なぜ遊技機業界は大型倒産や事業撤退が多いのか?規制、釘曲げ問題、警察の関係性

版権なども効果的に用いてお金を引き寄せる遊技機業界

版権なども効果的に用いてお金を引き寄せる遊技機業界

アニメゲームマンガ業界と最も関わりが深いのが、遊技機(パチンコ・パチスロ)業界です。「花の慶次」「北斗の拳」「ルパン三世」「ヱヴァンゲリヲン」などのアニメ、漫画原作のパチンコ・パチスロも数多く作られており、映像演出のアニメ制作やCG制作、版権使用料などが遊技機業界からアニメゲームマンガ業界に流れています。アニメ産業全体の年間の市場規模は1.5兆円、アニメ制作だけの市場規模は1800億円、とされていますが、遊技機で使われているアニメ、CGの制作費は本業であるはずのアニメ制作1800億円を超えています。遊技機業界全体の市場規模は約19兆円あり、日本のエンターテイメント産業の中でもトップクラスの規模を誇ります。

続く倒産・・・転覆・・・なぜなのか

続く倒産・・・転覆・・・なぜなのか

そんな遊技機業界ですが、近年、倒産や事業撤退のニュースが相次いでいます。「奥村遊機 破産」「マルホン工業 倒産」「SNKプレイモア パチスロ事業撤退」「アリストクラートテクノロジーズ 全株式譲受」など、公式にアナウンスされているものもありますし、タイヨーエレック解散の噂が聞こえています。また、ホールも店舗化が進んでおり、昔ながらの中規模小規模ないわゆるパチンコ屋は撤退を余儀なくされています。2003年には約30兆円あった業界の売上高も、現在ではその2/3以下に減少しています。また、遊技機の参加人口も1995年には3000万人近くいましたが、現在では、その1/3以下、1000万人を切っています。しかし、それに比べて、遊技機の設置台数は増加しています。平成元年に約400万台だった設置台数は、平成23年時点で約450万台になりました。そのしわ寄せは、ホール、そして遊技プレイヤーへの負担にもつながっています。

若年層の遊技機離れは深刻

若年層の遊技機離れは深刻

エンターテイメントの多様化と遊技機の射幸性の向上は、若年層の遊技機離れを引き起こしています。遊技機にとって射幸性は非常に重要な要素です。射幸性はいわばギャンブル性です。遊技する人であれば、誰もが夢見るパチンコ5万発、パチスロ1万枚という基準があり、換金すると20万円になります。どうせやるのであればと、「一発当たればデカイ」射幸性の高い台が好まれる傾向があります。しかし、射幸性の高い台はそれだけ負けた時のリスクも大きいですし、お金に余裕のない人は手を出せなくなります。またアニメゲームマンガなどのエンターテイメントもある中でわざわざ高いお金をかけてリスクの高い遊技機にお金をかける人もどんどん減っています。20代以下のプレイヤーが減ってしまうことは将来的な業界全体のユーザーの減少にもつながります。しかし、年齢が高くなればなるほどお金を持て余している人も増えるので、中年以上をターゲットにした台も増えています。「北斗の拳」「花の慶次」など劇画調の作品や往年のアイドルにスポットを当てたタイアップ台も多くあります。中には、若者が名前も知らないような版権を基にした台も増えています。安定した台数を出荷するためには安定した層をターゲットにすることは間違っていませんが、それが若年層の客離れを引き起こしている原因にもなっています。射幸性の問題には、保通協を始めとする遊技機業界内にある様々な協会が問題に取り組んでいます。いわゆる「規制」と呼ばれるもので、近年でも、MAX規制、確変65%規制、傾斜値2.0枚規制などが自主的に取り決められています。とはいっても、遊技機はギャンブルに分類され、警察からの目も厳しいので、警察からの指導を元に自主的に規制を敷いているという形になります。しかし、つい先日判明したパチンコの釘曲げ問題には、規制というレベルの問題ではなく、日工組によって数十万台の大規模回収が行われます。回収はもちろんですが、規制によっても業界に属する会社は大ダメージを受けます。遊技機は企画からホールに出るまで約2年の時間を要します。液晶演出部分の作成だけで1年間仕事しているという話もザラにあります。アニメやCGを制作している会社でも1年以上のロングスパンな案件は滅多にないので、どの会社もラインを安定させるためには、遊技機の仕事を入れたがります。1本仕事が決まるだけで1年もの間営業コストを抑え、経営リスクをヘッジできる魅力的な案件があります。しかし、そこに青天の霹靂のように規制が舞い降りてくると、開発はすべてストップします。たとえ、完成しても規制に引っかかってしまっていては世に出せません。この辺りはスマホアプリをリリースするときのレギュレーション問題に通ずる部分があるかもしれません。

ドナドナドナ・・・回収を受けた遊技機の行方は・・・

ドナドナドナ・・・回収を受けた遊技機の行方は・・・

また、いくら台を出せてもヒット台がなければ、売り上げにはなりません。業界トップクラスのメーカーすべからく大ヒット台が出ており、コンスタントに小さなヒットを重ねるパターンは少ないです。台で遊ぶ方もギャンブルですが、台を出す方もギャンブルです。そしてギャンブルに負け続ければ最後に待っているのは破産しかありません。一度ヒットを出した会社はその資金を元手に、お金をかけたさらにヒットの可能性の高い台に挑戦し、またヒットします。シリーズ化され、出せばある程度ヒットが予想できるような台も誕生しています。今後ヒットする会社とヒットしない会社の差はさらに開いていくことが予想されます。今年の倒産、撤退騒動もその端緒と言えるでしょう。もし今後遊技機業界への進出を考えている企業様があれば、業界の情報を今のうちから集めていただくことをお勧めします。また、業界の人月単価などの情報も押さえておりますので、興味がありましたらお気軽にご連絡ください。

このギャンブルの行方を制するのは情報

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