先日、年明け早々にLive2Dに関する大きなニュースが話題となりました。
恐れていた未来が現実に! 2次元美少女に扮したオッサンとビデオチャットできる「FaceRig Live2D Module」
これは、2Dグラフィックスを3Dに近く表現できる技術「Live2D」と、人の表情を読み取りアバターに反映する技術「FaceRig」がコラボして、人の表情をそのまま2D美少女の表情として画面上にリアルタイム反映させられるようになった、というニュースでした。これを受けてゲームの制作やチャットビジネスでも様々な展開が期待されています。実は2Dイラストを3Dっぽく見せる技術、というのは他社でもいくつか開発している例がありました。それでもLive2Dの知名度は圧倒的で、ほぼ競合がいないのでは?と思われていることも強みです。
そもそもLive2Dは今から10年前、2006年にはもう技術として完成していました。しかしあまりに斬新すぎたため、そして2006年という、ハード的にもソフト的にも技術的に未発達な時期だったため、しばらく目立った導入がありません。2011年からバンダイナムコゲームズで「俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル」をはじめとするアドベンチャーゲームで採用された事をきっかけに少しずつ知られ始め、同時にiPhoneが普及したことでフリー広告アプリ等に導入例ができ、今のように「誰もが知る存在」となります。社名も元々は別の名前だったのですが、2014年から「株式会社Live2D」と変更されています。
こういった独自の技術を利用したソフトウェア開発は、減少してゆく研究開発費と求めるクオリティの間で板挟みになる傾向にあります。更には完成前でも出資をしてくれる所が無いか?という悩みも含めて、時間が経つほどに大変になるのが常。これまで7年ほどアニメゲーム漫画業界の会社さんとお付き合いしていますが、その間に「こんな技術を作ったんです!」というご相談は半年に2回くらいのペースで伺います。私は技術者では無いので「この技術は将来来るね!」という判断は全くできないのですが、少なくとも「この技術は来なかったね・・・」というものの特徴はわかるようになりました。
来ない会社の特徴① 営業先の社長と現場のズレの認識が甘い
自社で何かしらの技術を作った時、どの会社さんも大手企業に売りたい!とご相談を頂きます。確かに1社大きな会社に採用されればその後の営業も楽。そしてこの際「現場の責任者と繋がりたい」というご相談も頂きます。・・・しかし、ここでは2つのリスクが冒されているのです。一つは、「大手企業は導入がものすごく遅い」ということ。これは現場レベルに繋いだとしても同じです。今や20名弱の会社ですら1つのアプリ開発に1年以上かけるような時代です。現在進行している開発が1年後に終わるかもしれない・・・終わったらその後は運営だ・・・となっている中で、なかなか新技術の検討は時間がかかります。そして2つ目。これは「現場責任者」です。現場責任者に突然行くのは、実は得策ではありません。もちろん現場責任者と古い付き合いであるなど関係性ができていれば良いのですが、結局予算を決定するのは上の方針。こうすると話を通して好まれたとしても大規模な導入まではやはり時間がかかります。一番良いのは「上の人間(基本は社長)に会いに行き、予算の軽減にどう役立つかのプレゼンをした後に、現場責任者を紹介してもらい、そこで技術面のプレゼンをする」です。どちらかだけ攻めるという方法で上手く行かないのは、社長と現場責任者の重視する点が違うからなのです。社長は「予算の軽減」を考えていても現場席に二社が考えているのは「クオリティ」だったりしますから、プレゼンは2種類考えてトップと現場どちらにもメリットを感じさせることがソフトウェア導入の潤滑油となります。
来ない会社の特徴② 営業先に忘れられている
これは結構多いのですが、「営業先に1回しか行かない」というものです。本当は「営業先に社長が行かない」というのも・・・含まれます。そのソフトウェアを作った社長自身が一番ソフトウェアへの自身、愛着に溢れているのですが、作って他は営業に任せてしまうという例は結構よくあります。営業マンはものを売るのが仕事ですが、熱量は社長の方が何十倍もあります。サービスの内容の説明はできても、どれだけそのソフトウェアに情熱をかけているのかが伝わらなければ「機会があったら使う」という歯がゆい回答が戻ってくるだけになってしまいます。そして「1回しか行かない」。これは非常に勿体なく、見えない機会損失が連発している例です。「1回しか来ない営業」というのは・・・皆さんも請けた事があると思いますが・・・ほとんど心に残りません。私達が営業をお手伝いするサービスでも、一度ご紹介した後も定期的に「以前ご紹介したあの開発会社さん、どうですか?少し手が空いてるんですけど」といった電話を紹介先企業にしています。そうでもしなければ相手は忘れていますし、場合によっては担当が人知れず変わっていることだってあります。これもよくする話ではあるのですが、「うちのソフトウェアの紹介」だけで1回目を終わらせるのではなく、「うちの会社がやっていることの紹介」から「何に困っているかのヒアリング」、そして「もし力になれそうなのであれば・・・ソフトウェアの紹介」という風に相互コミュニケーションとして話を進めたり、とりあえず1回目はヒアリングに徹して2回目以降に必要なら・・・とソフトウェアの紹介をするなど、出来る限り引き延ばして下さい。何度も何度も顔を見せることで相手の警戒心を解き、やっと相談がしてもらえる・・・という段階が本当に大事です。後から、自社のものと似たようなソフトウェアを相手会社が使っていたと知った時のショックは計り知れません。それは、その別会社の方がよく顔を見せていたというだけの話です。
来ない会社の特徴③ 他社技術の追従
これも意外とよくあります。例えばLive2Dも同じような内容のソフトウェアがいくつかあるのですが、どれもあまり名前が知られていません。ソフトウェア事業は追従モデルが最も危険です。なぜならオリジナルのソフトウェアが必ず一歩先に行ってしまうからです。追従モデルはどうしても「技術」「価格」で勝負し勝ちですが、オリジナルのソフトウェアの強みは「技術」でも「価格」でもありません。それは「当初のコンセプト」です。オリジナルを作った社長自身がそのソフトウェアをどう展開してゆくか、いかに世界に役立てるか・・・というコンセプトをしっかり持っているのであれば、形を真似た追従モデルが出て来たとしても土台の部分で粘り勝ちすることになります。逆に言えば「コンセプト」がしっかりしていないものがオリジナルだった場合(その場合は追従モデルが出てくる前に消えてしまう可能性もありますが)、追従モデルがその部分を自ら作り上げることでオリジナルを超える可能性は充分あります。何故その技術を作り、そしてどう世界に発信し、いかに役立てるかということを計画しないまま営業する事は、オリジナルであれ追従であれ危険です。オリジナルであれいくつかそういった「勿体ない技術」は目にしてきましたが、これは1年の間にご相談を受ける新技術のほとんどだったりします。せっかくの技術がそれでは充分に生かされませんので、土台作りはかなり力を入れてください。
本当は他にも色々ありますが、重要な点だけ列挙しました。本当に最終的には社長自身がそのソフトウェアなりサービスにどれだけ惚れ込み、本気で勝負しようと思っているかにかかります。粘り強さも営業力も、全て情熱から生まれます。この業界は元々情熱に溢れた人達で形成されていますので、こういった新しい技術がこれからも生まれてゆく事を期待せずにいられません。