2010年代に入り、アニメゲーム漫画と同時展開する作品が増えてきました。その理由としては、アニメ・ゲーム・漫画それぞれの顧客層に同時に周知することで話題性がまし、その相乗効果を期待しているという点があります。ただ最近では、メディアミックスもさほど珍しいものではなくなってしまったため、相乗効果への期待は以前ほど高くはないという印象です。今回は、メディアミックスの明暗が分かれた2作品の比較をし、今後のメディアミックスプロジェクトには何が求められるかに関して書いております。
2000年代にかけては、コミックスもしくはライトノベルもしくはオリジナルでアニメを制作しておりました。しかしそこからの展開は非常に遅く、アニメ放送1年後にゲーム化、もしくはその逆で、ゲームを発売したのち半年以上経ってアニメ化ということがよくありました。しかしこの場合だと、いくらアニメが良かった、ゲームが良かったとしても他の媒体での発売の時には、その熱が冷めてしまっているというケースがよくありました。なぜこのようなことになっていたかといえば、アニメやゲームや漫画それぞれの業界のつながりが薄く、版権のやり取りがなかなかうまくいかなかったため同時展開が難しかったという背景があります。しかし現在では、それらのつながりも強くなり、また製作委員会も各業界の権利を持っている企業から出資をするようになったため、以前よりもスムーズにメディアミックスで展開できるようになりました。
しかし、メディアミックスも一般的な手法となってきたため、無難に収益を稼げる方法ではなくなってきました。むしろ同時に展開できる分、成功するときは大きく成功しますが、失敗した時の損失も大きくなっているのではないでしょうか。以前であれば、様子を見てプロジェクトの中止ということもできましたが、今ではそれだけの時間の猶予もありません。では失敗した例と成功している事例に関して比較したいと思います。
ケイオスドラゴンは、TRPGから生まれたレッドドラゴンがベースとなっており、プレイヤーには、三田誠氏を中心に、魔法少女まどかマギカのシナリオで知られる虚淵玄氏や、Fate/stay nightで知られる奈須きのこ氏、他にもしまどりる氏や紅玉いづき氏、成田良悟氏と有名なシナリオライターによって生み出された作品になります。しかし、そんな作品にもかかわらず、メディアミックス的にはうまくいかなかったようです。
画像はテレビアニメホームページより
スマホ向けRPG「ケイオスドラゴン 混沌戦争」が7月27日13:00をもってサービス終了
https://www.4gamer.net/games/292/G029220/20160526069/
引用始め
セガゲームスは本日(2016年5月26日),スマートフォン向けRPG「ケイオスドラゴン 混沌戦争」(iOS / Android)のサービスを,7月27日13:00をもって終了すると発表した。今回の決定について同社は“諸般の事情”としている。
引用終わり
このゲームは、2015年8月13日にiOS版がリリースされており、アニメ放送の約1か月後からサービスを開始したタイトルです。しかし、約9か月がたった現在、公式ホームページのダウンロード企画が40万人と50万人の間というところからもさほどゲームへの移行がうまくいかなかったことがわかります。
成功事例、ラグナストライクエンジェルズ
一方で、メディアミックスとしては、成功していると言えるのが、DMMよりリリースされる予定の「ラグナストライクエンジェルズ」ではないでしょうか。ケイオスドラゴン同様、TVアニメシリーズを放送していますが、事前予約にもかかわらず、5月26日時点で、20万人を突破したとのことです(TVアニメ公式ホームページより)。
2作品の比較
ケイオスドラゴンは、アニメ放送開始後、約1か月という短いスパンでのリリースでした。しかし、ゲームでは、アニメの時代の10年後として描かれており、アニメとの親和性が掴みづらいという点がありました。一方、ラグナストライクエンジェルズは、アニメ放送開始後2か月が経過したものの未だに全貌が見えず、各キャラクターが順次公開されているという状況です。
この点で比較すれば、メディアミックスで重要なのは、それぞれの媒体との親和性とそれまでの情報公開、リリースのタイミングではないでしょうか。ケイオスドラゴンは、アニメとゲームとの親和性があまり伝わらないまま短いスパンでリリースしてしまったため、ゲームへの流入へ繋がらなかったのではないかと考えます。一方のラグナストライクエンジェルズは、アニメとゲームでほぼ同じものを扱っているにもかかわらず、ストーリーとキャラクター情報をすべて見せないという点である種、ゲームへの期待度を高めているのではないでしょうか。また、忘れてはいけないのが「世界一短いかもしれないアニメ」という宣伝方法です。ネットで公開されたPVよりも短いアニメがさらに話題を呼びました。
メディアミックスが当たり前になってきた今、ただ闇雲に展開してももはや話題性は低いでしょう。今後、メディアミックスでの展開を考えるのであれば、アニメゲーム漫画もしくはそれ以外の分野も加わるかもしれませんが、どのような順で展開するか、メディアごとの展開時期はいつにするか、それまでのどのように情報公開をするか、最後に何か一つこれまでにやったことがないことを前面に出してPRするということが必要となってくるでしょう。