ポケモンGOの人気は未だに衰えを見せません。配信初日ほどではありませんが、通勤途中の電車やお昼休みにお弁当を買いに行く途中など、ポケモンGOをプレイしている人を見かけることはもはや当たり前になってきてしまっています。7月30日付けの朝日新聞デジタルでは、そのヒットの威力を物語る記事がアップされています。
(引用開始)
調査会社ヴァリューズ(東京)の推計では、日本で配信が始まった22日からの3日間でアプリをダウンロードしたのは約1147万人。日本の約10人に1人が楽しんでいることになる。その後も増えているとみられるが、正確な利用者数は公表されていない。
人気ゲーム「パズル&ドラゴンズ」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)は、12年の配信開始から1千万までに1年余りかかった。ポケモンGOの利用者が急速に膨らんでいることがわかる。
(引用終わり)
引用元:ポケGO、3日で1千万DL超え パズドラは達成に1年
恐ろしい勢いでヒットするポケモンGOに注目していたのはスマートフォンユーザーやポケモンファンだけではありません。ピカチュウたちの手も借りたいということで、ポケモンGOのシステムを利用した集客戦術が繰り広げられているという記事が、同じく朝日新聞デジタルに報じられています。
(引用開始)
スマートフォン用ゲーム「ポケモンGO」の人気にあやかろうと、ダイエー発祥の地として知られる大阪市旭区の「千林商店街」が30日、イベント「モンスター取り放題!!」を始めた。ゲーム上の有料アイテムを使って周辺にポケモンを集め、にぎわいをつくる作戦だ。
(中略)
約660メートルのアーケード街には、ゲームを有利に進めるアイテムがもらえる「ポケストップ」が11カ所ある。商店街振興組合IT部長でカバン店店主の柏木孝之さん(49)が、ポケモンを30分間呼び寄せられる有料アイテムを購入。自身のスマホを片手にポケストップを巡り、30日と31日の午前10時~午後7時にポケモンを大量に出現させる。
30分間の「効力」が切れるまでに最初のポケストップに戻る。これを繰り返し、9時間連続でポケモンを呼び寄せる。アイテム購入予算は2万8千円。柏木さんは「費用対効果は高い」と話した。(上田真由美)
(引用終わり)
引用元:ポケモン取り放題! 大阪の商店街、有料アイテムで集客
具体的にどれくらいの効果が出るのかという数字が出るのは先ですが、果たしてこうしたゲームを利用した集客というのは成功するものなのでしょうか。ポケモンGOを開発したナイアンテック社は、GPSを利用した先進的なゲーム性で話題となったIngressの開発会社としても有名です。Ingressも今回のポケモンGOとまではいきませんが注目を浴びたソフトで、提供開始から3年を迎えた現在では約1400万ダウンロードに到達しています。このIngressを使って観光産業を盛り上げようという動きがありました。
今回参考にするのは横須賀市の取り組みです。自治体として初めてイングレス特設ページを立ち上げたり、いち早くIngressを集客目的で採用したこともあり、多くのITメディアから注目されました。IngressはポケモンGOと同じく、実際に存在する場所に行くことを必要とし、特定の名所やお店が「ポータル」として登録されています。Ingressはこのポータルを主軸として攻防戦が繰り広げられたりミッションが展開されるゲームですが、横須賀市この機能を生かして観光に取り入れました。あまり人が訪れなかった無人島の「猿島」までの渡航チケットが条件を見たしたIngressユーザー(エージェントと呼ばれます)であれば半額になるキャンペーンなどを展開していました。2015年の記事にはなりますが、こちらの記事では猿島の渡航者に関する情報が記載されています。
(引用開始)
2月28日まで通常1300円の渡航料が半額の650円になる「猿島航路割引」と「MISSION OF YOKOSUKA」の2つのキャンペーンを実施していました。
古崎氏 MISSION OF YOKOSUKAは、横須賀市内観光スポットにあるIngrerss内のミッションを2つ(リアル課金エリアの猿島と登山ルートは1つ)クリアして応募すると、モバイルバッテリや海上自衛隊カレー缶、公式Ingressグッズなどが当たるプレゼントキャンペーンで、290件(レジスタンス:122件、エンライテンド:168件)の応募がありました。
矢部氏 応募いただいた方の居住場所も、神奈川県が最も多かったのですが、東京、埼玉、千葉といった首都圏、さらに北海道の方までいらっしゃって、われわれとしても驚いているところです。
古崎氏 猿島航路割引には455人の方にご利用いただき、これは全体の6%を占めます。猿島は船でないといけない場所で、もともと冬場の利用客が少なく、11月から2月までの閑散期は、土日祝日のみの運航となっています。
堀 全体から見れば6%に過ぎないのかもしれませんが、この455人はIngress割がなければ、決して猿島に来なかった層です。そういう意味ではゼロが455人になった時点で、かなりの成果だと思います。
(引用終わり)
引用元:横須賀に“行かない理由”を逆手にとったIngressでの集客–ガチ勢も遊べるフィールドに
ここまではっきりとした集客効果が出ています。ポケモンGOの「ポケスポット」は、Ingressにおけるポータルのデータを使っているようです。(参考:「記憶のポータル」震災で失われた場所が、Ingress→ポケモンGOで生き続ける)Ingressで積み上げたデータがポケモンGOに使われているので、Ingressで集客をしていた自治体やお店などは、またもや集客のチャンスになります。
どうすれば成功するか?
Ingressはナイアンテック社の完全オリジナルコンテンツであり、ゲーム性も競争の要素が強いゲームでした。一口で言えば陣取りゲームの様相を呈しているので、上記のようなポータルの有名化は、いわゆる「ガチ勢」と言われている本気のプレーヤー達にとっては、自分の制圧した陣地をとられる可能性があるので、批判などもありました。ポケモンGOの場合もジムを制圧することによって得られるアイテムがあります。ジムを制圧すれば、21時間ごとに課金通貨の100コインとポケモン強化アイテムが貰えるのです。横須賀市のIngress収穫事例では、このようなゲーム性への配慮も見られました。
(引用開始)
堀氏 横須賀の場合、破壊系のMissionが1つもなくて、その場に来ればよいという形になっているのはポイントだと思います。破壊系のMissionはやはり現場を荒らすことにもつながりますから。観光地を見てほしいという形に仕上げているのは良い部分だと思います。
Ingressは行動と発見を促す旅ですから、Ingressを取り入れれば人が集まる、経済効果が生まれると考えがちですが、それは少しだけ先延ばしにして、人がなぜそこに来るのかの理由を見つけることも大事です。どんな理由で人がここにきているのか、そこが集客のポイントなのだと思います。
(引用終わり)
引用元:同上
要するに、いかに現場を荒らさないようにするかというのが、観光集客におけるポイントです。大阪の商店街のような利用方法で、ポケモンGOのように特定の場所に行くとポケモンがゲットできるというような、現地へ赴き、利益を得られる仕組みに競争性を持たせないような形であれば、集客として非常に有効であると思います。ここでいたずらにジムを活用したイベント等を行ってしまうと、現場が混乱したり、穏やかではない状態になってしまいかねません。何よりポケモンGOユーザーの関心がジム制圧などになってしまい、お店への集客には繋がりにくくなってしまうと懸念もできるでしょう。第2第3のIngress、ポケモンGO開発を狙っている開発車の皆様は、こうした集客への利用のしやすさなども考慮すれば、より良い位置情報ゲームが生まれるのではないかと考えます。せっかく集客や観光に使われるのであれば、国産のゲームで素晴らしい位置情報ゲームが世にでることを夢見ております。
記事を読んでいただきありがとうございました!