い環境で長く美術の仕事をしたい、という方を募集しています。
現在多くの会社さんからアニメ仕事のご相談を頂いているため、美術監督のニーズは日々高まっています。ライフステージが変わっても現役で仕事をし続けたいという方、独立したいという夢がある方も歓迎しています!」
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