帝国データバンク(TDB)といえば、日本全国の企業情報を修している企業です。今回こちらの企業で8月18日にアニメ制作企業の経営実態調査の結果が発表されました。
画像元:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p160805.pdf
調査概要
今回のアニメ制作会社の調査に当たって、アニメ制作に従事する企業で、直接制作を受託・完成させる能力を持つ「総合制作企業(元請)」「グロス請企業(順元請)」のほか、「レイアウト」や「撮影」、「背景」「色彩」「3DCG」などの専門分野において、下請けとしてアニメ制作に携わる企業が対象となります。これらに該当する企業を帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」(約146万社収録)や信用調査報告書ファイル「CCR」(170万社収録)などをもとに153社を抽出、集計・分析を行っております。
調査結果(要旨)
抽出した153社より、アニメ会社の本社の分布、創業の時期、代表者の年代、アニメ制作会社の平均収入高、取引先の傾向などが報告されております(アニメ制作企業の経営実態調査)。
引用始め
1.94.1%の企業が「東京都」に本社を置き、特に「杉並区」(36 社)など 23 区西部に集中
2.「2000 年以降」に創業した企業が 52.9%(81 社)、代表者は「50 代」が最多
3.2014 年度のアニメ制作企業の平均収入高は 10 億 1800 万円。アニメバブル崩壊以後は回
復傾向にあるも、過去 10 年間ではピークの 2006 年度の 3 分の 2 の水準
4.2014 年度業績の判明した 147 社のうち、増収企業は 3 年ぶりに減少。また、収入高規模
別では「10 億円未満」の構成比が 76.9%(113 社)となり、中小零細規模の企業が多数
を占める
5.153 社の取引先は「サービス業」(561 社)が最多。「製作委員会方式」によるアニメ制作に
より、幅広い業種・地域に取引企業が存在
引用終わり
細分化するアニメ業界
画像元:アニメ産業レポート2015より
アニメ制作会社153社の中で、年度別の収入高がわかった企業の1社あたりの平均を2005年度から2014年度で比較したところ、2006年度の14億5300万円をピークに減少しています。2008年にはリーマンショックによる景気の冷え込みによる、DVDやBlu-rayの販売不振により、ピークである2006年度と2014年度(10億1800万円)を比較すると約70%にまで減少しています。一方、制作費ベースで見れば2014年度の制作費は約1847億円(アニメ産業レポート2015)となっており、2007年度の水準まで回復している傾向があります。
総制作費が増加傾向にある一方、アニメ制作会社の収入高が伸び悩む要因として考えられるのが、アニメ会社の細分化ではないでしょうか。創業年代別で見たときに2000年代で58社、2010年代で23社と過半数を占めています。フリーランスのアニメーターが独立して会社を設立したり、中には大手アニメ会社の一部署が独立するというケースもあるため、制作費の上昇が反映されないほど平均収入高が分散しているとも言えます(アニメ制作企業の経営実態調査)。
アニメ会社の細分化は、アニメ制作にも影響が出ているのではないでしょうか。確かにアニメのタイトルは増えていますが、ここ数年は、3分や5分のショートアニメが増加傾向です。もちろん予算を抑えたり、リスク抑えたりという狙いももちろんあるでしょうが、人材不足や乱立するアニメタイトルにより、30分のTVアニメシリーズもやりづらい状況になっているのではないでしょうか。
世界を視野にした組織作り
今年の夏は新海誠監督の「君の名は。」が大ヒットしており、公開10日で累計動員数290万人、累計興行収入38億円突破と話題となっていますが(映画興行成績:「君の名は。」が初週超えの成績でV2 シン・ゴジラは興収60億円突破)、もし「君の名は。」以上のクオリティーや世界でも通用するような日本アニメを制作するのであれば、これまでにないほどの予算や人員が必要となってくるでしょう。しかしながら今の制作実態では、予算も人員もなかなか集まらず、超大作と呼べるものを作るのは難しいでしょう。そのためにも世界的な日本アニメの地位向上を考えるのであれば、既存の体制とは別の大きな枠組みでの制作体制と世界へ円滑に配給する組織作りが必要となってくるのではないでしょうか。将来的に、ハリウッド映画の世界同時上映のように最初から世界展開が考えられている日本アニメが今後増えていけばいいなと思っております。