6月10日の日本経済新聞の記事に「ヤフー、イーブックを連結子会社化 20億円出資、電子書籍強化」という記事が掲載されました。イーブックといえば大手電子書籍企業になります。今回は、近年、急激に増加している電子書籍市場についてになります。
ヤフー、イーブックを連結子会社化 20億円出資、電子書籍強化
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL09HHH_Z00C16A6000000/
引用始め
ヤフー(4689)は9日午後、電子書籍大手のイーブックイニシアティブジャパン(3658)と今夏に資本・業務提携すると発表した。TOB(株式公開買い付け)によってイーブック株を議決権ベースで最大49%取得し、連結子会社にする。取得総額は20億円。イーブックの持つノウハウを生かし電子書籍事業の強化を図る。ヤフーはイーブックに、過半にあたる4人の取締役を派遣する。
引用終わり
書籍市場は、2000年代後半から減少傾向にあります。特に紙媒体は厳しく、2006年の9325.8億円から2013年には7851.4億円へ1500億円近く減少しております。しかし一方で、電子書籍に関する市場規模は増加傾向にあり、2013年の時点で936億円まで市場規模を伸ばし、普及率も10.7%と大幅にシェアを伸ばしています。
ICT総研は、インターネット利用者4409名に対して、一年以内に電子書籍ストアを利用したか、どのサイトを利用したか、利用したサイトの満足度に関しての調査を行っています(2014年度 電子書籍コンテンツ市場動向調査)。その調査によれば、1年以内での電子書籍ストアの利用率は23.3%と全体の4分の1程度になります。しかしながら一方で、総務省の統計データによれば、スマートフォンやタブレットの10代から60代での普及率は、スマートフォンが62.3%、タブレットが21.3%となっています。特に20代、30代はスマートフォンの普及率80%を超えるなど、まだまだ伸びしろのある市場と言えるでしょう(総務省は5月19日、平成26年(2014年)の情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査)。
電子書籍ストアの利用率は、バラバラに分散する傾向がありながらも楽天koboストアとKindleストアが6%台と頭一つ抜けているという状況になります。しかし一方で、電子書籍ストアの満足度に関しては、イーブックイニシアティブジャパンが運営するeBook Japanが最も満足度が高いという結果になっています。また、eBook Japanは2000年12月からサービスを開始し、電子書籍サービスを開始した企業の中でも最も運営が長い企業となり、配信数も40万冊以上という点で満足度の高い結果となっているのではないでしょうか(https://ictr.co.jp/report/20141015000069.html)。
今後の電子書籍ストア
電子書籍市場は、タブレットやスマートフォンの普及率の増加も考慮に入れれば、今後も大きく市場規模を増加させる可能性を持った市場です。しかし一方で、電子書籍のストアに関してはまだまだどこで購入するのがいいかはまだ確立されていません。楽天ブックスやKindleストアのシェアが大きいのも、楽天市場などのECサイトの延長線上で購入したり、もともとKindleのハードを買っている人にとってはKindleストアを常習的に使っているにすぎません。そのため、電子書籍のラインナップ、システム次第ではまだまだ市場規模拡大も可能ですし、シェアを逆転する余地は十分あります。
今後、電子書籍市場を拡大する上でも重要になってくるのが、ラインナップと販売のしくみづくりでしょう。もし書籍の発売と同時に行えば、店頭に行く必要もなく、また、通販などで注文し、届くまでのタイムラグもありません。加えて、ハードディスクさえ容量を確保していれば、本を置く場所も必要ありません。もう一つ仕組みに関しても、スマートフォンやタブレットの普及率がどんどん上昇していく中、画面サイズの違う媒体でいかに快適に本を読むことができるかが鍵となってくるでしょう。そして、電子書籍を購入するための導線をスムーズにすることにより、今以上に電子書籍の市場は伸びていくのではないでしょうか。