山田議員へのスペシャルインタビュー。前半はかなりヘビーな「表現の規制」問題を取り上げました。しかし、法的な立場でこの問題と戦えるのは政治家だけなのでしょうか?私たちがクリエイターや消費者としてこの状況を打破するには何を刷れば良いのでしょう。後半はそんなお話を伺っています。
(前半インタビューはこちら!→BLも違法に?!「表現の自由」はいかに危機に瀕しているか。)
山田太郎議員公式サイト
表現の自由を守る党
今回の記事の参考に:著書『「表現の自由」の守り方』(試し読みもできます!)
Twitterやネットが大事な理由
———色々なお話しを聞かせて頂きましたが、実際にそういったコンテンツの危機に対してクリエイターや消費者がそれぞれ動ける事はあるのでしょうか。
山田議員:皆さんができることは沢山あります。まずはこういった活動をしている議員を応援して欲しい。選挙はもちろんですが、政治家事務所にメールを送ったり、Twitterで呟くだけでも効果があります。世論というのは大きく作用しますから、「こんな風に自由が侵害されるのは嫌だ」というアピールをTwitterなどでも行うだけで全く違います。やはり何より声を上げて欲しいですね。
———署名などではなくネット上の一呟きでも、それが政治の場面で取り上げてもらえるものでしょうか?
山田議員:ネットで呟くだけでも効果はあります。簡単な事に見えますが、これすら無ければ世論として届かない訳です。新聞やテレビと言った表のメディアはこういった問題を取り上げません。自主規制という点から見ても彼らは規制派なのです。「報道の自由」は訴えますが、コンテンツにコントロールをきかせられるように「表現の自由」については訴えません。ですから、こういった世論はネットや街宣活動で訴えていくしかないんです。クリエイターにとっては文字通りメシが食えなくなる問題ですし、場合によっては逮捕されかねないんですからね。
アニメは失われつつある
———他に現在山田議員が気にしている、アニメゲーム漫画関連の問題はありますか?
山田議員:クリエイターの年収が極めて少ないことや、コンテンツ自身が文化として保存されきっていないことは問題視しています。
私はMANGA議連(マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟)という所にも所属しているのですが、ここでは今までに作られてきたアニメや漫画、ゲームをアーカイブという形で記録し残す活動をしています。これまで作られた作品は、無名作家のものは勿論有名作家のものであっても多くが保存されていない状態で、記録が取られていません。また、版権処理の問題も難しいためそういった資産の再利用も難しい。著作権が数十年経って切れるとしても、無名作家の作品が忘れ去られて死んでしまうよりは、何かしら役に立てた方が良いと考えています。現在は、そういったコンテンツを守る為に京都精華大学・明治大学・東京芸術大学と組んで「MANGA ナショナル・センター」を作って行こうとしています。
もう一つ、クリエイターの年収問題ですが、これは特によく言われるアニメ業界の給与問題ですね。動画を描かれる方の給与は平均111万円。月10万円を割ってしまっているのです。これは普通に正社員としてなら違法ですね。しかし7割くらいの動画マンは自営またはフリーランスなので、最低賃金が適応されず問題にされていません。
・・・とはいえ更にフリーの動画マンの方でも、9割は制作会社にほぼ所属している。所属して1つ1つ仕事を指示されたり指導される場合はほとんど従業員と同じ扱いになりますし、その場合は仕事量を細かく契約で決めなければ行けません。しかし実際は描き直しや予定枚数以上の制作もザラですから、ここでは「下請法」が適用や「偽装請負」と問題視される状況なのです。
しかし「下請法」は発注側の資本金が1000万以上無いと適用されません。アニメ会社の発注元で資本金が1000万以上の会社は多くありませんので、下請法も適応されないのが現状です。このままアニメ業界は低賃金で業界の根幹を支えている人が沢山いる、という状況ですが、正直このままでは業界が5年、10年と持つことは無いでしょう。
なぜ低賃金は無くならないか
山田議員:昔に比べてアニメ関連の売上は上がっているのになぜ低賃金がそのままかと言えば、TVなど放映権を持っている会社や広告会社が利益の多くを持って行く仕組みになってしまっているからです。本来は付加価値を生んでいる原画マンなど、制作をサポートしている人たちにお金が行くべきな所を、制作費以上のお金が落ちてこないのが原因ですね。
ですから、アニメの放映をしている「製作」側の企業が、もっとアニメを作りやすくするようにクリエイターへ給与が回るような仕組みを作る事は重要だと考えています。また先ほどの「偽装請負」のような問題はいつ表面化するか分かりませんから、それらが一気に噴出する前に改善を行わなければ業界は持たないでしょう。最近はアニメの画質についても4Kや8Kと細密化が要求される中、給与があがらないままでは厳しい状況がますます進んでしまいます。自動化、3D、CADといった技術を使っても制作が大変な事には変わりません。本当にアニメを支えている現場のクリエイターが、普通の給与を貰えるようにしないと今後産業としてアニメの未来はありません。そのためにも賃金の問題は解決すべきでしょうし、収益構造も変える必要があります。放映権や広告料で潤っている企業も、アニメ業界自身が潰れたら仕事が無くなってしまうわけですから。
———これに関しては具体的に業界や政治的な動きは現在あるのですか?
