次々にアニメ化されるソーシャルゲーム
現在、ソーシャルゲームのアニメ化が続々となされています。過去にアニメ化されたタイトル「アイドルマスターシンデレラガールズ」「SHOW BY ROCK!!」「ハッカドール」「神撃のバハムート GENESIS」「ガールフレンド(仮)」「ドラゴンコレクション」「探検ドリランド」「絶対防衛レヴィアタン」「戦国コレクション」、現在放送中のタイトル「モンスターストライク」「Divine Gate ディバインゲート」、今後のアニメ化が決定しているタイトル「チェインクロニクル」「グランブルーファンタジー」「神撃のバハムート マナリアフレンズ」などソーシャルゲームのアニメ化の波は止まる気配がありません。また、Cygamesでは、自社内にアニメ事業部も設立され話題になりました。では、果たしてソーシャルゲームがアニメ化には、どのような理由、目的、効果があるのでしょうか。
好調なゲームパブリッシャーの潤沢な予算
まず、ソーシャルゲームがアニメ化される理由について。理由の一つ目は、ソーシャルゲームがヒットしており、予算が潤沢にあることが挙げられます。
クオリティにもよりますが、アニメを1クール(13話)作ろうとすると、大体1.5億~2.5億円の予算が必要になります。アニメ制作の予算組みは製作委員会方式が採用されることが大体なので、1社が丸々1.5億~2.5億円を丸々拠出することはありませんが、原作となる会社からも出資があった方が製作委員会としてはありがたいことは確かです。
ゲームパブリッシャーの潤沢な資金に関しては、進撃のバハムートのCygamesの1社提供で、業界内でも話題になりました。作画のクオリティも高く、1話当たりの制作費も通常の2~3倍はかかっていると見積もられています。ある意味で進撃のバハムートがきっかけとなって、アニメ業界各社もソーシャルゲーム原作のアニメ制作に本腰を入れたと言えるかもしれません。
原作不足、アニメの原作となる作品はどこにある!?
次に、アニメ制作のために原作が不足している、アニメ業界がアニメの原作を求めているという現象もあります。今のアニメを見ていただければわかりますが、現在放送されているアニメのほとんどは、漫画、ラノベ、ゲームなどの原作、あるいは昔放送されたアニメのリメイクとして制作されており、オリジナル作品はほとんどありません。原作があれば、ある程度の固定ファンを呼び込める期待が持てますが、原作の場合は0からプロモーションを設計する必要があります。
オリジナルは失敗した時のリスクも大きいです。昨年倒産で話題になった株式会社マングローブもオリジナル企画「サムライフラメンコ」に一縷の望みをかけていたのだと思いますが、むしろその逆とも言える結果が倒産を決定的にしたということも言えるでしょう。また、製作委員会を組成するときにも原作があった方が版権会社を巻き込めますし、原作の保証が製作委員会への安心材料にもなります。
しかし、アニメ制作のペースと漫画、ラノベ、ゲームの制作ペースでは、とてつもない差があり、アニメが原作に追いついたり、原作を追い越したり、原作のペースに合わせてテンポを落としたりして対応するケースが枚挙にいとまがありません。次々と原作物のアニメを制作してきた結果として、原作の枯渇という現象が業界全体として発生しています。もちろんまだまだアニメ化できる作品はありますが、アニメ化に適していてある程度のヒットが見込める作品から原作になっていく中で、原作選定はアニメ企画の肝になっています。
ソーシャルゲームのアニメ化はまだノウハウや実績が薄く製作委員会も乗り気ではありませんでしたが、成功例も失敗例もある程度の先行例が増えてきたタイミングで近年ソーシャルゲームの中でもヒットを記録してる大型タイトルのアニメ化が増えています。原作の不足という観点から言えば、今後もしばらくはソーシャルゲームのアニメ化のニュースが続くのではないでしょうか。
新規ユーザー獲得のためのメディア施策
また、ソーシャルゲームのアニメ化することには、アニメ業界の都合だけではなく、ゲーム会社の目的、メリットもあります。まず、わかりやすいところでは、新規ユーザーの獲得があります。年末年始のTVCMを見ればわかる通り、人気タイトルを始めとして、認知獲得、ライトユーザーの取り込みはゲームパブリッシャーの一つの課題です。TVCMもそのためのメディア施策ですが、若者のテレビ離れが叫ばれる中、CMだけでは、リーチできない層もあります。