山田議員:この件は私からも国会で厚生労働大臣や経済産業大臣に伝えてあり、今後産業実態を調査することを約束してもらったので動きがあると思います。またJAniCA(日本アニメーター・演出協会)の方でも実態が明らかになりつつあります。あとは政治的にどのように扱うかですが、急速にやってしまうとアニメ業界を潰しかねないので、収益構造や現場のクリエイターが普通に暮らせること関しては考え中です。現在はアニメ監督クラスでも年収600万という状況なので、もっと付加価値に見合った報酬が回るようにしたいですね。
日本のアニメゲーム漫画が抱えている危機
———こうやって伺うと、アニメもゲームも漫画も、それぞれ内容が違えど危機に面していると実感出来ます。
山田議員:そうですね。アニメは今のような問題で業界自身の維持を考えなければいけませんし、ゲームは暴力性の点でよく表現問題になります。現在はリアルな人間に対しての暴力を振るうようなゲームは問題視されるためゾンビが相手になることもしばしばですが、それも国会で厳しく見られることがあるため、今後はやりづらいかも知れません。オンラインゲームの中毒性も前述したとおり韓国では糾弾されました。漫画については有害図書指定問題が依然としてありますし、青少年健全育成基本法に関してはどのコンテンツも対象になっています。
また、同人や二次創作についても今後はもっと守って行く必要があります。本来はサブカルチャーとして表に出ずにやっていましたが、今やメインカルチャーとなってしまったために圧力も多くなってしまいました。ただ同人や二次創作の現場というのは、最近は新人発掘の場所としても大きな役割を果たしています。YouTubeにパロディ動画が上がって認められる、コミケで編集者からスカウトがかかるなど・・・ですからコミケや二次創作という場所は、主体的に作家さん達が作っている場所だという発想を持った方が良いでしょう。大手メディアを通じてデビューするというだけがプロになる道筋では無くなった現在、自分達のルート以外から出た表現をあまり良く思わないメディアにばかり頼るわけにはいきません。
TPPで問題になった著作権の非親告罪化問題にもあったとおり、これまで放置されていたエロ・グロ・暴力表現は今後更に突っ込まれる可能性があります。こういった動きに関して、もっと皆さんに知って欲しいですし、昔ほど自由な表現ができなくなる事について嫌だと声を上げたり、呟いたり、何故そんなことが起きているのか、誰がそういうことをしようとしているのかなどを理解して頂きたいと思います。
政治は「無関心でも無関係ではいられない」
———山田議員は元々何がきっかけで、表現の自由を守る為に政治の世界に入られたのですか?
山田議員:元々政治家を目指していたわけではありません。製造業の現場にずっといたのですが、「みんなの党」のアジェンダ作りをを手伝ったのが1つのきっかけです。支援したりアジェンダ制作の手伝いをしている内に立候補することになって、比例で復活当選しました。最初からアニメゲーム漫画業界が危ないな、ということは感じていたので、当時の2010年の公約の中に「表現の自由を守る」というものも入れています。
———クリエイターの人達にも、立候補するような形で政治に関わって欲しいと思いますか?
山田議員:クリエイターはクリエイターで自分たちを守る視点で見てほしいなと思います。政治というのは「無関心でいても無関係ではいられない」のが最も重要な点です。自分達が作っている作品が制限されたら色々困るだろうし嫌だ、年収も低い・・・という問題について、自分達が関わっているのだから自分達の問題として考えて欲しい。他人や政治家が何か話してるな、という問題ではなく、生きている以上政治とは関わってしまうんです。その結果がクリエイティブへの制限だとしたら、他人事ではいられないはずです。
実際、クールジャパンと言われていますが現場は大変辛い状況です。また、アニメや漫画は輸出も積極的ではありません。キャラクターや声、音楽などにも権利があるために、版権が複雑であることが理由の1つです。もう1つは放映権を持っている人達にとってアニメは充分「儲かってしまっている」からです。しかし現場には入らない。逆に言えば現場に入らないほどクリエイターの年収が安いです。そして、海外で利益を得なくても良い、というアニメの状況を作ってしまっています。それは文化としても排他的ですし広がりができませんよね。世界中の人達に日本のコンテンツを楽しんでもらうためにも、それに見合った報酬をクリエイターが受け取るためにも、これから活動して行きたいと考えています。
———本日はありがとうございました!
いかがでしたでしょうか。今回は政治の話でしたが、アニメゲーム漫画業界を今後も発展させて行くためには絶対に避けられない話題です。少しでも皆さんに山田太郎議員の本音や、業界を何とかしようという思いが伝わったのであれば幸いです。
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山田太郎議員は、7月10日参院選に山田太郎全国比例代表として出馬が予定されています。
2枚目(白紙赤字)の投票用紙に「山田太郎」と書くことで全国どなたでも山田太郎議員に投票ができます。
※党名を書くのは山田太郎議員の票にならないので注意。