モンストもアニメが現在テレビではなく、YouTubeで配信されているのも、朝や夕方にテレビを見る子供でも深夜アニメを好む20代30代でもなく、中高生という層へのリーチを狙っています。また、ターゲット層の属性から考えても、アニメが好きな人はそうでない人よりもゲームが好きであるという想定も難しくありません。ゲームと親和性の高いアニメから新規ユーザーを獲得しようとする意図がゲームパブリッシャーにはあります。
アニメで補完されるストーリー性とキャラクター性
また、アニメは、新規ユーザーだけでなく、休眠ユーザーへのリテンションやMAU (Monthly Active Users 月間アクティブユーザー数)の維持という効果もあります。ソーシャルゲームの場合、すでにダウンロードはしているけれども遊んでいない、あるいはすでにアンインストールしてしまっている休眠ユーザーがいます。モンストの場合、すでに国内で2600万ダウンロードがあります(2016年1月7日)。MAU (Monthly Active Users 月間アクティブユーザー数)は81.7%で、パズドラのMAUを超えています(FULLER株式会社2015年8月調査)。ダウンロード数では、モンストよりもパズドラの方が多いですが、実際にゲームを遊んでいるユーザーの率でいうとモンストの方が高い数値が出ています。
ソーシャルゲームがどうしても手軽に遊べるという性質上、ストーリー性やキャラクター性よりもゲーム性やキャラクターの性能のみに焦点が当たってしまいます。そこでアニメがゲームのストーリーやキャラクターに厚みを持たせることでよりファンに対して情報を多く与えることができます。
アニメから広がるマルチメディア展開
また、製作委員会が組成されると、製作委員会各社に権利が分配され、それぞれの専門領域にアニメから派生していきます。わかりやすいところでは、コミカライズや実写化、グッズ化、イベント開催などがあります。また、製作委員会に遊技機関連会社が入っている場合はのちにパチンコ・パチスロ化される可能性が高いです。
漫画などでは、自分たちの手が届かないところで勝手に展開されることに憤りを感じる原作者も少なくありませんが、マーケティング的な観点でいえば、様々な方面でも展開で認知を得るのが第一義です。ゲームパブリッシャーとしても認知が広がることには歓迎な姿勢の会社が多いはずです。
ただし、ファンが望まないコンテンツ展開(クオリティの低いアニメ化、パチンコ・パチスロ化)などは原作ファンの反感を買う恐れがあります。マーケティングのみを優先したコンテンツ展開が上手くいかないことは製作委員会としてもある程度体感を得られているところではあると思います。
一番大切なのはアニメに対するひたむきな熱意と情熱
以上のような理由からソーシャルゲームのアニメ化は今後も拡大していくだろうという予測です。ただし、モンストのYouTube本編7分など、ユーザーの指向に合わせたアニメも増えるだろうという予想です。
しかし、そのように指向に合わせたアニメの例がアニメの歴史に残るような名作として視聴者の記憶に残っているかというとそうではありません。不思議なことではありますが、アニメファンから「あのアニメはすごかった」と言われるような作品は30分アニメや劇場アニメからしか生まれていません。もちろんそれは現象としてそうだという話ではありませんが、もしソーシャルゲーム原作のアニメがマーケティング先行での制作を抜け出せないのだとしたらやはりそこから大ヒットアニメが生まれる可能性は低くなるでしょう。
「アニメとして大ヒットする必要はない」がゲームパブリッシャーの本音なのかもしれませんが、それではアニメファンにとってもアニメ業界にとっても悲しいものがあります。例えば、ガンダムもファーストガンダムという偉大なコンテンツ基盤の上に、「機動戦士ガンダム0083」「機動戦士ガンダムUC」などの偉大な作品が作られ続けています。理由や目的ももちろん必要ですが一番大切なのはアニメに対するひたむきな熱意と情熱です。ソーシャルゲーム原作のアニメでもアニメファンにも受け入れられ、世間的にも話題になるような作品が生まれるよう、ビ・ハイア株式会社でもアニメ業界、ゲーム業界を応援していきたいと思います。ゲームのアニメ化はじめ、アニメゲーム漫画業界横断的にご相談があればご連絡ください。